仲間?
追いついた二人をナリとラベンダーは笑顔で迎えた。
ドラ: 僕らも連れていってください
ナリ: 来たね
ドラ: 僕は頼りないかもしれないけど、がんばりますから
ナリ: ガート、さっきはすまなかったな。ワタシは臆病なんでね。
ガートは、ドラの後ろ、少し離れた所に立っていた。ドラの背中を見つめていた。
ガート: 僕が悪いんだ…
彼は小さな声で言った。ナリには聞こえなかったかもしれない。しかし、彼は相手のことなど考えてはいなかった。ただ、自分に向かって言ったのである。
ドラ: ホラ、笑顔笑顔
ドラは振り向いてガートに小声で言った。ガートは聞かなかったふりをした。最後の笑顔はいつのことだったか…。彼には、たかだか数十分前のこともずっと昔のことに思えた。
ラベンダー: えーと…さっきのことはお礼を申しますが、目的の分からない方とご一緒ということは…
ガート: やっぱりこんな僕では信じてもらえないか…
ナリ: 目的って…さっきの探検というやつかい?
ラベンダー: ただの探検するにしても、目的ってものはあるんじゃありませんか?
確かにガートには目的があった。取るに足らない目的が。しかし、今はとてもそんなことをする気分ではない。それに、最初から気晴らし半分で出てきたのだから、ただの探検というのもそんなに間違いではなかった。
ガート: 目的…さっきなくなったよ。出てきた時の目的、それを果たす元気はもうない。
ガートはここで言葉をいったん切ると、大きくため息をついて、続けた。
ガート: でも…探検のつもりでついていくのは、悪いことじゃないかなぁ…
ドラ: ガートさん!
ナリ: そうだ、一緒に来ればまた元気も出るかもしれないよ
ドラ: そうだ! 僕が精のつく料理を御馳走しますよ。調理器具も一式持ってきてるんです! ほら!
ガート: 今!?
ラベンダーは一行をにこにこしながら見ていた。ときどきうなずきながら。しかし、ドラが調理道具を出しはじめると、ふーっと一つ大きな息をして、鎌を握り直した。
ラベンダー: じゃあ、私はこれで……
ナリ: お、おい!
ドラ: ラベンダーさーん! 追いかけましょう
ガート: ラベンダー、っていうのかい?いい名前だな‥
ラベンダーはそそくさと部屋を後にした。二人が追いかけるのを見てから、ガートもゆっくりついていった。
ラベンダーは足早に進んだ。鎌で敵をなぎ倒すと、皆が一息ついている間に、そそくさと出口の扉に向かう。
ナリ: ふう…。足が速いから、ついていくのが大変だよ
ガート: 彼女、あんなに急いで何を?
ナリ: 教えてもらってないんだよ
ガート: 知らないのか…
ドラ: も、目的がわからないと信用できないって彼女が言っていたような…
ナリ: 彼女が他人を信用する条件とその逆は違うだろ?
彼はこの不公平をなんとも思っていないのだろうか?ガートは思った。やはりドラと同族だ。人間はそうはいかない。騙し騙され、裏切りと報復の連続だ。この自分のように。
ラベンダーはもう次の部屋で新たな敵に鎌を振るっていた。
ナリ: おいていかないでくれよ。ついていくのも大変なのに。
ドラ: じょ、女性なのになんて足の速い…
ラベンダー: あら?先に言ったはずですわよ?私は私の目的のために勝手に行くからついてきたいのならばご自由にと
ナリ: ……そうだったな
ドラ: そ、そうですか?さっきも危なかったのに…。
ドラはラベンダーとガートを交互に見た。そしてうなずいた。
ドラ: わかった、照れてるんだ! 僕にはわかっています! ラベンダーさんは人見知りするので初対面のガートさん相手に照れてるんだ!
ラベンダー: いえ、違います。
ラベンダーはにこやかな顔を崩さず言った。しかし、言葉ははっきりしていた。怒った様子も、むきになっている様子もない。
ラベンダー: 群れて行動すると私が死ぬ確率低くなるでしょ?
死ぬ、という言葉を聞いて、ガートは一瞬びくっと身を震わせると、一瞬ラベンターの顔を見た。死、という言葉は、今の彼には妙に現実的に、近いものに感じられた。死ぬ、それも生き方も一つだ。
ナリ: ガート、君はさっきから何をぶつぶつと言っているんだい?
ナリが、うつむいているガートの顔をのぞきこんで尋ねた。
ガート: いやなに…。なにか言ってたんだろうか?僕は?
ガートは、思っていることをそのまま口にしてしまっていたことに気がついた。僕はいったいどうしたというんだろう?そういえば、一人じゃなかったんだな。
ナリ: なにか言ってたんだろうかって…。若そうに見えるんだがな