何でも屋9: 試験の調子は?

今日はいよいよひかりのハンターズ試験.暇な「何でも屋」の面々はこっそりとその様子をのぞきに行くことにしましたが...

元締めの思惑

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3人は扉を抜けた森の奥に集まった. なつめはひかりがついて来ているかどうかを振り返りながら確認している.
ゼロ: 仕事あったんですねぇ〜, アスタシアさん
アスタシア: 仕事なんてあるわけないじゃない
驚くゼロにアスタシアはあきれ顔で答えた.
ゼロ: でも, さっき, あるって
アスタシア: そんなの信じてたわけ?
なつめ: それは口実だよ
ゼロ: ええ〜〜, うそだったんですかぁぁ
なつめ: しっ
なつめがまたゼロの口を押さえた. そして反対の手で頭を軽く殴った.
ゼロ: あぅ, いたぁい
なつめ: 大声出して言わないでよ
ゼロ: だってぇ

その時, 背後から草のこすれる音がした. なつめは振り向いた.
なつめ: むっ!! まだ敵がいるか!!
ゼロ: どこどこ?
なつめはもと来た方に駆け寄った. 音のした方をよく見てみると, 音の主はひかりだった. ひかりは背の高い草むらに身をかがめていたが, 槍の先が黄色く光っていた.
ひかり: わっ
ひかりは驚いてさらに身を縮めた. しかし, 槍の先は見えたままだ. なつめは相手を見つけてほっとして, アスタシア達の方に引き返した.
なつめ: 気のせいか……ごめーん, あたしの勘違い
アスタシア: いいのよ. よくあること.

なつめが戻ってきた所で, アスタシアはゼロにひそひそ声で言った.
アスタシア: で, ゼロさん, 食料プラントまで案内してよ
なつめ: 頭のアンテナは伊達じゃないでしょ
ゼロ: ええ〜〜ひどいよ〜
アスタシア: ゼロさんもわからないの?
ゼロ: いや, わかりますけど……
アスタシア: わかるの?じゃ案内してよ
ゼロ: でも, アスタシアさん, さっきひかりちゃんに手伝ったらだめって言いましたよ〜
なつめ: それも口実だよ
なつめは横からひそひそ声でゼロに知らせた. しかし, アスタシアは顔色一つ変えなかった.
アスタシア: え?ひかりちゃんとは関係ないわ. わたしたちは食料プラントに勝手に行くのよ. わかった?
なつめ: 勝手にプラントに行って勝手に手伝うようなことするわけだよ. ばれないようにね.
アスタシア: 手伝いはしません! 勝手に行くだけです!
アスタシアは真面目くさった顔で言って, そしてにやっと笑った.
アスタシア: もう……へんなこと言うとわたしたちも共犯になっちゃうわよ
ゼロも納得した様子で手をぽんと叩いた.
ゼロ: なるほど……いいのかなぁ

なつめ: じゃ, 勝手に行きましょうか, 勝手に
アスタシア: さあ, ほら, さっさと行く〜!
二人のかけ声で, 道案内のゼロを先頭に森の奥への移動が始まった.

一方, ひかりは草むらの中に隠れていた.
ひかり: 見つからなかったみたいだあ
なつめが向こうに行ってしまってからは, ひかりにも余裕ができた. 草のすき間から3人の様子をのぞく.
ひかり: 作戦会議が長いなあ. 大変そう. っと……移動するみたい
3人が扉を開けて奥に進むのを確認してから, ひかりはがさがさと音をたてて草むらから這い出した.


3人が森の獣たちと戦っているのを, ひかりが柱のかげで見守っていた.
ひかり: ふうん, 珍しく元締めが前線で戦ってるなあ

森の獣たちを撃退するのにはさほど時間はかからなかった. ゼロがあたりを見回すと, 奥の方にゲートが見えた.
ゼロ: えっと, これかなぁ
なつめ: これよね?
3人はゲートの前に集まった. そして, 急いでゲートを使おうとする2人をアスタシアが制止した.
アスタシア: ちょっと待って. ひかりちゃん, ついてきてる?
なつめ: だいじょぶ. ちゃんと見えるよ
ゼロ: ほんとだ
3人が後ろを見ると, 岩かげから槍の先がちょこんと顔を出している.
アスタシア: ありゃー, 困ったわね
アスタシアはそう言ってにこっと笑った.
アスタシア: OK. さて, 行きましょう.

ひかりは見つかっているとはつゆ知らず, 一生懸命に岩陰にしがみついていた.
ひかり: はぐれないようにしないとね……うんうん
そして, 3人が転送ゲートから消えるのを確認して, ゲートに近付いた.
ひかり: あのゲートで行くんだね. よおし