body "数学、それも集合論をテーマにした小説など、だれが書こうと思うだろう?それを見事にやってしまったのがこの小説だ。すごいのは、「集合論の歴史」でもなく、「集合論をつくった人々」でもなく「集合論」それ自体がテーマであることだ。
もともと、「集合論」はそれ自体、哲学的、神秘的な様相を帯びている。ちょうど、物理学が「宇宙の始まり」や「物質の根源」を探し求めているように、ここでは、「究極の無限」を追い求めている。「無限」とは何か。「究極の無限」とは?「一」と「多」。「神の全能性」と「神の唯一性」。まさに、小説にふさわしいテーマだ。
さて、この小説は素晴らしいにもかかわらず、一つ欠点がある。集合論が理解できていないとさっぱりわけがわからないことだ。しょっぱなから「連続体仮説」とか「アレフ=ヌル」で挫折感を味わったなら、数論や集合論関係の一般解説書(ブルーバックスなんかにあったように思う)を用意してからトライしてほしい。
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