プラクティス・エフェクト

評価
4
ジャンル
SF
著者
デイヴィッド・ブリン
出版社
ハヤカワ

異世界への扉を開く驚異の装置、それが奇妙な故障で一方通行になってしまった。修理のために前人未踏の地へ足を踏み入れるが、その世界は奇妙な物理法則に支配されていた! 異世界で繰り広げられる愛と勇気の冒険譚。

裏表紙にある要約でハードSFを連想してしまうと肩すかしをくらいます。魔法の世界に入ってしまった主人公がインディジョーンズばりの大冒険をする軽めのファンタジーです。内容はほとんどファンタジーで、そこかしこで屁理屈を展開するのがSFといったところでしょうか。

特筆すべきはタイトルにもなっているプラクティス効果。このSF史有数のおバカ物理法則(誉め言葉)によって、論理的に破綻することなしに魔法世界が構築されています。そしてそういう魔法世界に対して現代人が現代知識でもって立ち向かいます。よくあるテーマですが、SFファンお気に入りのテーマといえるでしょう。

人によってはジュブナイル臭さが鼻につくかもしれません。ご都合主義的なところとか、勧善懲悪的なところとか、敵がおマヌケなところとか。まあ、この本だけでなくブリンSFの多くにそのままあてはまりますが。でも、こうした臭さの根底にあるのが人間や科学についての考え方であり、これがいかにもSFといった感じで読後感を爽やかにしてくれます。