戦闘
大部屋に入ると、パワードスーツを付けた戦闘員が多数接近してきた。力は強いが動作はかえって遅い。各個撃破で退治することができた。
アスタシア: よし、やっつけたわ
ストライク: 戦闘員か
なつめはあっと声をあげたが、急に黙ってしまった。
なつめ: たしかにつんつんの陰が……気のせいかなぁ?
アスタシア: 気のせいよ
その時、どこからかさっきの男の声がした。
声: ほほう、なかなかやりますね
アスタシア: 天井から?
ストライク: ふん……殲滅用戦車でも持ってこい……
なつめ: どこだ?出てこい、ひきょーもの!!
声: 私のところまで来れたら考えておきましょうか
そこでぷつっと放送の切れる音がした。
ストライク: ち……
なつめ: なんか三下の悪役の台詞だよね
ストライク: まあいい……奴は殺す
なつめ: 行こっか、その三下のとこまで
ストライク: ああ……
アスタシア: ふう、なかなか銃は使い慣れなくって……
ストライク: 扱うなら銃にしろ……血の雨に打たれるのは俺だけでいい……
目標がなくなって、アスタシアは構えた銃を降ろした。はるか前で、ストライクが腕を返り血で血まみれにしながら立っていた。
なつめ: ところでさ、元締め、BPってなんの略?
アスタシア: ブラックペーパー。噂でも聞いたことないの?
なつめ: 新聞は見ないんでね。
ストライク: 闇の商人だ
なつめ: まぁ、ブラックペーパーだかトイレットペーパーだか知らないけど、やるしかないじゃん
なつめはいつものはきはきした口調で言った。
アスタシア: え、ええ、でも……やっぱり……獣相手の方がいいなぁ
なつめ: まあ、ロボット壊しても罪悪感ないからいいけどね。所詮戦闘員はザコでしょ
ストライク: 何を言ってる……あれは人間だ
アスタシア: あのパワードスーツの中には……
なつめ: あらっ?そうだったの!?精度のいい着ぐるみだこと。
なつめは急に真面目な顔で転がっている敵を見つめた。
ストライク: すまない、通信だ……
列の先頭にいたストライクが突然立ち止まった。通信機を取り出して耳にあてた。
姫: やっほー、ストっち、そっちどー?
ストライク: 姫か……こっちはどじを踏んだ
姫: そっかー、じゃ、がんばってねー
後ろの二人もストライクに追いついて、ストライクを取り囲む格好になった。
アスタシア: どうしたの?
なつめ: 姫ってだれよ?
ストライク: 姫は俺の上司だ
なつめ: 姫の尻にしかれてるわけだね。すっげー意外〜〜〜!!
ストライク: そうは言うが姫の実力は俺より上だ……
なつめ: へぇ、すごいじゃん
アスタシア: ストさんにまだ上がいるとはね
ストライク: 上には上がいるものだ
なつめ: で、姫からなんかあったの?
ストライク: 定期連絡だ……
アスタシア: じゃあ特別用事があったわけじゃないんだ
なつめ: じゃ、この用事に専念できるね
ストライク: そうだな……
なつめはほっとした顔をして部屋の出口に向かった。
なつめ: とりあえずいくぞ〜〜!! あのおっさんの顔殴らないと気がすまない
アスタシア: なつめちゃん目がいいのね。わたしはよくわからなかった
なつめ: でもねえ、どっかで見た顔なんだよ。いかにも「殴って下さい」って感じの顔が……う〜〜ん、だれだろ……
なつめが首をかしげながらどんどん歩いていこうとすると、後ろからストライクが声をかけた。
ストライク: 一応、位置の確認をする。少し待て……
ストライクは何やら機器を操作していたが、しばらくして顔を上げた。
ストライク: だいたいわかった。行こう
なつめ: うら〜〜
なつめはかけ声をかけて敵に突進した。そしてまた戦闘が始まった。高速で移動する敵に対して大混戦になったが、ダメージはこちら側が常に上回っていた。
声: なかなかがんばりますね。いいですよ、あなたたち
なつめ: おっ、ほめてくれてありがとう
なつめは思い切り皮肉を込めて言った。
声: いいデータがとれるというものです。ふふ
スピーカーからのその言葉にストライクは苦い顔をした。
ストライク: なつめ……アスタシア……戦うな……
なつめ: え〜〜〜〜〜〜!! なんで〜〜〜〜〜〜!?
ストライク: データを取られている……俺だけが戦う。俺のデータならもう取られているからな……
天井のスピーカーから、かすかにくくくっという笑い声が聞こえた。
アスタシア: わかったわ
なつめ: じゃ、どうしろっていうの?ぼんぼん持って応援ってか?じょーだんじゃないよっ!!
アスタシア: なつめちゃん、依頼人の言うことは聞きなさい
なつめ: あうあう……よし、じゃあ、補助テクニックかけるね。ホントは補助テクニック苦手なんだけどなぁ
声: これは残念だ。せっかくいいデータがとれそうだったのにな
アスタシア: ま、わたしごときのデータとってもしょうがないと思うけど
なつめ: あたしのデータなんて、個人情報のどこが面白いのかしら?
声: さてさて、どこまでがんばれるか見物ですね。くくくっ
ストライクはふんと鼻を鳴らしたが、マイクを通して聞こえたかどうかはわからない。