ハンターズにも愛があります
敵の残骸が散乱した広間で、バルムンクは銃を降ろした。相変わらずのつくり笑顔である。
バル: ふっ…お怪我はありませんか?お嬢さん
ソフィア: 大丈夫よ。ぜんぜん平気
アス: あっ!この柱はなに?
アスタシアが大げさに叫んだ。見ると、渡り廊下の横には大きな柱がいくつも見える。そこから盛んに湯気が立っている。
ソフィア: ジェネレイターかな
バル: んー冷却装置かも…
アス: 写真撮っておきましょ(カシャ)
ソフィア: どっちにしてもここを壊せばここは沈黙するのに。でもそうなると転送装置使えないから帰れないのよねー
バル: やってみます?(にこにこ)
ソフィア: やめてよ!ホントに帰れなくなるんだから
バル: 冗談ですよ♪冗談
タイレル: そこそこ仕事をやっているように見えるのは、果して本当なのか、それとも……
アス: もちろん演技なんかじゃありません!
タイレル: そうか、演技かもしれない訳か。ふむ……
レイナ: 見事に墓穴を掘っている……
スクリーンにはアスタシアの顔がアップで映った。
アス: レイナさん、撮影疲れない?かわったげようか?
バル: かわりましょうか?
レイナ: 大丈夫よ。戦闘がんばってね。私が加勢しなくても問題はなさそうだから
アス: そう?それじゃお願いしますね
バル: 綺麗な方の声援さえあれば私は不死身ですよ♪
アス: カメラ持ってると戦闘をサボれたとは‥読みが浅かったわ
タイレル: ハンターズの連中は血の気の多い奴ばかりだと思っていたが、アスタシア君はそうでもないようだな
見るとアスタシアは恥ずかしそうにうつむいている。
アイリーン: それにしても、このバルムンクさんという人は、しじゅうこんな調子なんでしょうかね?
アス: え、ええ、それが……
坑道のロボットがソフィアに襲いかかる。ソフィアが一発殴られた所を、バルムンクがすかさず加勢する。フォトン弾の一発を浴びてロボットは動かなくなった。
バル: ちっ…女性はもうちょっと丁寧に扱えってんだ! お怪我はありませんか?お嬢さん
バルムンクは笑顔で尋ねた。
ソフィア: ちょっと痛かったかな?
ソフィアはバルムンクの顔を見てにこっと微笑んだ。
アス: ふふふ、いいわね。ちょっとしたロマンスもあります、ってね
バル: ?(照れ照れ) いやーそんな…ロマンスだなんて
ソフィア: ? …なに、勘違いしてるの?
アス: ハンターズって面白そうだなぁってとこをちゃんと見せなきゃね
バル: わたしのまぶたにはあなたしかうつっていませんよ(きりりとした顔で)
アス: そうやってすぐターゲット変えると嫌われるわよ。ふつーにしてればいいのよ、ふつーにしてれば。
バル: ターゲットだなんて、心外な…わたしはすべての女性の愛の下僕です(胸はり)
アス: 「すべての」ってとこがダメなの! もう、わかってないんだから‥
カメラが引いて、全員の姿が小さくなっていく。ソフィアが肩を落としているのと、アスタシアが横を向いていながら目だけカメラを見ているのがよく分かる。
タイレル: 「面白い」というより「滑稽」と言うのだ、この場合は。
アイリーン: ハンターズ募集にはいいかもしれませんね。仕事が楽そうで。
レイナ: ハンターズの質がますます低下しそう……
スクリーンには転送ゲートが大きく映っている。やがてカメラがズームアウトし、その周りに集まった3人が視界に入った。
ソフィア: あら、次のエリアね
バル: ですね…
ソフィア: もうちょっと回ってみる?
アス: いいんじゃない?先に行けば
バル: 了解です
ソフィア: じゃ、いこ
ここでカメラはアスタシアの顔にズームインする。
アス: ふふ、こっち向いてる…このへんでニコッと‥
そしてカメラはパンする。周りはだれもいない。
アス: あ、ああー。待ってー
慌ててゲートに入るアスタシアを、カメラは揺れながら追いかける。
タイレル: 少しだけ出来を確認するつもりだったのだが、つい見入ってしまった
アイリーン: 5分後にラグオル現住生物の定期研究報告会がありますが……
タイレル: 出なくていい。科学者連中は勝手にやるだろう。それより……
アイリーン: それより、何ですか?
タイレル: コーヒーのおかわりを持ってきてくれ
総督が空のカップを振ると、秘書はさっさと出ていった。