「対話」のない社会 思いやりと優しさが圧殺するもの

評価
4
ジャンル
思想
著者
中島 義道
出版社
PHP

日本では「言論」が軽視されている。何でもなあなあで済ましてしまうし、自己主張をすると煙たがられる。そんな日本人に警鐘を鳴らす一冊。

確かにこの本の著者は少々行き過ぎた面もある。特に放置自転車のくだりはそうだ。相手が違法だったら自分も違法行為をしていいのか?まあ、この場で反論はしないことにするが、私はこの本にすべて賛成するわけではない。しかし私は敢えてこのように暴論ともとれる意見を言っているのだろうと思う。「否定するならしてみろ」と。そして、暴論を否定するために読者に考えてほしいと思っているのではないか。

この本が持っている問題意識は、一番短い言葉で言えば「自己責任」の問題だろう。自分で考え、自分で主体的に行動し、その責任は人のせいにしないで自分で取る。この原則が守られていないから本書で書いてあるような困った事態になるのだ。

もしかしたら、本書で挙げた数々の「困った事態」は、世間では「困ったもの」として正しく認識されないかもしれない。こんな事を言い出す人の方が「困り者」とされるようではそれこそ困ったものだ。