シナリオの雰囲気別分類
さて、いよいよメインとなる「シナリオの分類と研究」をしよう。まずここでは、 シナリオの典型的な雰囲気を挙げて分析を進めていこう。
シリアスシナリオ
シリアスなセッションとは、日頃よく言われている割には定義が曖昧なもので ある。いったい「シリアス(真面目)」とは何だろうか。
ここでは、「キャラクターの緊張感」のあるセッションだと定義づけたい。今回 のシナリオの依頼は失敗すると大変なことになる、そういう話である、と。失敗 といっても色々なレベルがあるが、下手をすれば自分がここで野垂れ死ぬ、そう いう緊張感を持ったセッションである。あるいは、自分の依頼が失敗すれば捜索 中の誰かを助けられなくなるとか、軍の非人道的な極秘プロジェクトを 止められなくなるとかといった事かもしれない。ハリウッドのアクション映画の ラストシーンのイメージが一番近いだろう。
シリアスシナリオで難しいのは、会話をはさむタイミングである。手元にアク ション映画のビデオがあったら、ラストシーンの会話を抜き出してみてほしい。 非常に少ないはずである。その雰囲気をそのままPSOに持ってこようとすると、 会話をメインにすることは難しくなる。
会話のかわりに仕草を表現するのも方法の一つだ。「#手を上げてニッと笑った」 というようにである。ただ、文字数が多くなるのは覚悟しよう。
とにかく、シリアスなセッションではノリだけで押すことはできず、シナリオ の優劣がシビアに影響する。ロールプレイの王道ではあるが、難易度は高めなの で、しっかり準備したシナリオを持って望みたい。シナリオの目的をしっかり作っ て、途中で色々としやすいように工夫する必要がある。
コメディシナリオ
シリアスなセッションの対義語としてよく使われるのが「コメディ」である。 ここでは、シリアスの逆で「キャラに緊張感のないセッション」と定義づけたい。 今日の依頼はたいしたことないし、ダメなら逃げ帰ってこればいいという程度の 軽い気持ちでいるセッションである。もちろん、キャラの緊張感とプレイヤーの 緊張感は別である。
「吉本新喜劇」あたりを想像してもらえれば一番わかりやすいだろう。「涙と笑 い」がコメディシナリオの王道である。ちなみに「涙」がないのはここでは「ギャ グシナリオ」に分類している。
コメディでは、キャラの心にも余裕があるため、冗談や休憩なども入れやすく、 軽い揉め事なども起きやすい。そして、割とノリだけで長々と続けていけるセッ ションである。シナリオで方向性だけを決めてやれば、あとはプレイヤーが勝手 になんとかしてくれる。
シリアスセッションが「特別な事件」だとすると、コメディセッションは「日常 のお仕事」であろう。日常の面白おかしい出来事を通じてキャラの人間性がかい ま見える、そんなセッションが目標である。
ただ、キャラによってはコメディが合わないのも事実である。筆者のお勧めはそ んなキャラを作らないことだが、万が一そういうキャラがいた場合には、コメディ シナリオはあきらめた方がよい。
ギャグシナリオ
「ギャグシナリオ」というのはよく使われているが、ここでは「コメディ」と 厳密に区別しておきたい。
「涙と笑い」がコメディだとすると、ギャグシナリオは「笑いオンリー」。と にかく笑わせることを狙いにする、通常のロールプレイからすると変則的なシナ リオである。
笑いをとるために奇抜な設定をすることもある。「新興宗教のイカレた教祖」 だとか「悪の組織の運動員」だとか、あるいは「突然言葉の語尾が○○にな る病気」とか[1]。とにかく 笑える舞台は用意したので、存分に笑いをとって下さい、というスタンスである。
また、こうした笑いをとるための設定が最初からなされている「ギャグキャラ」 も存在する(かもしれない)。こうしたキャラが参加すると最初から有無を言わせ ずギャグシナリオになる。
ギャグシナリオの利点は、「笑いをとる」という目的が常に存在することである。 はて、どう動けばいいだろう?と考え込むことなく、とにかく笑えるようにキャ ラを動かせばいい。ぱたりと会話がやんでしまうことはないし、プレイヤーが積 極的に目的をもって動いてくれるからシナリオで誘導する必要もない。シナリオ 提案者にとっては楽なセッションである。
ギャグシナリオでは、キャラの設定がどうとか人生観がどうとかいうのは無視し て、ひたすら笑わせ、笑い、そして楽しむのが正しい姿勢である。
パラレルシナリオ
先の3つとはちょっと異質だが、キャラの設定をいったん無視したシナリオがこ う呼ばれることがある。「学園もの」「子供」などが代表的だろう。こういうシ ナリオでは、雰囲気を楽しむというのが主目的となる。例えば、「全員が子供と いう設定で初めての冒険をする」というシナリオで、映画「スタンド・バイ・ミー」 のような雰囲気を味わう、といった具合である。
こうしたシナリオは、ロールプレイにおける「違った世界の擬似体験」を存分 にできるし、シナリオも考えやすくプレイもしやすいので、人気のあるパターン である。
こうしたシナリオでは、まず各人の「雰囲気の認識」を一致させておきたい。 一口に「学園もの」と言っても、ラブコメから不良バイオレンスものまで幅が広 い。手探りで始めたり各人のギャップを楽しむのもよいが、最初から認識が一致 していた方が面倒が少ない。これは、それらしいシナリオの目的を設定すれば自 然にできるはずだ[2]。
パラレルシナリオでは、各キャラの性格設定は生きるが状況設定はリセットさ れる。例えそのキャラが研究室で試験管からクローン培養されて急速成長させら れたものだとしても、「学園もの」シナリオではちゃんと普通に学校に通ってい たことになるのだ。
性格設定がきちんとなされていないキャラだとどう動いていいかわからなくなる ことがあるし、極端な(通常の人間ではありえない)キャラだとそもそもシナリオ の設定にどうしても合わなくなることもある。筆者のお勧めはそんなキャラを作 らないことだが、こうしたパラレルシナリオに合わないキャラもいることを提案 者は心に留めておく必要がある。