最近良作が少ないSF界において、とにかく大当たりの一冊。見つけたら即レジまで持っていくべきです。グレッグ・イーガン好きならなおのこと。
宇宙やサイバースペースといった派手な飾りはまったくなく、情報科学と哲学(この2つはかなり密接な関係にあります)が話のベースです。ストーリーを見る限り旧来のSFとはかけ離れたお話なのですが……読後感はまさにSFのそれです。あえて「文系SF」と呼ぶのはどうでしょう。
どの話も、現在の科学技術の閉塞状況とでも言うべき感覚が見事に現れています(まさにこれがテーマの超短編も一つあります)。70年代の能天気さや80年代のサイバーパンクから完全に脱した、まさに現代のSFであります。