ロールプレイのスタイル

辛口の視点が好評(?)のロールプレイヤー考察が内容を大幅改訂。

シナリオプレイの傾向と対策

ここでは、同様にシナリオプレイに対してプレイ上の注意をとり上げる。同様にカ ミソリメールは禁止である。

シナリオセッション

シナリオ派がセッションで影響力を持つケースはただ一つ、シナリオ派がブリーフィ ング時に積極的に設定作りに動いたときである。ただ、シナリオ派は往々にして設 定を考えたがるので、これは珍しいことではない。

ベテランのシナリオ派は前もって考えたシナリオをいくつもストックしていて、そ の場に集まったキャラを見てふさわしいシナリオを選び出す。そうしたセッション ではたいがいうまく行く。しかし、一般的にはそうそう全員参加のうまいシナリオ を考えつける訳でもなく、シナリオで想定される登場人物はせいぜい2人であって あとは脇役となる。

あなたが自分のシナリオに自信がないなら、シナリオのかなりの部分を事前に話 してプレイヤーの意見を求めるべきだ。シナリオセッションではシナリオが決定 的に重要なため、つまらないシナリオでは面白くもなんともないからだ。

残念ながら、すべてのプレイヤーがあなたの予想したシナリオ通りに動くとは限 らない。必ず「事前に」プレイヤーの意見を聞こう。そしてシナリオ参加への協 力を要請しよう。でないと一人芝居を延々と続けることになりかねない。 シナリオに乗ってこないキャラは無視するというのも、残酷なようだが一つの対処 法である。

シナリオプレイに対するキャラ育成派の対策

シナリオ派のプレイヤーによってシナリオが提供された場合、どうすればいいだろ うか?

あなたのキャラがおとなしい性格なら何も気にすることはない。そのままやれ ばいい。ただ、おそらく脇役を振られるだろうし、もしかしたら他の人はあなたに 話題を振ってくれないかもしれないので注意する必要がある。その場合は...あき らめるしかないだろう。

あなたのキャラがおとなしい性格でなかったら、キャラは我慢してシナリオに乗っ ていけないかもしれない。シナリオの中に自分の設定が絡まりそうな部分が見つ かったら、そこであなたは自分のキャラ設定を出すことができる。それが見つか らない、あるいは自分のキャラの設定ではどうしてもそういうことはしなさそう なシナリオだったら、シナリオの方を変えてもらおう。

もう一度強調する。自分がこのシナリオでやっていけないと思ったら、シナリオ の方を変えてもらおう。「私のキャラはこのシナリオでは動けません」とはっき り言おう。「なんとかなる」でなんとかなるものではない。これで不幸になるの は自分だけでなく、相手も同様に不幸になるのだ。全員のためだ。遠慮すること はない。「自分はこのシナリオじゃ嫌だ」というのがわがままだと言うなら、相 手に一方的にシナリオを押し付けるのもわがままだ。

シナリオプレイに対する成行き派の対策

シナリオプレイでは最初にキャラの目的が提示されるため、成行き派は一見して自 分のスタイルと大差ないと勘違いする。しかし、これは大間違いである。「シナリ オプレイは自分が思っているプレイと違う」と認識することが重要である。

成行き派プレイヤーであるあなたが取れる選択肢の一つとして、純粋にいつものよ うにプレイするという選択 肢もある。もしあなたが、シナリオキーパーよりよい問題解決方法を思いついてそ れを実行してしまったら、それでシナリオは崩れ、あなたのなじみの成行きスタイ ルに移行する。

しかし、シナリオキーパーは、それを全力で阻止し ようとする。その問題解決方法を実行しようとした瞬間、突然様々な問題(多くの 場合天災)が発生する。これはあなたにとってアンフェアなことに感じるかもしれ ない。あなたにとっては驚くことに、簡単な解決法が見い出せたことで喜ぶべきキャ ラ自身が阻止に回る可能性もある。

あなたが認識すべきは、シナリオの結末はあなたの行動とは無関係である、という 事実である。シナリオの結末が複数の中から選択になることもあるが、それは「場 の雰囲気」に応じてであって、「行動」ではない。あなたにとっては不満かもしれ ないが、それがシナリオセッションの決まりなのだ。

