ゼロのたくらみ
ひかりは、アスタシアの持っているマジカルピースに目をつけました。彼女、いつもは長杖なのに。
ひかり: 元締め〜、ひかりたちに対抗してえ、かわいい武器持ってるねえ
アスタシア: いーでしょー
ひかり: あんまり似合わないなぁ……
ひかりは聞こえないようにぼそっと言いました。
なつめ: 元締めには似合わなーい、ってツンツンが言ってたよ。さっき
アスタシア: なんですって!
ゼロ: えええ〜〜〜!!!
ゼロはアスタシアにキッとにらまれました。ゼロはぶんぶんと首を振っています。
ゼロ: 言ってない、言ってないです
アスタシア: ほんとに?
ゼロは今度は思い切り首を縦に振っています。
アスタシア: ほんとにほんと?
ゼロ: すっご〜〜く似合ってますよ
それでも彼の顔はひきつっています。
アスタシア: よーし、それでよろしい。ふふふ。みんな似合ってるって♪
ゼロ: ストライクさーん、助けてぇぇ……なぜいないの〜。うう
ゼロは天に向かってつぶやきました。
なつめ: まあ、本人が似合ってるんだし、それが真実としましょう
ひかり: そっかなぁ……ま、いっかあ
ゼロ: はぁ。やれやれ、この先どうなるんだろ
ゼロは大きなため息をつきました。
ひかり: 行こう元締め〜
アスタシア: ええ、洞窟の敵をハートで……いえいえ、なんでもないわ
アスタシアも洞窟の奥へとたったか駆けていきました。
細い通路の先は丸い部屋になっていました。しかし、真中に溶岩の川が流れています。部屋に入っただけで熱気が感じられます。
ひかり: いきどまりだ
アスタシア: これを渡っていくのは無理よね?
なつめ: ツンツン、空飛んでよ
ゼロ: ええ〜、むちゃ言わないでよ、1…じゃなかった、2号
なつめ: 1号違うよ
ひかり: 1号はこっち〜
ゼロ: うっ
ゼロとアスタシアはまたなつめとひかりを見比べました。
ゼロ: はぁ
アスタシア: うーん、やっぱわからない
なつめとひかりはあたりを自由にうろうろと歩き回っています。適当に位置が入れ換わったところで、ひかりがゼロに尋ねました。
ひかり: どっちどっちい?
ゼロ: えとえと……
なつめ: どっちよ!
ゼロ: こっち
とゼロが指したのはなつめでした。
ひかり: はずれ〜。あはは
なつめ: まぁ、そういうこっちゃ
なつめはゼロの肩をぽんと叩きました。
そして、ひかりとなつめがほぼ同時に口を開きました。
ひかり: ゼロさんはとべないんだ
なつめ: 性格軽そうだから空飛べると思ったんだけどなぁ
ゼロ: ひどい、ひかりさん
アスタシア: あはは
ひかり: ストライクさんはとべるんじゃないのかなあ? なんでもできそうだし
アスタシア: ストさんだったらできるかもね
なつめ: 今度ストライクさん見てみたいな。空飛べるかどうか
4人はしばらく溶岩の川とその向こう岸を呆然と見ていましたが、だれとはなしにそこを離れ始めました。
ひかり: 別の道を探さないとね
なつめ: 別の道行こうよ
アスタシア: ここは無理よ、やっぱり
ゼロが先頭に立って、さっきの部屋に戻りました。
なつめ: そういえば、つんつんのせいで道間違えたんだよね
アスタシア: そうだったわね
ひかり: ゼロさんのどじ〜
ゼロ: あぅ、僕のせい?
なつめ: うん
なつめは即座にきっぱり返事をしました。
ゼロ: それに、つんつんじゃないよ、ゼロだよ〜
なつめ: だって頭ツンツンだし。つんつん、行くよー。元締めも行くよー。
なつめはそう言って、先頭を切って歩き始めました。
ひかり: ツンツンってなんかかっこいい〜
アスタシア: ツンツンか〜。わたしもそう呼ぼうかな〜。
ゼロ: ええ〜〜、そんなぁ、アスタシアさんまでぇ
ひかり: じゃあ、ひかりもお
ゼロ: ひかりちゃんまでぇ
アスタシア: ほら、ツンツンさん、行くわよ
なつめ: アスタシアっていうんだ、元締めって。
もちろんなつめは知りません。初めて会う相手なのですから。
アスタシア: ええ?今さらなにを?
なつめ: てっきり元締めが本名かと……
アスタシア: そんなわけないでしょ。元締めは…あだ名みたいなものかなあ。ツンツンさんみたいにね。
なつめ: なるほどー
アスタシア: そうか、あだ名にさんをつけるのも変かな?
