ビデオ撮影は楽し

今日も月並な坑道の調査。だけど、「ハンターズの仕事紹介ビデオを撮る」というおまけつき。おまけの方に心を動かされる一行でありました。(会話ログにあった話の書き直しです)

ハンターズの仕事は大変なんです

スクリーンに映っているのは、バルムンクの上半身である。目はカメラを向いていて、かすかに開けた口からは白い歯がのぞく。右手に構えた銃をちょうど顔の所にまで上げている。
アス: なに変な格好してるのよ
バル: いや、なんとなく…
そのままカメラはズームアウト。薄暗い照明の広い部屋の全体が映る。床には文字とも模様ともつかない奇妙なものが一面に描かれている。

アス: ええっと、この床の文字なんかも調査対象?
ソフィア: そういえば、これなんだろう?
バル: 魔術文字とかいう奴ですかね…
アス: 写真に、と…
アス: よく考えたら、このビデオ、総督も見るのよねぇ
ソフィア: 見るよね、絶対に
アス: なんかマズいことしてなかったかな?わたし‥えーと、えーと
ソフィア: 大丈夫じゃない?
バル: むさいおっさんに見られてよろこぶ趣味はないなぁ‥‥‥
苦笑するバルムンクにカメラが寄る。バルムンクはそれに気づいてウィンクする。
アス: そうじゃなくて、あまりふざけてると…査定に響くかもよ?
レイナ: 今の台詞の総督見るのよね…自分で首絞めてるわ‥
アス: しまった!
ソフィア: う、それは困るかも…
バル: 綺麗なお嬢様たちとご一緒できただけで満足です♪
ソフィア: さ、これから挽回しましょ!


運の悪いことに、総督はちょうどコーヒーをすすっていた所だった。慌てて口を押さえたが、間に合わなかったようだ。秘書がハンカチを取り出し、総督のズボンの上を拭く。
タイレル: 失礼。アイリーン、もういい。あとは自分でやる。
アスタシアはひたすら自分の膝を見つめていた。

総督がコーヒーをきれいに拭いている間にも、スクリーンの画面はずっと坑道の光景を映し出していた。スクリーンに大型の軍用ロボットが現われた時、総督は手を止めて椅子に座り直した。


Captured Image
軍用ロボットは肩にミサイルポッドを備えていた。あたりに爆発音が響き、画面がたびたび揺れる。ソフィアの剣が何度も叩き込まれ、巨体もさすがに動かなくなった。

バル: ちっ…女性はもうちょっと丁寧に扱えってんだ!
ソフィア: ふう
アス: あわわ‥あんなのまで出てくるとは…あー、びっくりした。でも、よく無事だったわ
ソフィア: これからも出てくるわよー。よく出てくるから、気をつけた方がいいわね
バル: 大丈夫。あなたはわたしが命に変えても守ります
バルムンクは例の笑顔を見せた。白い歯がのぞく。そして、カメラはバルムンクへとズームアップした。
バル: きまった!
アス: なに敵もいないところで一人芝居してんのよ。もっと考えなさいよ!
ソフィア: さっきの意味無いよー
バル: 演出ですよ♪ 演出♪♪
アス: 演出なんてしなくても自然でいいのよ、自然。
といいつつ、アスタシアはバルムンクを向きながら横目でカメラを見ていた。そしてカメラは全員を引きで映し出す。

総督は腕を組むのをやめ、椅子の肘掛けに肘をついて頬杖をついていた。若干身を乗り出している。
タイレル: ほう、こんな巨大なロボットまで出現したのか。報告ではたびたび聞いていたが、動画で見ると迫力が違うな。
アス: ええ、それはもう大変だったんです。まだまだいましたから。


画面にはさっきのと同型の巨大ロボットが2台映っている。正面に一台と、奥にもう一つ一台。そして、ミサイルが雨あられと降り注ぐ。
バル: レディーのエスコートの仕方覚えて出直しな!
ミサイルがカメラ正面で爆発した。アスタシアが直撃を受け、倒れる。
アス: あ! うーん…
カメラは倒れたアスタシアを映している。と、カメラは急にパンし、画面には同じように倒れるバルムンクの姿が。
ソフィア: こんちくしょぉーっ!!
剣を構えて、ソフィアは巨大ロボットに突進する。
レイナ: …ふう、しかたないわね
そこで、カメラは急に下を向き、何だかよくわからない物を映している。

レイナ: カメラマンにまで頼るなんてね
アス: ホント大変だったんだから……
タイレル: 何を映しているのかわからない部分は早送りしてくれ


スクリーンには巨大ロボットの残骸が映し出された。そこで早送りはストップし、通常再生が始まった。

ソフィア: ふぅ
アス: ‥‥油断してたら大変なことに…
ソフィア: 今のちょっとつらかったかな
アス: ちょっとどころじゃなかったわよ
ソフィア: 挟み打ちだからね

アスタシアは正面に向き直った。
アス: ねえ、レイナさん
レイナ: なに?
アス: カメラの方は大丈夫だったの?今のとこだけ撮れてないといいわ
ソフィア: ん…どうだろ。動いてはいるみたいだけど.
レイナ: ‥‥ばっちりとったわよ…(ぼそ
アス: え、ええっ…どうしよ‥ああ、こんなんで大丈夫なのかなぁ?
ソフィア: まだまだ先は長いわね‥ あら?もうなの?
バルムンクが開けた扉の先の部屋には、大きな転送ゲートが見えていた。
バル: 終点のようです
アス: やった! もうすぐ仕事終わり! じゃなくて…… さあ! いよいよだわ!気合い入れていくわよ! 準備はいい?
ソフィア: OKー
バル: 了解です。あなたのためならー死をも克服して見せます(ポーズ決め)
アス: だからその「あなた」ってのはだれなの?ちゃんと名前で言ってよ
バル: あなたですよ…あなた♪ ビデオの前のね
アス: ‥‥
バル: どうかいたしましたか?(にこやかに)
アス: ちょっとだけでも期待したわたしがバカだったわ
ソフィア: ふふふ

レイナ: 何を期待していたのかしら?
アス: え? なんでもないの! 忘れてよ!