事件の真相
4人の行く手に、また例の巨大ロボットが立ちはだかった。多数のミサイルの直撃を受けてアルトゥアが昏倒した。その間に他の3人がありったけのダメージを叩き込んだおかげで、被害はそれだけに食い止められた。シーナがリバーサーをかけると、アルトゥアは起き上がった。
アルトゥア: ったく、なさけねぇ... わりいな
ヴァリシス: ほっ、元気そうでなによりです
エリヤノフ: 気にしない。君は結果として生きている
シーナ: ふふっ、せやなぁ
エリヤノフ: 過程がまずかったら、良い結果を見るんだな
シーナ: 生きてるんやから感謝せな
アルトゥア: そうだな
エリヤノフ: まぁどっちも悪かったら... 良い動機でも見ることだネ
シーナ: ははっ、違いないっ
そう言うと、シーナは一目散に駆け出した。
ヴァリシス: 待ってくださいですぅ〜
次の部屋で他の3人はシーナに追い付いた。
エリヤノフ: シーナ君も無理しないようにな
ヴァリシス: あせりは禁物ですよ
シーナ: まだや!!!
そしてシーナはまた駆け出した。
大部屋には多くの暴走機械があった。退治してもどんどん湧いて出てくるようだった。当然のように例の巨大ロボットも出現した。
アルトゥア: ...きついな
エリヤノフ: ああ、だがここの遭難者たちはもっとキツかったはずだ。
と、その時、ヴァリシスが部屋の隅で、ぐったりしている作業員を見つけた。
ヴァリシス: あっ!! 見つけた!
エリヤノフ: ヴァル君、お手柄
ヴァリシス: 大丈夫ですか!?
シーナ: ちょいまち。気休めにはなるはずや
エリヤノフ: こっちは移送準備してるぞ...
シーナ: ラボまでの辛抱や。もうちょっときばりや
いつものように、シーナがレスタをかけ、エリヤノフが移送の準備をした。その間、ヴァリシスは作業員のそばについていた。
ヴァリシス: ええ?なになに?制御室が..?制御室がどうかしたんですか!?
作業員は口をもぐもぐ動かして、何やら言おうとした。頭を懸命に上げようとして、途中であきらめた。
ヴァリシス: あ、ああ、無理はしないでくださいです
エリヤノフ: ヴァル君!?なにか聞き取れたのかい?
エリヤノフとシーナも駆け寄ってきた。
シーナ: 一つだけ... ジルって奴を見かけなかったか?
シーナは作業員とヴァリシスの間に割り込もうとした。ヴァリシスが後に退くと、シーナは作業員の口元に耳を近づけた。
シーナ: 制御室... わかった。無理するな。あと一息だから安心しい
ヴァリシス: もう大丈夫ですよ
エリヤノフがそっと彼を抱えると、パイオニア2へ転送した。シーナは立ち上がった。
シーナ: 制御室‥やな‥すべての根源は
ヴァリシス: みたいですね、何かあったんでしょうか
エリヤノフ: メインの制御室は…地上にあるはずだが……副脳にあたる、サブ制御室のことか?
シーナ: 多分、一人の馬鹿者が…暴走してんや…
ヴァリシス: とにかく、生存者を探しましょう
採掘場の地図からすると、もうそんなに先はないはずだ。
シーナ: おらへん...
空っぽの倉庫を目の前にして、シーナがつぶやいた。
エリヤノフ: ジル君、のことか?
ヴァリシス: まあ、いちいち気を落とすことでもないですよ。どこかにいますよ。
シーナ: ま、な……回復……や。心も回復してくれたらええんやけどな……
エリヤノフ: そいつばっかりはナ……時間が解決してくれるのを、待つほかない時も、ま、ある…
ヴァリシス: 大変なんですね、人間って…
エリヤノフ: 気を落とすな、としか言えないのが残念だ
そして、そこから制御室への転送ゲートはすぐだった。転送ゲートは非常に大きかった。
シーナ: ここ……やな。皆、いけるか?
ヴァリシス: はい!
ヴァリシス: ここが制御室ですね
制御室は八角形で、それぞれの壁面には大きなディスプレイとコンソールがはめ込まれていた。エリヤノフはコンソールに向かい、操作を始めた。
エリヤノフ: シーナ君、なんだ、何を探せばいい!?
シーナ: 各コンソールを壊せば...
エリヤノフ: 壊してしまっていいのか!?
シーナ: せや! 止めるにはそれしかあらへん!!
エリヤノフ: 引き出す必要のある情報は?ジル君とやらは、構わないのか!?
シーナ: ええんや!!! あの馬鹿が全ての原因や
ヴァリシス: いい?いいんですか?ほんとに?
エリヤノフ: くっ、やむをえない...
エリヤノフは端末から少し距離を置き、手にした銃で端末とディスプレイを撃った。ディスプレイの破片があたりに飛び散った。4人ですべての端末を叩き壊し、ようやく終わったと思ったその時...
ヴァリシス: こ、これは...
上から巨大なロボットが降りてきた。
エリヤノフ: またか... オプト型の光量子認知キュービクル... だが、この肥大ぶりは?
シーナ: えーかげんに目を覚ませちゅーねん!!
4人はこのロボットに攻撃を集中した。猛攻撃を受けて、ほどなくしてロボットは破壊された。
ヴァリシス: 破壊しました...が...本当によかったんでしょうか?あたしワケわかんないです
エリヤノフ: 制御室の生存者は!?
シーナは必死にあたりを見回して、探していたものを見つけた。作業服を着た男だった。
シーナ: この大馬鹿野郎!!
シーナはいきなり男を殴りつけた。
エリヤノフ: 待て。生存者だぞ!?手荒な真似は...
シーナは男の服をつかんだまま、顔だけエリヤノフの方に向けた。
シーナ: こいつが犯人だよ……な、ジル。
ヴァリシス: いったい何が?
エリヤノフ: ああ、僕も同じ事を聞きたいな
シーナ: このシステムを改造したんだよ
ジルと呼ばれた男は起き上がった。怪我はたいしたことないらしい。シーナの顔をしばし見てから、小さな声で話し始めた。
ジル: 自分を……認めさせ……たかった……今まで相手にもされなかった…奴らに
エリヤノフ: それで、この結果か?いったい何が認められたって言うんだ。屍の山が出来上がっただけじゃないか!
エリヤノフは床をがんと殴った。
ヴァリシス: まあまあ、そんなに無理はさせないで! 怪我人なんですから、手荒なまねは...
エリヤノフ: すまん...
ジル: そんなことはないはずだ……殆どの人は閉じ込めたはず…だから…他の人は別の部屋にいる……
エリヤノフは、ジルの口をやさしく押さえた。
エリヤノフ: まった。聞きたいことも言いたいことも山ほどあるが、まずはヴァル君の言うとおりだ。
ヴァリシス: 残りは医務室で聞くですよ
エリヤノフ: クリニックに運んで、そこで...話を聞くのはどうだろうか?
シーナ: とりあえず、送還やな。あとは警察の仕事や
エリヤノフはそっとジルを抱え上げた。
ヴァリシス: あたしたちも、帰るですね
エリヤノフ: わかった
シーナ: ウチらも……戻ろ……
ヴァリシス: 他、生存者、発見できず
エリヤノフ: 僕らの鉱区では4人救助か…戻ろう
4人はゆっくりと転送ゲートに歩み寄った。