雰囲気派
雰囲気派とは、ある典型的な雰囲気を追体験するというプレイである。世間でよ く言われている「なりきり」に近いようではあるが、範囲はそれより狭い。
雰囲気派の概要
「中世ファンタジー」「学園ものラブコメ」「宇宙ヒーロー物」など、世の中に は典型的な話のパターンがあり、それぞれに「お姫様」「ハードボイルドなヒー ロー」などの典型的な主人公がいる。それを追体験してみようというのが雰囲気 派である。
雰囲気を表現する最も重要な手段が「セリフ」である。そのため、台詞回しは口 調は最重要課題である。雰囲気派のプレイヤーは、口調を常に研究していて、ショー トカットに登録している。
逆に、そういう雰囲気さえ出れば話の筋はどうだっていい。多くの場合、その雰 囲気に典型的な話の筋があるので、それをそのまま使用する。例えば「宇宙ヒー ロー物」の典型的な話の筋(「悪い奴が悪事を働いて、ヒーローそれに立ち向か い、一回やられるが再挑戦して見事やっつける」といったような)でいいのだ。
会話の内容もたいして重要ではない。悪役のセリフなら「悪役っぽい」ことが重 要であって、その内容はどうでもいいのだ。ただひたすら決められたパターンの 話にありがちなセリフを言って進んでいくのだ。
雰囲気派も二つに分類できる。ある決まった雰囲気だけが好きな人と、面白 そうな雰囲気ならどれでもいい人だ。前者は例えば「無口でかっこいいハードボ イルド刑事をやりたい」という人で、後者は面白ければなんでもいいという人だ。 やりたい事は同じだが、振舞いはかなり違う。
雰囲気派の目的
雰囲気派は、それらしいセリフを言い、それらしいリアクションをすることによっ て、事前に設定した雰囲気を味わうのがプレイの目的である。例えば中世ファン タジーにおける騎士なら、その雰囲気にマッチしたかっこいいセリフを考え出し、 中世ファンタジーらしい行動をするのが楽しみなのである。
その意味で、雰囲気派の楽しみはプレイの中だけにしかない。キャラ設定もシナ リオもどうでもよく、一言で表現されるような「話のパターン」の指定さえあれ ばあとは楽しく遊べるのである。話のパターンが決まれば話の流れは自動的に決 まるし、結末も自動的に決まってしまう。でも、それでいいのだ。水戸黄門的お 約束物語もまたいいものである。
ある特定の雰囲気だけが好きな人は、プレイの前でもずっと「その雰囲気にぴっ たりくる台詞」を考えている。そして、それも楽しみの一つだ。「どの雰囲気で もいい人」も同様に台詞を考えるのは好きだ。ただ、「どの雰囲気の台詞を考え るか」が決まっていないからできないだけで。
雰囲気派キャラの設定
「特定の雰囲気が好きな人」は、マンガやアニメや小説のキャラクターそのま ま、あるいは説明を聞いただけで誰もがそのキャラクターを思い浮かべるような キャラ設定であることが多い。そしてそれは非常に典型的で有名なキャラである。
この場合、キャラの設定はあまり関係ない。「こういう雰囲気を体験したい」と いうだけだからだ。別に名前が変わろうと、イメージさえ同じならかまわない。 雰囲気さえ同じなら、例え舞台が中世ファンタジーからSFに変わってもかまわな い[1]。
だから、キャラの設定が「見かけの変化」である限り、キャラの設定などどう とでも変わる。舞台によって、例えば「戦士」が「騎士」「宇宙のヒーロー」 「鬼軍曹」「タフな刑事」のように変化するのだ。ただし、内面の変化がある場 合(「ハリー=キャラハン」から「コロンボ」に変わる、など)は耐えられない。
「どの雰囲気でもいい雰囲気派」は、遊べさえすればどうでもいい。だから、他 のキャラを見て、空いている役割につこうとする。その場で適当に設定を考える のだ。とは言っても、いきなり設定を求められる場合もあるので、一応どれかの 雰囲気に合った設定をつけておく。でも、それはプレイ中に空いている役割を探 してふらふら変化していく。最後には、最初に言った性格とはまったく違う性格 になっていることもよくある。
雰囲気派の見分け方
雰囲気派がシナリオを提案する時には、まず「○○のような話で行きましょう」 と言うのですぐ見分けがつく。非常に簡単な見分け方である。○○には有名なマ ンガやアニメなどの物語の名前が入る。
シナリオを提案しなくても、キャラの説明で「○○という話の××のようなキャ ラ」と既存の有名な物語のキャラに例えて説明するなら、それは雰囲気派である ことが多い。この場合、あくまで「のような」であり、元の話のキャラの設定と はまったく無関係である。目指す所は「既存のキャラの雰囲気の追体験」なので あって、「既存のキャラの追体験」ではない。
シナリオに「○○もの」[2]という名前をつける。そして、それが普通の PSO世界とはかけ離れていることも多い。