衝撃の実験
アスタシア: ストライクさん、遅いわねぇ
ゼロ: どこまで行ったんだろ……
3人が待っていると、なつめが何か動くものを見つけた。
なつめ: あっ、かぁいぃ!! こびとさんだぁ
なつめは入ってきた小人(本当に小人だったのだ)を指さした。
なつめ: 見てみて! こびとさんがいるよ。ここの原住民かな?
なつめはしゃがんで目線を小人に合わせると、声の調子を変えて話しかけた。
なつめ: ワタシパイオニア2ノニンゲン、アナタコトバワカルカ?
そして、返事を待つこともなく、立ち上がって駆け出した。
なつめ: ストライクさん来ないから探しに行ってくるね!
なつめはそう言うなりストライクと同じように前の扉に消えていった。
なつめ: ストライクさーん、小人がいたよ〜〜〜!
その時、下の方からかすかな声がした。
ストライク: 俺はここだ……
アスタシア: あ!!! ストライクさん……
ゼロ: えっどこどこ?
ゼロが慌ててどかどかと駆け込んできた。ゼロはあやうくストライクを踏みそうになる。
ストライク: うわっ
アスタシア: ゼロさん! あぶない!!
ゼロ: 何が危ないんですか?ん?
ゼロはようやく下を見た。そして、小人になったストライクを見つけた。
ゼロ: ああ〜〜!!! すっストライク……さん?
アスタシア: どうしてそんな姿に?
ストライク: 実験……らしい
アスタシア: 実験!?確か、最初にそんなことを言っていたような……
ストライク: ああ……
その時、ゼロが笑いはじめた。
ゼロ: ぷぷぷぷぷ
そしてその笑いは大声に変わった。
ゼロ: あはははは
ストライクはメギドをかけようとするが、何も起こらない。
ストライク: テクニックが発動しないな……
ゼロ: へへ〜ん
ゼロは胸を張ってそう言うと、足先でちょんとストライクを蹴る。ストライクはその足めがけて剣を突き立てた。でも、その短い剣は靴の中まで通らなかった。
ゼロ: ん?なに かやりました?ストライクさん?ははっははは〜
ストライク: ち……
ゼロ: なんだか強くなった気分
アスタシア: こら、ケンカするんじゃないの! だめでしょ、ゼロさん。ストライクさんは被害者なんだから……
ストライク: アス……そう言うな。元に戻れたらしっかり報復してやる……
アスタシア: 元に戻る方法を見つけなきゃ。そのためにも早く行きましょう
ゼロ: この先に行くの?
アスタシアはうなずいて先に行きかけたが、振り返って気がついた。
アスタシア: あらっ?ちょっと待って。なつめさんは?
ゼロ: あれ?そういえば……
ストライク: 俺を探すと言っていたが……
アスタシア: え?どこ行ったのかしら?
ゼロ: 先行ったんじゃ……
と、その時、扉が開いて小人がもう一人入ってきた。
なつめ: わーい、こびとちゃんでちゅー
ストライク: お前もか……
なつめ: あ、ちゅとらいくちゃんいたでちゅ
ゼロは声がした方に慌てて向き直った。
ゼロ: えっどこどこ
そして、動かした足がなつめに当たった。なつめはものすごい勢いでひっくり返った。
ゼロ: ん?声がしたけど?
なつめ: ちゅんちゅん、ひどいやぁ
ゼロはやっと下を見た。
ゼロ: ああ〜〜!! だっ大丈夫ですかぁぁ、なつめさん
ストライク: ゼロ……覚えとけよ
なつめ: 大丈夫でちゅ
アスタシア: 人間をこんなにしてしまうなんて、なんて恐ろしい研究……
なつめ: もとぢめ〜〜
なつめが呼ぶと、アスタシアはなつめの前でしゃがみ込んだ。
アスタシア: なに?
なつめ: おもちろいよ。おちびちゃんになるんだよ。
アスタシア: 元に戻れないかもしれないのよ?それでもいいの?
なつめ: ちらなーい。いまがよければいいの
アスタシア: 言うと思ったわ
アスタシアはあきれ顔で行った。
なつめ: なんとかなるよ
ゼロ: なるのかなぁ
なつめ: ちっちゃくなったら、もりもりたべて、おおきくなればいいんだから
ゼロ: 横にのびないようにね
ゼロはくすっと笑った。
ストライク: 先に岩で塞がれた場所がある。そこを見てくる……
アスタシア: あ、待って。皆で行きましょう
アスタシアも歩き出した。
なつめ: わーい!!
ゼロ: ええ〜〜、行くの〜〜!? ちっこくなるんだよ
アスタシア: 行くの!
なつめ: おもちろいよ〜〜
ストライク: 先に行く
なつめ: わーい!!
ストライクとなつめは、小さい身体のまま、岩の間の隙間を通り抜けて先へ行ってしまった。
アスタシア: あ、ちょっと、ちょっとー
ゼロ: 入れないよー
アスタシアとゼロが困っていると、目の前の岩を壊してくれた。
ゼロ: ちっこいの役だってるね
アスタシア: なるほどねー、メリットもあるのね
しかし、小人たちはその次のセキュリティ装置の前で呆然と立ちすくんでいた。
ゼロ: 届くの?
なつめ: おおきすぎてとどかなーい
ゼロ: あっ、いいこと思いついたぁ。アスタシアさんが、ストライクさんを抱き上げるってのはどう?
なつめ: ちゅんちゅん、抱いてぇ
ストライク: アス……操作法を教える
アスタシア: ええ
なつめ: ここを45度の角度でチョップするの
アスタシアは外野に耳を貸さず、ストライクの言う通りに操作した。扉がさっと開いた。
ゼロ: あら、開けちゃったの〜
アスタシア: わたしだってね、やり方さえ教えてもらえばこんなのくらいはできるわよ
ゼロ: 抱き上げられる姿見たかったのに〜。ぷぷぷ
ゼロはその姿を想像しながら思わず笑い出した。
アスタシア: なに思い出し笑いなんかして
ゼロ: だってぇ、ストライクさんが、アスタシアさんに抱きかかえられてる姿想像すると……
アスタシア: 妙なこと考えないの。ほら、行くわよ
なつめ: ちゅとらいくさん、このままいくの?
ストライク: そうするしかあるまい……
しばらく通路を進むと、また同じセキュリティ装置に行きあたった。なつめは必死で手を伸ばすが、操作はおろかコンソールにさえ手が届かない。
なつめ: だめだぁ。もとぢめ、おねがーい
ストライク: アス……頼む
アスタシア: 同じようにやればいいのね
アスタシアはさっきと同じように、IDカードを使って操作を始めた。
アスタシア: ふふ、だんだんわかってきたわ
ゼロ: なんで私に頼まないの〜、みんな
ゼロはさっと振り返ると、前に向かって歩き出した。
ゼロ: ふーんだ。いいもんいいもん