希望の光
4人は、次の工場区画へつながる長い通路を歩いていた。途中の、少し幅が広くなっているところで、先頭を歩いていたエリヤノフが大きな声を上げた。
エリヤノフ: いたぞ! 一人発見!
残り3人が急いでエリヤノフのところに駆け寄ると、作業服を着た男が物陰でぐったりしていた。
エリヤノフ: 確保する.. 上に移送するぞ
ヴァリシス: よかったです〜
シーナ: やっと一人か
ヴァリシスが作業員の頭の方に回って言った。
ヴァリシス: 話でも聞ければ..もしもーし
作業員は、うつろだった目を見開くと、頭を少し持ち上げ、大きく息をした。そしてごほごほと咳込んで、頭をまた沈めた。
ヴァリシス: うわぁ、やっぱしゃべらなくていいです! じっとして、じっとして...
エリヤノフ: いや、上から話しかけてもダメだ。そう...
エリヤノフは膝をついて、顔を作業員の顔のすぐそばに持ってきた。
エリヤノフ: 動かなくていい.. 小声でいい... 何があったか、話せるか？
作業員は何度かふうふうと大きな息をしたが、やがて顔をそむけて目をつぶった。
エリヤノフ: だめか。相当手ひどくやられたな
シーナ: どや？
エリヤノフ: 口も聞けない状態だよ。ヴァル君が、手がかりにならないかと思い付いてくれたんだが、ね
すると、シーナが作業員にレスタをかけた。
シーナ: これで、どや？
エリヤノフ: よし、もう一度やってみるか
エリヤノフは顔を上げて他のメンバーに賛同を求めたが、ヴァリシスは顔を下げたまま言った。
ヴァリシス: うーん.. この人になんか悪い気がするです
エリヤノフ: よし、時間が惜しい。上に送ってあとはクリニックの者に任せるか
エリヤノフは作業員をそっと抱き起こすと、リューカーで作った転送ゲートの中に置いた。ゲートの光は作業員の姿とともに消えた。
シーナ: 大丈夫やろか...
ヴァリシス: ふう、何はともあれ、望みが出てきたです
シーナ: せやな
ヴァリシス: あたし達が来たのも無駄ではなかったってこと
エリヤノフ: そうだナ.. そうだよ
アルトゥア: さぁって、んじゃ次いってみっか
4人は立ち上がって武器を構え直し、走り出した。
シーナ: ジル... まっとき...
そうつぶやいたシーナの声はとても小さかったので、他の3人には聞こえなかった。
工場区画はフロアも巨大で、そこは機械群や上から落ちてきた巨大な岩、そして暴走ロボットの残骸で一杯だった。一目見ただけではとても部屋の奥までは見渡せない。
エリヤノフ: 広いフロアは、手分けしてあたろう
ヴァリシス: だれかぁ〜
シーナ: だれかいないか〜
声を枯らして叫んでも応答はなく、やがて4人は中央に集まってきた。
ヴァリシス: いないです..
ヴァリシスは首を横に振った。
エリヤノフ: ダメか。空振りだ
シーナ: せやな... 次いくで
シーナが素早く他の3人を見回し、皆がうなずいたのを見てから、走り出そうとした。しかし、その部屋には入って来た通路の他に扉が二つあった。シーナは一方の扉に歩み寄った。
シーナ: こっちかな？
エリヤノフ: わからん
ヴァリシス: 全部まわるですよ
全員うなずいて、同じ扉に駆け出した。
エリヤノフ: どっかに下への入り口があるはずなんだが...