崩落・捜索・救助

ラグオル地下坑道で落盤事故が発生。直ちに救助チームが編成され、いまだに危険な事故現場に向かった。そこで彼らが見たものは...

事態の推測

下層のロボットは大きく、さすがの彼らも苦戦した。何とかすべて沈黙させはしたものの、皆アザだらけだった。シーナは全員にレスタをかけた。
エリヤノフ: すまん、助かる
ヴァリシス: まあまあ、これもチームワークですよ、ってあたしが言うことじゃないですね
シーナ: ふふふっ... せやな
エリヤノフ: 気になるのは、暴走したはずの採掘機械連中もチームワークが見られること...なんだが...ま、今気にすることじゃないがね。
シーナ: ただの暴走じゃない・・・?
考え事をしながら歩いていたエリヤノフが、突然声を上げた。
エリヤノフ: いたぞぉ!
アルトゥア: ん?
見ると、部屋の奥に作業員が一人座っていた。
ヴァリシス: よかったです〜
エリヤノフ: アル君がどかした箱の後ろだ。でかした。
エリヤノフがアルトゥアの肩をぽんと叩くと、アルトゥアは顔をそむけた。
アルトゥア: けっ、よく生きてたな

エリヤノフが移送の準備をしている間に、ヴァリシスとシーナが作業員に駆け寄った。
ヴァリシス: 大丈夫ですか?
シーナ: よかったぁ... 大丈夫や、息しとる
シーナが応急手当をした。その後、エリヤノフがそっと抱え上げてゲートの上に乗せた。怪我人は無事移送された。
エリヤノフ: 今シーナ君が治癒をしてくれたからな。ぎりぎり、もちそうだ。
シーナはほっと一息つくと、部屋の隅に座りこんだ。
シーナ: 頼むで...頼むから生きていてくれよ...

ヴァリシスは、あたりをきょろきょろ見ていたが、ふと何かに気づいた。
ヴァリシス: 小部屋にいたせいですね。それで採掘機械たちに見つからなかったんだ
エリヤノフ: ああ、なんとも気になる符合じゃないか?
ヴァリシス: 単に暴走してるだけじゃない、てことですね。
エリヤノフ: 連中、探してる...とでもいうのかい?
ヴァリシス: 探している?襲っている?
それを聞いたエリヤノフは、自分のフェイスプレートをぺしと叩いた。
エリヤノフ: おいおい...キナ臭くなってきたもんだナ
それを聞いたシーナは突然立ち上がった。
シーナ: 可能性は...あるな... 急ごう。まだ間に合うかもしれない
エリヤノフ: 3人目を見つけに、な
ヴァリシス: 間に合ってください! 神様!


シーナ: なにぃ!!!!
一行がいつものロボットを相手にしていると、突然、とんでもない物が現われた。肩にミサイルポッドを装着した巨大ロボットである。幸い、発見が早かったので事なきを得た。
アルトゥア: こいつぁまいったね。益々望み薄だなこりゃ
ヴァリシス: 掘削機械!?あれがですか?そりゃ、ばかでかいのがあるのはわかるですが、おっきいだけじゃなかったですよね?
シーナ: あんなごっついのが...
エリヤノフ: ...いや、どう考えてもそんな穏便なモノじゃなかろう。採掘は、靜かに掘るのが原則だよ。あんなにばかすか爆発させるもんじゃ...ない
アルトゥア: ミサイルで掘削なんて派手過ぎねぇか
エリヤノフ: ああ、アル君の言うとおりだ。山ごと崩れておっちまうよ。あんなのじゃ
3人が色々と推測話をしていると、今まで口をはさまなかったシーナが靜かに言った。
シーナ: アレは坑道を掘り進む為の機械や...あの程度でないと壊せない場所もあるんや...
エリヤノフ: 逆にシーナ君の言うとおりだとすると、何を壊してたかしらんが、そいつはただの岩盤じゃ、ないね
シーナ: せやけどあんなに弾薬は積んでへんはずや。普通数発しか積んでへん...
ヴァリシス: うーん、掘削のことはよくわからないですけど、そもそも何を掘ってたんでしょ?
エリヤノフは首を横に振ると頭をかかえた。
エリヤノフ: ああ、そこまで立ち戻っちまったなぁ? まったく...

しばらく沈黙が続いた。そして、それを終わらせたのはシーナだった。
シーナ: 特殊な鉱物や...普通では精製できへん。それを採取しとったんや
ヴァリシス: シーナさん、知ってるんですか?
シーナ: ま、な...知り合いがおるさかい、ソイツから少しきいとったんや
エリヤノフ: そうか。だがあのミサイルはどうみても化学エネルギー弾頭...装甲板を焼き切るためのものだぞ?そんな堅さのものが、この地下に..?
シーナ: らしいで...

そして、シーナは急に振り向いた。
シーナ: とりあえず先へ進も。まだ生存者はおるはずや
ヴァリシス: とにかく普通じゃない、ってことはわかったです
エリヤノフ: ああ、これまで以上に用心しないと、ナ。僕らが遭難しかねない
シーナ: こっからは気合い入れていかな危険や
アルトゥア: いるのかねぇ、生存者なんて
シーナ: 絶対に居る!!
シーナの言葉は絶叫に近かった。シーナの声の強さにたじろいだアルトゥアは、こう言うのが精一杯だった。
アルトゥア: ま、いいけどね...


4人は長い通路を走っていた。すると、エリヤノフが急に立ち止まって、自分のフェイスプレートをがん、と叩いた。
エリヤノフ: さっきから気になってたんだが...
ヴァリシス: どうしたですか?
エリヤノフ: あのデカいのは..ありゃ、キャストだ。同類の僕には、よくわかる
ヴァリシス: ただの機械じゃなくてですか?
エリヤノフ: ああ、間違いであってくれればいいんだがね
シーナ: キャスト‥‥まさかな‥‥
ヴァリシスは、全員の顔をきょろきょろ見回して、そして自分の銃を見つめた。
ヴァリシス: あわわ... キャスト殺し?あたしが?
エリヤノフ: 僕も、そうなる
ヴァリシス: そ、そんなぁ
エリヤノフ: だが、リファレンスコールに応答がなかったからナ...もう正常に生きては居まいよ
シーナ: ウチのカンが間違いじゃなければアレは本当のキャストとはちゃうはずや。ま、正直はずれててほしいんやけどな...
ヴァリシスはやっと顔を上げた。
ヴァリシス: カン... ですか.. そんな不確かなものを言われてもですねぇ... あ、いや、えーと...
アルトゥア: なんでもいいぜ、向かってくるならブッ倒すだけだからな。そういう面倒なのは苦手だ
エリヤノフ: だが世の中は不確実にできてるんだよ..面倒なことにね、ヴァル君
アルトゥア: それで戦う気になれるならそれでいいんじゃねぇか
シーナ: ま、気にせんといて.. いこか
エリヤノフ: そうだ、その結果としてヒトが助かるなら、な
ヴァリシス: 望みがある、ってことですね。わかりました!
エリヤノフ: それでいい
ヴァリシス: がんばるです! 人助けですから!
エリヤノフ: よし、小部屋の一つも見逃さないようにいこう
ヴァリシス: はい!

4人は決意を新たに、通路を走り抜けた。しかし、その先は空っぽの部屋だった。
シーナ: だれもおらへん...