大きいことはいいことか?
通路の先は、また柵のめぐらされた部屋だった。アスタシアとゼロが呆然と立っていると、その柵の下の部分をストライクとなつめが何もなかったかのように駆け抜けていった。
アスタシア: こんなの通れないよー
ゼロ: じゃ、待ちましょう
アスタシア: こっちは?
ゼロがほっとしたのも束の間、アスタシアは別の扉から出て行ってしまった。ゼロもあわてて後を追った。
隣の部屋でもロボットが暴れていた。ゼロとアスタシアは二人でとにかくやっつける。すると、ストライクと、少し遅れてなつめが戻ってきた。
なつめ: がんばってぇ〜〜〜!!
アスタシア: 声が……あ、戻ってきたの?
ゼロ: うわぁ、ストライクさん、いつの間に
ストライク: 二人では無理だろう……
アスタシア: ううーん、まぁ……でも、待ってるのもなんだし……
ストライク: なつめも来たな
あたりのロボットを片付けてから、4人は再び集合して一息ついた。
なつめ: あたちを置いていかないで
ゼロ: わーい、お人形だぁ
なつめ: かわいいでちょ?
ゼロ: うん☆
なつめ: ありがと☆
ゼロは笑って、なつめも微笑んだ。
ゼロ: 暗いよ〜
なつめ: こわいよぉ
四人が入った部屋は、照明のない真っ暗な部屋だった。それでも、ロボット達は構わず攻撃してきた。
アスタシア: もう、真っ暗でなにがなにやら……
そして、その部屋を抜けると大広間だった。そこでも機械類に大挙して出迎えられた。空を飛ぶもの、人型のもの、天井にぶら下がっているもの……
なつめ: ちゅかれたぁ……
アスタシア: どれだけ出てくれば気がすむのよ
しかし、敵の数は有限だった。しばらくして、あたりに動くものは四人だけになった。
なつめ: ふぅ……ちゅごいねぇ
アスタシア: ストライクさんとなつめさんは大丈夫?
ストライク: この身体は疲れる……
なつめ: ちゅかれるけどたのちいよ
ゼロ: あはは
アスタシア: 早く元に戻る方法を探さないと
アスタシアがこう言うまでもなく、三人は既に向こう側の扉の前にいた。
ゼロ: いくよ〜、はやくはやく〜
アスタシア: なにこれ?
目の前に、大きな機械装置があった。何をするものなのかアスタシアには皆目見当がつかなかった。どう見ても転送装置ではない。
ストライクがその装置に入ると、瞬間的に付近の空間が歪んだように見え、彼の身体が元の大きさに戻った。
ゼロ: わっ、戻ったぁぁ
ストライク: やれやれだ……
アスタシア: 戻れたのね。よかったぁ
なつめも後に続いた。
なつめ: やっともとの大きさに戻れたよ。でもちびなんだよな……
ゼロは二人が元に戻るのを見て、こっそりと部屋を出ていった。
三人は、ゼロがこっそりと部屋を出ていくのを見つけた。そして、後を追った。
なつめ: つんつん、どうしたの?
見ると、ゼロは部屋の隅の端末の下に隠れていた。
ゼロ: えっ、いや、なんでもないよ。あはあはは
なつめ: かくれんぼは後でね
出てきたゼロの肩にストライクがぽんと手を置いた。
ゼロ: わわ、ひえぇ……
ゼロは今度は頭をかかえて部屋の中をあてどもなく走り回った。
アスタシア: まあまあ、ゼロさんも悪気があったわけでは……
なつめ: 恨みがないとあんな台詞言わないよね
ゼロ: そんなことないですよ〜、恨みだなんて
なつめ: じゃ、怨念?
ゼロ: もう、ストライクさんには良くしてもらってるのに。あはあはは
ゼロは苦笑いを始めた。
ストライク: 食事は期待してていいからな……
四人は狭い通路を延々と駆け足で進んだ。長い廊下を抜けてたどり着いたのは、さっきと同じ機械が二つある小部屋だった。
ゼロ: さっきのと、同じやつかな?
なつめ: つんつん、ごー!!
