シナリオ派とは
次に、シナリオ派について見てみよう。
「テーブルトークRPGはどうやってやるの?」という問いに対してよくある答えが、 「一人がゲームマスターとなってシナリオを作り、それに沿ってプレイする」とい うものである。また、「ドラクエやファイナルファンタジーでのコンピュータの代 わりを人がやるんだよ」という説明もなされる。 [1] これがシナリオプレイである。
シナリオ派の概要
シナリオ派は、一人がシナリオを作成し、それに従ってプレイを進めるという スタイルである。
ブリーフィング時にまずシナリオを作る役を決める(ここでは便宜的にシナリオキー パー[2]と呼ぶ)。シナリオキーパーの役目は文字通り、その セッションのシナリオを決定することである。[3]
シナリオキーパーは、ブリーフィング時にどういう話にするかを決め、それを予め 参加者にアナウンスする。場合によってはラストに至るまでの流れを説明する。 例えば次のようなものである。
○○(キャラ)の恋人が書き置きを残して突然いなくなってしまいました。書き置き には「洞窟へ行きます」と一言。それで、○○は仲間と一緒に探索を始めます。途 中で恋人は死体となって発見され、それからは怒りにかられた○○の復讐、という 流れにしましょう。
実際にはあまり流れをすべて最初に説明してしまうことはない。シナリオキーパー は、場の雰囲気によって話の持っていき方を変え、より面白い話にしようと思って いる。流れを最初に説明してしまうとこのように流れをコントロールできなくなっ てしまうからだ。
シナリオ派プレイヤーの目的
シナリオ派プレイヤーの目的はずばり「面白い、感動的な物語を創ること」である。 山あり谷ありのストーリーを後から振り返って、「ああ、素晴しい感動的なお話だっ た」と振り返ることができれば、プレイヤーの目的達成である。
感動的な物語を創るためにプレイヤーはキャラクターを動かす。それは小説を書 くのに似た行為である。かっこいい台詞にもこだわるが、ただ単に台詞がカッコ いいだけではなく、その場にマッチしていることが重要である。キャラの発言は 流れをつくるために存在するものであり、流れを壊すような発言はしない。
面白い小説にはサプライズ(驚き)がつきものである。最後に、「あっ、あれはそ ういう意味だったのか!」というあっと言わせる結末を作るために、考え抜いた 伏線を張っていく。そして、そうした伏線を受けて、最後に感動的な結末に至る わけだ。
幸いなことに、シナリオキーパーがよっぽどまずいシナリオを創らない限り、思惑 通りのプレイができ、満足が得られる。ただし、他のプレイヤーがシナリオキーパー の作ったシナリオに満足できない場合は別である。
プレイヤーは、セッション後、「ああ、あんな台詞も言えればもっとカッコ良かっ たのに」と反省する。そして、プレイを基にして小説を書く。セッション中では入 れられなかった色々なアイデアを後でつけ加えながら。
シナリオ派キャラの設定
シナリオ派キャラも、ある程度設定だけで見当がつく場合が多い。
まず、多くの場合、バックストーリーがついている。時には小説になっていること もある。バックストーリーでは、多くの場合、キャラの不幸な生い立ちが述べられ ている。シナリオ派キャラは、半分くらいの確率で恋人あるいは肉親 が殺されているか行方不明であり、3分の1は誰かを探していて、4分の1くらいは研 究所で実験体として生まれている。(本当に数えないように)
「キャラの設定は?」と聞くと、おおかた、返事が「以前...」で始まる。そして、 キャラのバックストーリーが語られる(もちろんあらすじだけ)。
そして、なぜか、悲劇の主人公である場合が多い。これは筆者も不思議なことであ るが、おそらく、悲劇の方がよりドラマティックで印象に残るからであろう。 RPGがよくベースとしているファンタジー系の話や神話が悲劇調であることも原因 かもしれない。
シナリオ派の見分け方
設定以外の振舞いから、シナリオ派の特徴を見てみよう。
ベテランのシナリオ派は、積極的にシナリオを引っ張る役をかって出る。シナリオ を作るのが楽しいのだから当然のことである。自分でシナリオを作れない シナリオ派プレイヤーは、「前に経験済みの方は申し訳ないんですが..」と言 いながら、以前自分が他の人とプレイしたシナリオを提案する。
「前に経験済みの方は申し訳ない」というのがシナリオ派の特徴である。なぜなら、 他のスタイルのプレイヤーはシナリオを重要視していないため、経験済みだろうが なんだろうが気にしないからである。(ちなみに、それに「いえいえ、そんなのは キャラの組み合わせでいくらでも変わりますから」と答えるのは成行き派プレイヤー である)
また、「この(自分の)キャラは本当は絶対にこんな台詞しゃべらないのにー」とプ レイヤーが言った場合、シナリオ派であることが多い。キャラ育成派はそんなこ とは絶対にしないし、成行き派はそんなことはあまり気にしないからだ。
プレイ後には「この話はこうした方が面白かったかな」という論議になる。「実 は○○という筋も用意していたんだけど……」と言って、物語の別の展開の話を することもある。