二人のひかり
戦闘が終わって一息ついていた3人の元に、本物のひかりが追い付きました。
ひかり: いたああ
アスタシア: ひかりちゃん、どこへ行ってたの?
アスタシアは向こう側の通路から入ってきたひかりに声をかけました。そして、ひかりが自分のすぐそばにいるのを思い出しました。
アスタシア: ???
ゼロ: あっ、あれ〜〜?ひかりちゃんが二人
アスタシア: なんでひかりちゃんが二人いるの?
ゼロ: アスタシアさん、ひかりちゃんが二人に見えるんですけど
アスタシア: ええ、わたしも
ゼロ: アスタシアさんもですかぁ!
アスタシア: 不思議ねぇ
一番驚いたのはひかり本人です。
ひかり: なんで鏡がここにあるんだろう
なつめ: それにしては背が高く見える鏡だ
ひかりが手を挙げると、なつめも手を挙げました。しかし、もちろんタイミングが少しずれています。
ひかり: あれれ?おかしいなあ。動きがなんか違う
なつめ: 鏡なら…
なつめはこう言うと、ゼロに殴りかかりました。
アスタシア: ちょ、ちょっと、いきなり暴力は……
大混乱の中、ひかりはなつめを指差して叫びました。
ひかり: ひかりの偽物だあ! 鏡じゃないよ! うわぁ〜〜ん、ついにBPもひかりの偽物をつくるなんてえ
なつめ: むぅ、偽物って……ひどい、ひどい! うわ〜〜〜〜〜〜〜〜ん
ひかり: ブラックペーパーの罠なんだぁ
ゼロ: そんなことしてないぞ僕は
ゼロは誰にも聞こえないようにぼそりと言いました。
なつめ: だから、わたしは……
ひかり: 元締め〜、お店はブラックペーパーに恨みでもかってるんですかああ?ひかりを量産するなんてひど〜い
アスタシア: ええと……あるかなあ?ないかなあ?ヤバい品物も心当たりがないわけじゃ……
ゼロ: 給料が安いってヤツがあるかも
ゼロはまたぼそりと言いました。
ひかりは騒ぐのをやめてなつめをじっと見つめました。
ひかり: ん〜、でもこうして見ると結構かわいいなあ
なつめ: それはあたしがかわいいからであって、あなたがかわいいとは言ってないでしょ
ひかり: え〜〜〜〜〜〜〜〜くすん
なつめ: 鏡じゃないもん
アスタシア: ま、いいわ。ひかりちゃんが2人になったのなら好都合だって
アスタシアはにこにこ顔で言いました。
アスタシア: 給料は一人分でいいかな?ひかりちゃん?
ひかり: まあいいよ、ひかりの方が本物だってこと、これから証明してやるんだからあ
ゼロ: えと、えとえと、どっちがひかりちゃん?
すると、アスタシアが何かを言いかけました。全員の注目が集まりました。
アスタシア: ええと、名前を呼びにくいから……
なつめ: 呼びにくいから?
アスタシア: どっちかを「ひかり1」、どっちかを「ひかり2」と呼ぶことにします
なつめ: だから、ひかりじゃ……
ひかり: じゃあ、こっちが1号であっちが2号。1号が技のひかりで……
なつめ: まさか…あたし、力のひかり?両方受けついでいるんじゃない?技も力も
ひかり: 3号もいるのかなあ? まあ、いいやあ
ゼロ: じゃ、僕3号!
ひかり: え〜〜ま、いっかあ
アスタシア: ちょっと、ゼロさんはゼロさんでしょ
なつめ: ツンツン、ボケかまさないのっ!!
なつめに強い口調で言われてしまいました。
ゼロ: うっ、2号がつめたいよ〜
なつめ: つめたくなんかないもん!!
ゼロ: ああ〜〜おこったぁ。おこるとね、シワが増えるんだよ
なつめ: それいうなあ!!
なつめはゼロめがけて長槍を振り回し始めました。ゼロは必死で逃げます。
ゼロ: わぁぁ
なつめ: ふりーずっ!
ゼロはなつめの振り回す槍をなんとかかわしました。
ゼロ: ほっ本気で打ちましたね
ひかり: 2号は過激だね〜
アスタシア: 暴力はやめなさい! 仲間割れはみっともないわ
アスタシアが一喝すると、なつめは武器を振り回すのはやめました。
なつめ: 仲間ってあたしは……
アスタシア: え?もしかして仲間じゃないって言うの?そんなぁ……ひかりちゃん、そんな冷たいこと…
ひかり: え〜
なつめ: もういいよ……とっととデ=ロル=レとっちめよう
アスタシア: うんうん、その意気!
ひかり: 例えBPの戦略兵器だとしても、今は大事な仲間じゃない
なつめは、今何を言っても無駄だということを悟りました。
なつめ: まぁ、そういうことで
ひかり: がんばろ〜、2号
なつめ: 2号って……
少し間を置いてから、なつめとひかりに向かってアスタシアが言いました。
アスタシア: あ、そうそう、一つお願いがあるんだけど……
なつめ: ん?
アスタシア: ひかり2ちゃん、武器かえてくれない?見分けがつかなくて……
なつめ: これ?どうせ一緒の扱いなんだから、見分けつかなくていいでしょ!!
アスタシア: ええ〜、混乱する〜
ゼロ: こっちか、1号は
ゼロはなつめの方に近寄って言いました。
なつめ: 1号ちがうっ!!
ゼロ: うわぁぁ
この混乱の中、ひかりの発言で一つの光明が見えてきました。
ひかり: マグ忘れちゃったからなあ
アスタシア: あ、マグのない方が2号ね。わかったわ
なつめ: しくしく
なつめは自分のマグを大事に抱きかかえました。
ひかりはにっこり笑って、部屋の出口に歩き出しました。
ひかり: まあ、いいんじゃない。どちらも美少女なんだから
なつめ: 自分でいったらせわないよ
ひかり: って、1号はかわいくないのかなあ。くすん
なつめ: そんなこと言ってないよぉ
ゼロ: かわいいですよ〜
ひかり: ゼロさんはぁ、どっちがかわいいと思うかなあ
ひかりはゼロを期待のまなざしで見つめました。
ゼロ: えとえとえと……どっ、どっちも〜〜!!
ひかり: ふふ〜ん。最後にどちらか決めてね。ゼロさん
なつめ: すべての女性に対してやさしいんじゃないの?
ゼロ: そんなことないよ
アスタシア: わたし以外、かな?
なつめ: 元締めにはやさしくないのね
ゼロは視線を下にそらして小声で言いました。
ゼロ: だって、こわいもん
アスタシア: 恐い!?こらあ! 恐いってなによ!
ゼロ: うわぁぁ
ゼロは頭をかかえました。
ゼロ: こわくないです。うう。やさしくていいかたです
アスタシア: よーし、それでよろしい
アスタシアはうなずいています。
なつめ: 心こもってなーい。洗脳された言い方だよ
アスタシア: いいのよ
ひかりとなつめは先頭を切って歩いていきました。
ひかり: デ=ロル=レって恐いかなぁ
なつめ: つんつんいわく、元締めよりは恐くないって
ひかり: あはは。なら大丈夫か
先行していたひかりが、戸口から声をかけました。
ひかり: 元締め〜、今回の依頼って結構大変じゃないの?
アスタシア: あれ?言わなかったっけ?
ひかり: ストライクさんがいなくて
アスタシア: 大丈夫。ひかりさんが2倍働いてくれるから
ひかり: お給料も2倍〜、ってだめえ?
アスタシア: うーん、考えとくわ
ひかり: はあい、倍だから、2×2だね