逃げて追いかけて
ゼロ: 敵だぁ、逃げろ〜
アスタシア: 逃げるんじゃなくて、ね……
森でも逃げ回るゼロにアスタシアはあきれ顔だった。
ストライク: 敵前逃亡は死……だ……
ゼロ: 死はいやだよ〜
リフル: あぅあぅ……てきぜんとうぼう……
リフルがおろおろしているのを見てストライクは付け加えた。
ストライク: ゼロだけだがな……
ストライクの冷たい視線に、ゼロはむきになって反論した。
ゼロ: それに、敵前逃亡じゃないですよ。勇気ある、戦略的撤退と言ってほしいですね
ストライク: 勇気も無いくせに何を言ってるか……
ゼロ: ああ〜〜、わたしだってね、勇気は持ってますよ
アスタシア: あるんならちゃーんと見せなくちゃ、ね
ストライク: では次、敵が出たら全滅してもらおう……
ゼロ: たっ例えば、夜中一人でおトイレ行くとか、えとえとそれから……とっとにかくあるんです
アスタシアはふふっと笑って、軽くうなずいた。
アスタシア: 無理はしなくていいけど、でもねぇ、逃げてばっかりだとリフルちゃんにも格好がつかないでしょ?
ゼロはその言葉で突然思いついたように、リフルの横に回った。
ゼロ: あっ、じゃじゃ、私リフルちゃんの護衛〜
リフル: ……は、はいっ。ぇとぇと……よろしくおねがいします
ゼロ: あっはい。まっかせて。リフルちゃん
ゼロはどんと胸を叩いた。しかしその威厳のある格好も長くは続かなかった。
ゼロ: けほけほ……強く叩きすぎちゃった
リフル: あぅあぅ、だ、だいじょうぶですか……?
ゼロ: えっ?うん、大丈夫です
リフル: はぃ……えとえと……
ストライクが冷ややかな視線でゼロをながめていた。ゼロは少し肩をすくめ、目を合わせないように気をつけた。
ストライク: これでは逆に守られそうだな……ラブコメなぞやってないでさっさと行くぞ……
ゼロ: らっ、ラブコメって……何言ってるんですかぁ
ゼロとリフルは顔を見合わせた。少し赤くなっている。
ストライク: ふん……
ストライクは一人でさっさと歩いていってしまった。
アスタシア: そのへんにメイトやフルイドがあるかどうか、よっく探してから先に行ってね
アスタシアは森の隅から隅までを丹念に歩き回って調べていた。ゼロとリフルは二人一緒になって草むらをかきわけていた。
リフル: あ……
ゼロ: ああ〜〜、フルイドみっけ〜〜
アスタシア: あった?
リフル: は、はいっ
アスタシアが駆け寄ってくる。そこにあったのはトリフルイドだ。
リフル: トリフルイド……ゼロさんすごいです。モノフルイドよりすくないです。
ゼロ: えっそう?へへ〜ん、そうでしょう、やっぱり私はすごいんですよ
ゼロはやってくるアスタシアに向かって、胸を張って言った。
ゼロ: アスタシアさん、聞きましたか?私すごいって
しかし、アスタシアはゼロの顔を見もしなかった。
アスタシア: はいはい。ストさんの後を追うわよ。急いで!
扉の向こうはいつものように森が続いていた。しかし、猛獣達はいなかった。その代わりに、通路の真中にメイトが置かれていた。
ゼロ: ここにも見っけ〜
ゼロはメイトを大喜びで回収していった。
ゼロ: ああ〜〜、ここにも〜〜
メイトの回収はゼロにまかせて、アスタシアはストライクを探していた。しかし、見回してもどこにもいる様子がない。
アスタシア: ストさんいない……まったく、どこまで行っちゃったのかしら
リフル: あぅあぅ……はやくおいつかないと、またおこられちゃいませんか……?
アスタシア: ええ、急ぎましょう
ゼロ: ついてく方が大変ですよね。アスタシアさん
ゼロはくすっと笑った。その笑いには別の意味も込められていた。
3人は細い通路を抜け、別の扉をくぐった。
ゼロ: ここにも〜〜
アスタシア: ここにもいない……
ゼロとアスタシアは別のものを探していた。
ゼロ: ああ〜、もしかしてストライクさん迷子になっちゃったとか
アスタシア: そんなことないと思うけど……
アスタシアはふと横にいるリフルを見た。リフルは大きく息をしていた。
アスタシア: リフルちゃん、大丈夫?急ぎすぎてない?ちゃんとついてこれる?
リフル: ま、まだだいじょうぶです
ゼロはそんなリフルを感心した面持ちで見ていた。
ゼロ: えらいなぁ。私ならすぐ……
アスタシア: そう?じゃ、行くわよ
リフル: はいっ
アスタシア: いい返事ね
アスタシアはそう言うとゼロを見た。
アスタシア: ほら、ゼロさん、聞いた?この返事
ゼロ: あう、私に振らないでよ〜
ゼロは頭をかきながら答えた。
アスタシアは笑顔でゼロを見ていたが、急に真面目な顔になって出口へ向かった。
アスタシア: あっと、こうしているうちにもストライクさんが
リフル: はやくいかないとです
ゼロ: 世話が焼けるなぁ、ストライクさんは〜