なつめ: ううん、まかせるよ
アスタシア: ほら、ツンツン、行くわよ!
言ってみてからアスタシアは少し後悔したようです。
アスタシア: うーん、さすがにちょっとかわいそうかな
長い通路を抜けると、そこはいつものように大きな部屋のようになっていました。そして、そこには白い花が可憐に咲き誇っていました。可憐というには少し大きすぎるのと、毒攻撃をしかけてくるのが難点ではありますが。
ゼロ: しっしびれたぁ。動けないや。
なつめ: ほらっ!!
なつめがすかさずアンティをかけて毒を中和しました。それでもゼロは続けます。
ゼロ: 僕のことはいいから先に行ってください
アスタシア: もう治ったでしょ?
なつめ: そのはずだよ。まぁ、あとはツンツンの気力にまかせるけどね
ゼロ: あぅ、ばれてたんですかぁぁ……あっ
ゼロはあっと言って口をふさぎましたが、時すでに遅し。アスタシアもじろっとゼロを睨みます。
ひかり: あ〜〜〜、さぼる気だったんだぁ
ゼロ: そっそそっそんなことないですよ
なつめ: 次にホントにしびれても治してあげないんだから
ひかり: 元締め〜、ツンツンさんの給料カット分はひかりたちに頂戴ね
ゼロ: ひかりさん、それはないですよ〜
なつめ: 当然じゃん
しかし、アスタシアはひかりの提案に対してしぶい顔をしました。
アスタシア: え〜、ただでさえ人件費が苦しいんだから…それにゼロさん、これ以上給料下げたらなくなっちゃうし…
なつめ: そんなに少ないの〜!?
ひかり: そんなに少ないの?
ひかりとなつめは揃って言いました。
ゼロ: そうですよ
ひかり: じゃあ、ひかりって意外ともらってるのかなあ
ゼロ: ひかりちゃん、いくらもらってるの〜〜
アスタシア: あ、ひかりちゃん、自分の給料は言っちゃだめよ
ひかり: じゃ秘密〜。えへへ
なつめ: ツンツン、今の額は?100メセタ?
ゼロ: えとえと、時給10メセタ〜
全員の視線が一気にアスタシアに集まりました。
アスタシア: まあ、いい額よねぇ
なつめ: 内職よりもひどいよ
ゼロ: えっえっえっ、これくらいが相場じゃないの?
アスタシア: そうそう!そのくらいが相場なのよ!!
なつめ: まぁ、ツンツンにとっては相場みたいだから改善の必要はないね、元締め
ひかり: そういうことにしておこう
ゼロ: あっ、わかった、ひかりちゃん、時給15メセタだ
ゼロは一人でなにか納得していますが、なつめはずっこけます。
ひかり: せめてえ、15メセタにしてあげて…ね
アスタシア: 店が軌道にのってからね
ひかりとアスタシアは二人だけでひそひそ話をしていました。
4人は、洞窟の敵をばしばし倒して進んで行きました。
ひかり: なんとかなるもんだね
アスタシア: そうそう、大丈夫でしょう?
ひかり: Wひかり強〜い
そう言って油断しながら進んでいくと、突然、爆発に巻き込まれました。トラップです。一同は慌てます。
ゼロ: トラップだ びっくりしたぁ
なつめ: いたいよぉ
ひかり: とりあえず、こっちに〜
アスタシア: ストライクさん! あ、いないんだっけ……
アスタシアはとっさに振り向きましたが、もちろんストライクはいません。彼女はため息をつきました。
ひかり: うん、機械があったらどうしようかなあ
ゼロ: 僕がやるよ、機械。
アスタシア: 大丈夫? できる?
なつめ: ツンツン、機械マニアなんだ
一足先に奥の部屋に入っていたなつめが戻りながら言いました。他のメンバーもその部屋に入ってみると……そこには、フェンスの起動装置が置いてありました。ゼロが胸を張って近寄ってみると、既に破壊されていてスイッチは切れていました。
ひかり: あ、2号がもう開けちゃった
ゼロ: 僕の仕事……
なつめ: ごめんね、お先にこじあけちゃった
ひかり: さすが力の2号。力づくで開けてるよ
なつめ: 「押して駄目なら押し倒せ」てことわざもあるし
アスタシア: そうか、力でなんとかなるのか……えらい! ひかりちゃん!
ひかり: すごいなあ
なつめは照れ笑いをしました。
ゼロ: 女3人いると……こわいなぁ
ひかり: そのマグのお陰なのかな
なつめ: うん。あたしのかわいいペット
なつめはマグに餌をあげて、なでてやりました。
ひかり: じゃ行くよ〜
アスタシア: 今日中に仕事すませないといけませんからね。早く行くわよ
ひかり: がんばっていこー
4人は元気よく洞窟を進んでいきました。