はじめに
RPGを語るときに、多くの人は、「ロールプレイ」という言葉で一くくりにして しまう。しかし、実際には、人によって「ロールプレイ」の意味するところが 違ってしまっている。
これが問題になるのは、ロールプレイの定義が違う人同士が一緒にプレイする 時である。お互いに、「なんか違うな」と違和感を覚え、「あいつとやるとどう も調子が狂う」とお互いを毛嫌いすることになりかねない。あるいは、「あいつ ロールプレイが下手だなぁ」という印象を持つかもしれない。
しかし、そうではない。実際には考え方が違うだけなのだ。相手の考え方を 理解できれば、こうした事態に対処しやすくなるだろう。そのために本文書 が書かれたのである。
ここでは、「ロールプレイ」を分類し、それぞれについて解説を試みる。
第3版にあたって
第1版から多かった意見に「なりきり」派(第2版で「キャラ設定派」に改名)の説 明がよくわからないというものがあった。自分でもなんだかよくわからなかった。 それが、自分なりにだんだんよくわかってきたようなので、また改名した。
それからもう一つ。別文書として「ロールプレイとは?」という文書を書いて、 「ロールプレイ」という言葉の本来の意味を説明した。で、この文書では「ロー ルプレイ」という言葉をその本来の意味では使っていない。「世間一般にロール プレイングゲームと呼ばれているもの一般」を表していると解釈してほしい。
現在の内容は、第1版の内容とはかなり言っていることが違っている。これは第 1版時点での筆者の思慮の浅さによるものである。第1版の内容は忘れてここの文 書を改めて読んでほしい。
ただ、言いたかった内容については当初からあまり変更はない。「うーん、よく 分からない」が「ほうほう、そういうことを言いたかったのか」になると私とし てもうれしい。
本文書に関する注意
本文書では、分類したそれぞれの違うスタイルについて解説を加えたが、筆者の経 験の多寡によって、分類のそれぞれで考察の深さが違う。また、筆者の個人的な意 見によって、半ば批判めいた文書になっている部分もある。
しかし、スタイル批判は本意ではない。「筆者が」嫌いなだけで、そのスタイルそ のものを否定するつもりは毛頭ない。できるだけ公平に記すように努力はしたが、 スタイルごとの文章が不公平になっている。これは、筆者の技量および知識の至ら なさのせいである。
本文書の内容は、筆者の独断に基づくものである。本文書の内容について、意見や 批判があったら遠慮なく伝えてほしい。
簡潔さと読み易さ(そして若干の私の文体)のため、本文には誇張や不確実な情報に 対する言い切りが多用されている。(例えば「日本人は全般的に他の国の人より若 干英語が苦手な傾向にある」というべきところを「日本人は英語が苦手だ」と言い 切る、というようなこと) 「本当にそうなのか?100%言い切れるのかよ?」と文句 を言いたくなるところが多数あるだろうが、それは筆者も十分承知であるため、カ ミソリメールはご勘弁いただきたい。もちろん「それは全然違うよ」というのは正 当な意見として謹んで拝聴させていただく。
また、本文書で出てくる例はすべて架空のものである。賢明な読者諸君の中には実 在のキャラクターやプレイヤーを思い描いてしまう方もあるかもしれないが、それ は早とちりである。(ということにしておいてほしい) 個人攻撃はもとより本意で はない。
最後に、本文書はセガのネットワークRPG 「ファンタシースターオンライン (PSO)」についての文書であるが、テーブルトークRPGも含むRPG一般に適用できる と筆者は考えている。もちろん、一人でやるCRPGは対象外である。
言葉の定義
ここでは、本文書で一般的に使う言葉の定義をする。
なお、ここでの定義は、あくまで「本文書の内部」での定義である。「この言葉は こういう意味で使うべきだ」と言っているわけではないので注意されたし。
- チーム
- プレイに参加する(複数の)人の集まりである。いわゆる「卓」。
