何でも屋8: ささやかな依頼

リフルちゃんの悩みは、大好きなマグにあげる餌が売り切れてしまったこと。「何でも屋」の面々は、一緒に森に探しに行くことにしました。

内輪もめ

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アスタシア: あ、いた
ゼロ: ストライクさ〜ん
ストライクは、森の奥へ続くゲートを調整している所だった。大声で呼ぶと、ようやく振り向いた。
ストライク: 遅かったな……
アスタシア: もうちょっとゆっくり行ってもらえません?
ストライク: 戦わなくていいようにしたつもりだが……?
アスタシア: でも、ほら、離ればなれになると心配だし……
ゼロ: 私は楽でいいんですけどね……じゃなかった、えとえと、仲間なんですから……
ストライクは無言で転送機を指差した。
ストライク: ともかく、転送機の調整も済んだ……ここを探索して次へ行くぞ
アスタシア: 手分けして探しましょう。リフルちゃんもお願いね
リフル: は、はいっ。ゎ、わかりました。
ゼロ: じゃ、私はどこ探そうかなぁ
4人は原っぱに散った。しばらくして、ストライクが声を上げた。
ストライク: ディメイトだ……
アスタシア: またあった?やっぱりあちこちに落ちてるじゃない
リフル: こっちにはないです……
どうやらここにあったのは一つだけのようだ。皆がストライクの所に集まる。すると、一人だけ勢いよく駆けてくる者がいた。
ゼロ: 回収〜
ゼロはストライクの目の前をさっと横切った。さっきまでそこにあったディメイトは今はゼロの手の中だ。
ゼロ: へへ〜ん。先に取ったもんね
ストライクは無言のままゼロをにらみつけた。そして、ゼロの腹にパンチをくらわせた。ゼロはその場にくずおれた。
ゼロ: いった〜い
リフルが慌ててゼロに駆け寄る。
リフル: だ、だいじょうぶですかっ!?
ストライク: 気にするな……
リフル: ぁ、あぅあぅ……
ゼロ: 大丈夫じゃないよ〜、ストライクさん、本気でなぐったぁぁ
ストライク: 気のせいだ
アスタシア: まあまあ、そんなに取り合わなくても。結局はリフルちゃんのものになるんだから
アスタシアは二人の間に割って入りつつ、心配そうに見ているリフルに声をかけた。
アスタシア: まあ、ああいうのはいつものことだから心配しなくていいわよ。リフルちゃん
リフル: で、でも……あぅあぅ
リフルは苦しそうに地面に両手をついているゼロを見た。ストライクがそれに追い打ちをかける。
ストライク: シフタつきで本気だが……喰らいたいか?
ゼロはぶるぶると思い切り頭を振った。
ゼロ: 結構です
ゼロはやっとのことで起き上がり、一息ついた。そして、べーと舌を出しながら一目散に逃げた。ストライクの放つ衝撃波を紙一重で避けて、大きく円を描きながら走った。
ゼロ: ひえぇぇ

アスタシアはそんな2人を呆れ顔で眺めていた。
アスタシア: 喧嘩するほど仲がいいってね。リフルちゃんもそんな経験ない?
リフル: なかよしさんですか?
すると、リフルの後ろにゼロがやってきた。彼女の小さな身体の後ろになんとか隠れようとゼロは身を縮めていた。
ゼロ: ふふ、これで射てないだろ。勝った
ゼロがにやっと笑って握り拳を振り上げようとしたその瞬間、リフルの横からストライクの蹴りが飛んできた。
ゼロ: あう、いたい……けっ、蹴りとは卑怯だぞ
ストライク: 阿呆
ゼロ: ああ〜、阿呆って言った方が阿呆なんだぞ
リフルを狭んでこんなやりとりをしていてはさすがに放っておけない。アスタシアはうんざりした顔で間に入った。
アスタシア: ちょっとちょっと、二人とも、そこまで。やめなさいってば。依頼人の前で喧嘩なんて
リフル: あぅあぅ……け、けんかしちゃだめです
ストライク: 喧嘩ではない……いじめだ
ストライクはぼそりとつぶやいた。
ストライク: 先行くぞ……
ストライクから順番に森の奥へのゲートに乗り込んだ。


森の奥では雨が降っていた。雨の森に来たのは久し振りだった。実に、記念すべき初仕事以来である。
ゼロ: アスタシアさん、雨ですね
アスタシア: あー、嫌になるわね
ゼロは初仕事の様子を思い出していた。あの日は機械の検査で森に来ていたっけ。ちょうどこんな風に雨が降っていて、アスタシアさんがびしょ濡れになっていたな。雨で服が透けてて……。ゼロの顔は赤くなった。
アスタシア: どうしたの?ゼロさん
リフル: ゼロさん……?
ふと気づくと、アスタシアとリフルはゼロを不思議そうに見ていた。
ゼロ: ん?いや、べっ別に。あはははは
アスタシア: 早くしないとおいてくわよ。ほらほら
アスタシアが後ろに回ってゼロの背中を押した。ゼロはあわてて杖をつかんだ。
ゼロ: 行こう行こう
リフル: は、はいっ