みんなのその後
なつめ: つんつん〜〜〜、調べて〜〜〜、壊せそうにないから
奥の方でなつめの声がしました。皆が行ってみると、目の前には巨大な転送ゲートがありました。
アスタシア: うわぁ、また大きなゲートね
なつめ: そうなんだよ
ゼロ: でかいなぁ、なんだろ
ひかり: あのデレデレだっけ?がいるところに
ゼロ: デロルレ!
ひかり: だるろら
そして、ひかりは顔をしかめました。
ひかり: 舌かんだぁ
なつめ: 大丈夫?
なつめは思いっきりひかりの口をこじ開けました。
なつめ: 大丈夫みたいだね
ひかり: らいようぶ〜
ゼロも口をのぞき込みます。
ゼロ: どれどれ、ふむふむ
ひかり: やめてよ〜
なつめ: 舌が2枚ついてるよ
アスタシア: え?ほんと?
ゼロ: ついてません!
やがて、なつめはひかりから離れ、一行はまた巨大なゲートに向かい合いました。
ひかり: なんでもいいけど、そのなんとかのいるところにここから行けるのかな?
ゼロ: どうだろうね
なつめ: ここが洞窟の奥なんだよね
ひかり: この先はなさそうだしねぇ
アスタシア: そうなの?ゼロさん?
ゼロ: ちょっとまって
ゼロはポケットから手書きの地図を取り出しました。
ゼロ: ふむふむ、ここが一番奥ですね
アスタシア: まあ、こんな奥にこんなものがあるってことは、これでこの先に行けってことなのかしらね
ひかり: なにか怪しいよね
なつめ: それじゃ、行こうよ
アスタシア: ゼロさん、このゲート大丈夫なのよね?
ゼロ: うっうん、たぶん
ゼロはかすかに冷汗をたらしています。
アスタシア: たぶん?いいわ、今日はゼロさんを信じることにしたから
ゼロ: うん、じゃ、起動させるよ
そしてまわりの風景が変わって……
アスタシア: あ、こいつよ! こいつ!
転送された先は地下下水道の中でした。そして、噂のデ・ロル・レが水の中から頭をもたげました。
ひかり: あれがぁ、ドロドロ〜?なんかでっかいむかでみたい〜
デ・ロル・レが襲ってくるのを避けながら、皆で攻撃を集中させました。外皮が一枚ずつはがれて落ちてきました。
ひかり: あ、装甲ひろい〜。これでしょ、依頼の品
アスタシア: そうそう、それがいいんですって
ゼロ: ふむふむ、なるほどなるほど。装甲がなかなか厚いな。これは使えるかも
ゼロは戦闘そっちのけで何やらメモを取っていましたが、だれもそれに気づく人はいませんでした。
4人の猛攻にあって外皮がすべてはげ落ちたかわいそうなデロルレは、悲鳴にも似た悲しげな声をあげると、下水道の奥に沈んでいきました。
ゼロ: もう終わりかぁ、残念
ひかり: えっへん、ひかりちゃん、えらーい! ラグオルのやまとなでしこをなめるなよー
なつめ: えらいえらい
ひかり: あ、でもおお、あのデロデロ、もっと本当は大きいんじゃないのかなあ。たくさんいるのかな……もしかして……さっきのは子供とか?
アスタシア: そうなのかなあ。まあ、あれが一匹しかいないという保証はどこにもないわね。確かに
ひかり: もっとでっかいっておじいちゃんが言ってたような気がするんだよなあ
なつめは床に散らばった大きな外皮を一つ拾い上げました。
なつめ: 甲羅あったよ。これだよね
アスタシア: あ、これよ、これ
ひかり: あ、装甲ここにもあるよ。これだけあれば十分かなあ
アスタシア: ええ、大丈夫ね。これで
ひかり: ダラダラの装甲からどんなのができるんだろう
ゼロ: デ・ロル・レだよ〜、ひかりちゃん
ひかり: で…でろうらあ!! 舌かんだぁ!! もうやだぁ
ゼロ: はぁ
なつめ: まぁ、一言むかででいいんじゃない?でらりらなんて名前意味ないよ
なつめも怪しげな発音をして、少し顔をしかめました。
ゼロ: やれやれ
アスタシア: さあ、帰りましょう
皆が戻る仕度をしている時に、ゼロは一人だけ隅で何やら自分の通信機をいじっていました。データをどこかに転送していたようです。しかし、それに気づいた人も誰一人いませんでした。
一行は街に戻ってきました。転送ゲートから意気揚々とお店に帰ります。
ひかり: ふふ〜ん、お給料が楽しみぃ
アスタシア: その点は今日は安心していいわよっ
ひかり: わああい
なつめ: んで、元締め、非常勤でいいから雇ってよ
アスタシア: ええ、もちろんいいわよ。ただ、いつも仕事があるとは限らないからね
なつめ: それじゃ、今日の朝の時点で契約したとしたら、今までの不手際はなかったことになるから
アスタシア: ええ、わかったわ。あなたがそれでいいなら
なつめ: うん、あんなこと言って内心申し訳ないって思ってたりして……
ひかり: あはは、でもお給料出るし、許してあげてよ
なつめ: うん、今までのことぜーんぶ忘れるからさぁ
アスタシア: ありがと
ひかり: なつめちゃんって意外と過激な子だったんだねえ。猫かぶってたんだ。もっとおしとやかでもてもてかと
なつめ: こらぁ!!
なつめがひかりを追いかけ回している間に、アスタシアはずっと忘れていたあることに気がつきました。
アスタシア: あ、そうそう、当初の目的はなんだったの?
