依頼
なつめ: ふぁ〜〜あ。今日もなんもないね
アスタシア: 眠いわね
最近不景気なのか、今日もまた仕事は店番だけである。アスタシアとなつめはカウンターの前に2人で並んで座っていた。
なつめ: ひかりちゃん、がんばってるかなぁ
アスタシア: かなぁ?
なつめ: 最近連絡がとれないんだよねぇ
アスタシア: うん
とそこにストライクが大きなトランクを持って現われた。
アスタシア: あら、ストライクさん、今日はお仕事ないわよ
なつめ: どうしたの、借金とりにでも追われたの?
ストライクはいつものように店の奥に行くことなく、店のカウンターにトランクを置いた。
ストライク: 今日は俺が依頼人だ……
アスタシア: え?あ、はいはい
なつめ: なにいってんだい。あなたは社員でしょ!!
アスタシア: 違うのよ。いっつも手伝ってもらってただけ
なつめ: なにぃ!! バイト君だったのか!?
ストライク: 雇われていただけだ
アスタシア: 失礼なことを言わないの。ささ、そこにおかけになって
アスタシアはカウンターから中に進み出ると、接客用のソファーにストライクを案内した。なつめもふくれっ面でついてきた。ストライクが腰かけ、アスタシアが腰かけ、そして最後になつめがソファの上であぐらをかいて座った。
アスタシア: えーと、で、今日は何のご用でしょう?
なつめ: 犬の世話?
ストライク: ある施設の爆破を手伝ってほしい……
アスタシア: 爆破?わかりました
なつめはストライクの話を耳をほじりながら聞いていた。
なつめ: 爆破?ハッパ作業でもすんの?
ストライク: やれやれだ……
アスタシア: まあ、そんな簡単な話だったらうちのとこには来ないでしょう
なつめ: 業者に任せてるよね
アスタシア: あ、いや、来るかも……
なつめ: 来るの?
アスタシア: え、いえいえ、何でもないです
実際のところ、「何でも屋」を標傍している以上どんな仕事でも受けるつもりだし、またあまり大層な仕事が来ないのも事実である。
ストライク: 面倒な事があって詳しい事は言えない……
アスタシア: わかりました。ストライクさんの依頼なら信じてますから
ストライク: 報酬は……これだ
と言いながらストライクはトランクを開けた。中にはぎっしりとメセタがつまっていた。
なつめ: 家一見建てられるじゃん
アスタシア: こんなに!?……爆破作業くらいだったらいつもは……
なつめ: どれくらいなの?
興味がなさそうに聞いていたなつめが突然身を乗り出してきた。
アスタシア: あ、企業秘密です
なつめ: ちぇっ、企業秘密か……
ストライク: 失敗しても報酬は払う
なつめ: つまり、失敗してもいいってことは我々はあんまりあてにならないってことか
なつめはまたソファに身を沈めた。
ストライク: 爆弾の設置は俺がやる
アスタシア: あら?ストライクさんも一緒なの?
なつめ: じゃ、あたしたちは何をすればいいの?応援?
ストライク: まあ、護衛という奴だ…それと…変装はした方がいい…
アスタシア: 変装?
なつめ: なんで?仮装大賞でもすんの?
ストライク: 理由は言えない……
なつめ: 聞かなかったことにしておくね
アスタシア: わかりました。なんか刑事ドラマっぽいなぁ。何があるんだろう…
なつめ: かっこいいじゃん!!
ストライクはトランクを閉じ、姿勢を正して尋ねた。
ストライク: どうする……?
アスタシア: ええ、お受けします
なつめ: 危険な仕事じゃなかったらね
アスタシア: ストライクさんがついてるんだし大丈夫でしょ
ストライク: わかった
話もまとまり、3人は準備のために立ち上がった。
なつめ: あれ?つんつんは?無断欠勤?元締め、どうなのよ?
アスタシア: 今日はお休みを下さい、だって。そもそも今日はお仕事なかったし
なつめ: 有給休暇か……どっかバカンスにでも行ってるのかなぁ?
さあ、とでも言うようにアスタシアが肩をすくめた。
なつめ: それじゃ、さっそく変装するからね
ストライク: ああ……
アスタシア: わたしも
2人は準備のため奥の部屋に入っていった。
なつめ: なんか服なかったかな〜。あっ!! ひかりちゃんのみっけ!! 拝借しよう
アスタシア: おまたせ
なつめ: またせたなー!! どーよ!! 別人みたいでしょ!!
店の前で待っていたストライクの前に変装した二人が姿を現わした。
なつめ: どーよ!! 別人みたいでしょ!!
アスタシア: ええ、びっくりしたわ
ストライク: ふ……む……まあいいか
なつめ: というわけで、よ・ろ・し・く
なつめはストライクに挑発するように言ったが、相手は全く動じなかった。
ストライク: 行こう……