ビジネスプロセスモデリング

ビジネスプロセスモデリングとは、使う人と一緒になって仕事のやり方を考え ることです。今までのように御用聞きの感覚でいてはいけません。

ITとは

ITとは直訳すれば「情報技術」です。しかし世の中では「IT=パソコン」と思 われている向きがあります。これは間違いです。パソコンは情報技術のための 重要な道具ではありますが情報技術そのものではありません。 情報を扱うのにパソコンは必須アイテムではないのです。ノートと鉛筆でだっ て立派に情報は扱えます。

前に家計簿の例を挙げました。家計簿こそがIT化なのです。ただ漫然と財布の 中身だけに注目するのではなく出し入れの「情報」を記録しておくことこそIT なのです。そしてこうして情報を蓄積していけば支出の内訳や推移を知ること ができます。これこそがIT化なのです。

ここで一つ注意すべき点があります。支出の内訳や推移を見て何の役に立つの でしょう?何月何日にどこでいくら使ったかのリストがあったところで、どこ かからお金が降って湧いてくるわけでもありません。そういう意味では家計簿 をつけるのはまったくの無駄な作業です。 しかし家計簿をきちんとつけていればそれを見て「来月は食費を抑えよう」と か「ちょっと遊び過ぎだから引き締めよう」と方針を決めることができます。 これによって情報に価値が出てくるのです。一見なんの価値もない「情報」も 適切に収集されて分析されれば価値を産み出すことができるという事が「IT」 の意味するところなのです。

パソコン抜きでITせよ

というわけで、「パソコンで家計簿をつける」のがITなのではありません。 「家計簿をつける」というのがITなのです。パソコンはあると確かに便利です が、重要なのは家計簿をつける事であってパソコンを使うことではないの です。

「家計簿をつけるのが大変だからパソコンでやりたい」という話はよくありま すが、よくよく聞いてみると「つけるのが大変だから今は家計簿をつけていな い」という事が判明する場合が多くあります。高価なパソコンを買う前に、ノー トと鉛筆を買ってきて家計簿をつけてみて下さい。パソコンに比べればノート なんて安いものでしょう?

残念ながら、まだ今ではITに理解の深い人のほとんどがコンピュータ業界の人 です。だからITというと無理にでもパソコンを勧めてソフトを作ろうとします。 それが自分たちの商売だからです。「家計簿をつけたい」と言うとパソコンと 家計簿ソフトを売りつけるのです。本来ならノートと電卓だけで十分なのに。

これには逆の意味もあります。「家計簿をつけたい」と言って渡されたのがパ ソコンと専用家計簿ソフトだったら何十万という金額も納得がいくでしょう。 しかし渡されたのがノートと電卓だったら?そしてそれで何十万とお金を取ら れたとしたらあなたは納得できますか?しかし場合によっては(そして多くの 場合)後者の方が簡単で電気代もかからずに済むベストの選択なのです。だか ら本当は後者の方が良心的な業者なのです。

この問題は「IT=パソコン」と考えている事に端を発します。パソコン上のソ フトにはお金を払うけれど、「家計簿のつけ方」というノウハウにはお金を払 えないという考え方です。だから売る側としては無駄だと知りつつパソコンを 抱き合わせにするのです。

ITで重要なのは「もの」ではなく「情報」です。パソコンやソフトではなく 「家計簿のつけ方」という情報自体に価値があるのです。

パソコンと情報収集

パソコンのソフトではどうしても「結果がグラフになって出てくる」とか「き れいな表がプリンタで打ち出せる」といった結果だけを重要視しがちです。し かし本当に重要なのは情報収集の部分、つまり情報を入力する部分なのです。 そしてこれは見過ごされがちな部分でもあります。

何度も同じ例でお話ししますが、家計簿をつける事を考えてみましょう。家計 簿をつけるのは面倒です。しかしいったいどこが面倒なのでしょう?家計簿 をつけていない人は机上で電卓を一心に叩いている場面を想像し、ここが一番 面倒臭そうだと思ってしまいます。しかし本当に面倒なのはそこではなく、買 物の都度その金額を記録していく事なのです。それに比べれば電卓で計算する 事など何十分かあれば終わるたやすい仕事なのです。

そしてここに「パソコンで家計簿が簡単につけられる」のウソがあります。パ ソコンがやってくれるのは電卓で計算をする事だけであって、あなたがスーパー で買物をした時に自動でその金額を入力してくれるわけではないのです。あな たは買物から帰ってきた都度パソコンのスイッチを入れて金額を入力できます か?その作業とノートに鉛筆で金額を書き込む作業とどちらが簡単ですか?

ITで大変なのは情報収集です。そしてそれはパソコンを使ってもたいして楽に なりません。逆にパソコンを使い慣れていない人にとってはかえって面倒にな る事もあります。実際「パソコンを導入をしたのはいいけれど入力が面倒で結 局使っていない」という話をよく聞きます。こうならないように、パソコンが 一番いい選択なのかどうかをじっくり考えてみる必要があります。

そして、パソコンを使うにしても一番気を使わなければならないのがこの入力 画面なのです。いかに印刷されるグラフの見栄えが良くてもデータ入力がやり にくいならそのソフトは使いものになりません。逆にグラフの見栄えが悪いの はデータだけ持ってきて自分でグラフ表示ソフトで印刷し直せばいいだけなの です。表示ではなく情報収集の部分にウェイトを置きましょう。

ソフトウェアよりビジネスプロセス

ITとはパソコン上のソフトを使うことではありません。どうやって仕事を進め ていけばいいかのノウハウを明確にすることなのです。そしてそれがビジネス プロセスなのです。 ビジネスプロセスが確立していれば、あとはそれをノートと鉛筆で実現しよう とパソコンで実現しようとどちらでもいいのです。

とにかく情報やノウハウの価値を認めてください。ノウハウというものは価値 が高く、人に譲渡しづらく、そして目に見えないためにお金に換算しづらいも のなのです。