- ブリーフィング
- チームが形成されてからの打ち合わせ。自己紹介や、セッションの方向付けや取り 決めを行う。
- セッション
- キャラを使って行う実際のプレイ。
- デブリーフィング
- セッション後の反省会で、特にチームの中だけで行われるもの。
- プレイヤー
- もちろん、セッションに参加している実在の人である。
- キャラクター(キャラ)
- セッションに登場する架空の「人」である。今さら言うこともないとは思うが、 「プレイヤー」と「キャラクター」の違いに注意してほしい。
なお、ここでは原則としてプレイ中は1プレイヤー1キャラであることを仮定する。 また、原則として単発セッションのみ取り扱い、キャンペーンについては考慮外と する。ただし、おそらくこれらの仮定は本文書の内容とはあまり関係がないであろ う。
ロールプレイのスタイルの分類
さて、本文書では、ロールプレイのスタイルを次のように分類する。これの分類は 以降頻繁に使用する。
- 「キャラ育成」派
- キャラを設定し、それに忠実にプレイする
- 「シナリオ」派
- シナリオを事前に決め、それに沿ってプレイする
- 「成行き」派
- 最初の状況設定を決め、あとは成行きにまかせてプレイする
- 「雰囲気」派
- セッションの雰囲気を決め、それに従ってプレイする
もちろん、このパターンは典型例として挙げただけで、中には両者が複合された スタイルもある。以降のでの解説はすべて「典型例」としてとらえてほしい。
なお、本文ではこれらのスタイルについて、次の用語を使用する。ちなみに、 以下の「○○」にはキャラ育成、シナリオ、成行きなどが入る。
- ○○派、○○プレイヤー
- プレイヤーが○○スタイルのプレイを好んでいることを表わす。あるいはプレイヤー が、セッションが始まる前にこのスタイルで行こうと決めていることを表わす。プ レイの流れに合わせてしぶしぶ○○スタイルに変更するということは含まない。
- ○○キャラ
- ○○派のプレイヤーによって、○○スタイルでプレイされているキャラを表わす。 ○○派のプレイヤーだからといって、○○スタイルでプレイするとは限らないこと に注意。
- ○○セッション
- セッション全体の雰囲気(流れ)が○○スタイルであることを表わす。
プレイヤーとスタイル
上で分類したスタイルは、プレイヤーが目指しているもの、すなわちプレイヤー がPSOで「何をしたいか」の分類である。「基本姿勢」と言い換えてもよい。
多くのプレイヤーは、上でいうスタイルを複数合わせ持っている。そして、どれ か一つのスタイルを「主目的」として、それにおかずとして他のスタイルを加え て遊んでいる。だから、プレイヤーの主目的をもって「このプレイヤーのスタイ ルは」と考えることはできるが、それだけでその人を型にはめて考えるのは危険 である。
多くの場合、その場の状態や一緒に遊ぶ他プレイヤーのスタイルによって、プレ イヤーの各スタイルに対する重み付けが変わってくる。これから述べるように、 それぞれのスタイルには相性があるし、スタイルが違うとやりにくい。だから、 できるだけ合わせるようにするのである。
これからは、各スタイルの「典型的」プレイヤーについて述べる。このプレイヤー は、そのスタイルに100%のっとっていて、変化することがないと仮定している。 実際にはこんな人はめったにいない。
本文書の構成
これ以降、本文書では、まずそれぞれのスタイルについて説明をし、その後で傾向 と対策をこれまたそれぞれのスタイルについて行う。
スタイル説明編では、それぞれのスタイルについて次のことを説明する。
そのスタイルの概要
プレイヤーの目的
キャラ育成の特徴
言動による見分け方など
傾向と対策編では、次のことを説明する。
そのスタイルのセッションの成立条件とセッションの雰囲気
そのスタイルのセッションに組込まれてしまった他のスタイルのプレイヤー がどうすればいいか