ひかり: 依頼があったんじゃなかったのかな?
なつめ: ぜーんぶ忘れたから覚えてないや。あったはずなんだけどなぁ……
アスタシア: ふふふ、一本とられたわ
店に入ると、机の上に書き置きがありました。ひかりがさっそく見つけて読みました。
書置: 依頼を一つこなしておいた。結構いい報酬になったから店に役立ててくれ。 ストライク
ひかり: 留守中に依頼があったんだってさ
アスタシア: あらあ、律義な人ね。一人でやったんなら報酬独り占めでいいのに……
ゼロ: 僕も一人でこなして……その手があったか
アスタシア: ん?ゼロさん、なにをたくらんでるの?いーわよ、やれるもんならね
ゼロ: いや、なにも……あはあはあはは
ひかり: じゃあひかり達が仕事に行ってる間に一仕事終えたのかぁ。すごいなあストさん
アスタシアはテーブルに人数分のティーカップと砂糖壷を並べ、休憩の用意をし始めました。ひかりは書き置きの下に置いてあった封筒を開けてみます。
ひかり: あ、なんか金額がすごいよ〜、これ。ほらほら。なんか桁がすご〜い
アスタシア: あ、ほんとだ
なつめ: つんつんの年収10年分だ
ゼロはええ〜っと驚きの声をあげました。
アスタシア: じゃ、ひかりちゃん、いつもより多めにお菓子買ってきていいから
ひかり: じゃ、買ってくるね
なつめ: あたしもー
ひかりとなつめは揃って店を出ていきました。ゼロはシャワーを浴びに行きました。アスタシアはせっせとお茶の用意をしていました。
ひかりとなつめはいつものお菓子屋の店先にやってきました。
なつめ: んで、なに買うの?
ひかり: えっと、おばちゃ〜ん、たこやき5人前〜
なつめ: ビックリマンチョコちょーだい
おばちゃん: チョコは人気商品だから売り切れだよ。ごめんなぁ
なつめ: ちぇっ!! んじゃ、カルミンでいいや
おばちゃん: あ、それなら、ほら
なつめ: わ〜〜い、カルミンだ〜〜〜!!
ひかり: えっと、おいちゃん、チーズケーキ5人分〜
なつめ: チロルチョコ1年分〜
おいちゃん: チロルチョコはもう生産中止だってよ。すまないねえ
なつめ: マジですかぁ!!!
ひかり: ああ、もう10メセタじゃ利益があがらないんだとさ
結局、たこ焼きとチーズケーキとカルミンを提げて帰り道を急ぎました。
ゼロ: さてさて、僕は少し寝ようっと
アスタシア: おや?食べないの?
ゼロは答えることなく、さっさと部屋の隅のソファに横になると、たちまち寝息を立てはじめました。
アスタシア: あらら、こんなとこで……心配しないで。お菓子はとっておいてあげるから
ゼロ: むにゃむにゃむにゃ、もうあるけないよう〜。う〜ん
ゼロは寝言を言う癖があるようです。
そこにひかり達が帰ってきました。
ひかり: たっだいまあ。一応ストさんのも買ってあるよぉ
アスタシア: わあ、こんなにたくさん。でも食べるかしら
ひかり: 一人で依頼をこなしてくれたお礼のつもりなんだけどなあ
なつめ: ストライクさんって生真面目なの?真面目が歩いたような感じ?
アスタシア: 今度会わせてあげるわ。真面目通り越してヘンよ、ヘン
ひかり: うんうん、すんごく強い人だから、惚れるなよ〜、なつめちゃん。あはは
ひとしきり笑った後で、ひかりは寝ているゼロに気づきました。
ひかり: ゼロさん寝てるよぉ
アスタシア: 寝かしておいてあげて
ひかり: あ、はあい
ひかりが席に戻るのと反対に、なつめはペンを持ってゼロの顔に近づきました。
なつめ: 髭書いちゃえ
アスタシア: あんまりいたずらするんじゃないの
ひかり: 元締め〜、青のり、歯につかないように食べないと〜
アスタシア: はいはい
ひかり: たこ焼き、おいしいなあ
なつめ: おいし〜〜
ひかり: あっ、それひかりの分なのに〜
アスタシア: まあまあ、こんなにあるんだから喧嘩しないで
ひかりはたこ焼きをはふはふと食べながら、横目でゼロを見ました。
ひかり: ちぇ、ひかりとなつめちゃん、どっちがかわいいか聞きたかったのになあ
ゼロ: ひかりちゃんかわいい〜 むにゃむにゃ
ひかり: 寝言言ってるよぉ
アスタシア: ほっときなさいよ
ゼロ: なつめちゃんかわいい〜 むにゃむにゃ
皆は一見お菓子の方を向きながら、耳だけはゼロの方を向いています。
ゼロ: アスタシアさん……むにゃむにゃ
ひかり: ひかりとなつめちゃん、どっちがかわいいかは次回に持ち越しそうだね。まけないぞぉ
なつめ: 勝つつもりはないぞー
アスタシア: ふふ、それじゃ勝負は始めからついたも同然ね
たこ焼きを食べ終えると、ひかりはさっさと立ち上がりました。
ひかり: さて、元締め〜、ストライクさんにこれ食べてもらってね。
アスタシア: うーん、一応努力はするわね
ひかり: ひかりは適正試験の勉強するから帰るね
アスタシア: はい、がんばってね
ひかり: じゃね〜
ひかりは手を振って元気よく駆け出していきました。
(おしまい)