これまた強烈なアナーキーテーマの一冊。ドロドロした人間社会の過去を引きずらない理想社会と、その社会に我々が適合するまでを描いています。「自立とは何か」というテーマでもあります。
SF、特に70年代SFが懸命に描こうとしていたものが何であったかを見るには、この作品は最適でしょう(80年代に描かれたものではありますが)。テクノロジー賛美も、人間に対する肯定的で楽天的な見方も、アナーキズムも、管理や権威の否定も。そしてその中心にあるのが、「自立した人間」という理想の人間像です。
今読むと古い感じがするのは、きっと冷戦時代が過去の遺物になってしまったからでしょう。そう書くと、なんだかとても年を取ってしまった気分。古さと言えば、なんの脈絡も意味もなく架空科学理論が登場するところも、なんじゃそりゃ的結末も、嫌う人がいると思いますが、そんな瑣末なことはどうでもいいのです。
無政府主義と言われて北斗の拳の世界を思い浮かべるような人は、読んでみるといいでしょう。