今度はゼロがその機械に入ってみた。と、突然、ゼロの身体が見えなくなった。よく目を凝らして見ると、床に小さな人型のものが見える。近付いてみると、背丈こそ小さいが、確かにゼロだった。
ゼロ: わぁぁ
なつめ: かぁいい!!
ゼロ: どっどうしよ〜〜、ちっちゃくなったぁぁ
なつめも喜々としてその機械に駆け込んだ。
なつめ: あたしも〜〜
なつめは小さくなった身体のまま部屋の中をうろうろしていた。そして、もう一つの機械の上に乗った瞬間、身体の大きさが元通りになった。ゼロも慌ててもう一つの機械に乗った。
ストライク: ほう……逆も行けるか……
アスタシア: なら安心ね。えい!
アスタシアは機械の上に乗った。ストライクも後に続いた。
なつめ: それじゃ、行きましょ〜〜!!
なつめは、小さくなったストライクとアスタシアに向かって言った。
なつめ: みなさーん、準備はいいですか〜〜〜!! 先生についてきてくださ〜い
大きいなつめとゼロの後に二人がちょこちょことついていった。
なつめ: 大丈夫ですかぁ?どう?ちっちゃくなるのは
アスタシア: はあはあ、もーやめた。走るだけで疲れたわ
アスタシアが荒い息をしている。
ストライク: 俺はこのままでいいが……
ゼロ: でも、装置ないですよ。戻れないですよ
ストライク: 装置はさっきのでいいだろう……
ゼロ: え?戻るんですかぁ?せっかくここまで来たのに
なつめ: どうせならさ、つんつんもちっちゃくなろうよ
ゼロ: いやだよ〜
なつめ: なんでぇ?
ゼロ: 何されるかわからないから
なつめ: それは元に戻っても同じでしょ?
ゼロ: あぅ
通路をいくつか抜けた先には、また例のセキュリティ装置があった。今度はストライクもアスタシアも手が届かない。
なつめ: うりゃりゃあ!!
アスタシア: ああ、だめ
ストライク: 待て……
なつめは、今度こそ機械を親の仇と叩きのめした。扉がすっと開いた。
アスタシア: 開いたけど…いいのかなぁ
ストライク: しかたあるまい……
扉の向こうはまた柵で区切られていた。今度はなつめとゼロは通れない。
なつめ: 行き止まりだぁ
アスタシア: わーい
アスタシアは勝ち誇ったように柵をくぐり抜けたが、その先に敵ロボットが出現した。小さい身体では思うように戦えない。
アスタシア: わわわ
なつめ: 早くスイッチをっ!!
ストライクが部屋の向こうのスイッチを切ったおかげで、柵が消えた。なつめとゼロも戦闘に参加し、しばらくしてすべてのロボットをやっつけた。
なつめ: なめるなぁ!!
アスタシア: ふう。あー、やっと終わった
なつめ: たくさん出たねぇ
なつめ: あっちに大きくなる装置があるよ〜〜
なつめの声のする方向に行ってみると、また例の装置が一つ備えつけられていた。
ゼロ: 押してみようか
なつめがその装置に乗った瞬間、彼女の身体は小さくなってしまった。
なつめ: ぎゃふん
アスタシア: あら、なつめちゃんも仲間入りね
なつめ: 大きくなる装置と間違えちゃった
アスタシア: 期待したのに……
ふと、ストライクとなつめの目が合った。二人はうなずくと、ゼロの足を持って装置に引っぱっていった。
なつめ: えいっ!!
ゼロ: わわ、いやぁぁ! やめてぇぇ
そして、ゼロも同じく小さな身体になってしまった。
ゼロ: ああああああ〜〜〜〜
なつめ: みんな同じだね
ゼロ: ストライクさん、なつめさん、ひどいですよ〜〜
なつめ: それじゃ行こうよ
ゼロ: スイッチどうするんですかぁぁ。誰も押せないんですよ〜
なつめ: そんなのあとあと
アスタシア: 一抹の不安はあるけど……
ゼロ: ああ〜〜、テクニックがぁぁ