結局、シナリオを途中で崩すのはシナリオ派にとって迷惑である。となると、「依 頼の達成」を目的にするのではなく、別の目的に切り換えるべきだ。シナリオが多 少不満であっても文句は言わず、自分の思い通りにならないことには目をつぶっ て別の目標を探すべきである。

「仲間と仲良くなる」「仲間をからかう」というのはいつでも簡単に見出せるキャ ラの目的である。「本当にこんな好き勝手やって他キャラをオモチャにしていいん かいな」と思うかもしれないが、(おそらく)大丈夫だ。心配なら、プレイヤー発言 で聞いてみればよい。

シナリオ派キャラは、導入部やクライマックスでは饒舌な一方、普段は意外と無口 である。無駄口を振っても乗ってこない可能性が高いので注意すべし。

シナリオプレイに対する雰囲気派の対策

まず「どんな雰囲気になりそうですか?」と聞いてみよう。おそらく答えが返っ てくるはずだ。そうしたら、その雰囲気に合ったキャラを演じよう。簡単なこと である。

あなたのキャラに特殊な雰囲気設定がなされていても、「今日はキャラの設定は 置いといて」と言えばすむ。そして、あなたのキャラの役割を伝えよう。役割が 典型的なもの(「戦士」「道化役」「守られるべき対象」など)であれば、提案さ れたシナリオにその位置にあう役が必ずあるはずだ。

シナリオセッションでも、初めから役割を振り分けることはまれで、たいがいは プレイ中にお互いの位置関係の探り合いとなる。あなたは最初からどっかと自分 の位置を確立してしまえば、最初から最後までなじみのスタイルで突き進むこと ができる。

もしあなたのキャラの雰囲気設定を変えたくないなら、シナリオの方を変えなく てはならない。そんなわがままを言うのはよそう。別に舞台が「SF」でなくて 「学園もの」だったっていいじゃないか。同じように振舞えばいいんだから。

シナリオプレイヤーが注意すべきこと

もし、シナリオプレイがテーブルトークRPG的方法だと考えているなら、その認識 は改めてほしい。シナリオの流れを決めてしまってプレイするのは、テーブルトー クRPGでは一般に「一本道シナリオ」と呼ばれ、下手なゲームマスタリングだと 考えられている。日本でこのような間違った考え方が広まってしまったのは、プ レイヤーがコンピュータRPG(ドラクエやFF)から入ってしまった[1] こと、そしてそれに対して見本を見せるべき上級ゲームマスターがマスメディア界 にいなかったことが原因である。

ただ、PSOはテーブルトークRPGではないため、シナリオプレイが下手なプレイだと 言うつもりはない。PSOはもともとコンピュータRPGであるため、同じ由来を持つ 一本道シナリオはよくマッチする。

シナリオを作るときは、小説作法をよく研究して、ストーリーの構成方法に注意し てほしい。一般に、文体や演出などの小ワザは素人でも簡単に修得できるが、物語 構成のような大局的なワザは修得しにくい。そして、ロールプレイの場合、小ワザ はそれぞれのプレイヤーが勝手に作るので、シナリオ提供者は大局的な構成に注意 を払う必要がある。マンガとイラストの関係だと言えば分かりやすいだろうか。前 者が書ける人は後者が書ける人より圧倒的に少ない。

シナリオの作り方については、「小説の書き方」というようなタイトルの本 [2]を見よう。「だれでも書ける」とい う言葉が頭についているのはやめよう。そういう本には本当にだれでも書けるよう な内容しか載っていない。

そして、出来るなら、プレイをビデオなどに録画して、それを小説に起こしてみよ う。自分の作ったシナリオを見返し、構成力を付けるよい練習になる。そして皆、 そうした小説を楽しみにしているのだ。


  1. もともとTRPGはボードゲームからの派生である。ヘックスの書かれたジャングルや砂漠のボードの上に歩兵や戦車の駒が置いてある、そんな感じのものが原点なのである(ちょっと極端な例ではあるが)。「ドラゴンパス」(ボードゲームの名前だ、念のため)も見よ。 ↩︎

  2. 筆者はこういうときには「ディーン・R・クーンツ「ベストセラー小説の書き方」朝日文庫」を引き合いに出す。 ↩︎