何でも屋3: 二人のひかり

なつめはひかりと格好がそっくり。そんなこととはつゆ知らず、いつもののんきな店長とそのバイト君はなつめをひかりと勘違いしていつものように仕事にひきずり込んでしまいます。偶然が引き起こした珍騒動です。

変なひかり

ここはいつものごとく何でも屋です。今日は店長は店の前でヒューキャストの客と応待中です。
アスタシア: はあ、デ=ロル=レの外骨格ですか…まあ、仕入れてこられないこともないですけど…
そこにいつもの元気な声が入ってきました。
なつめ: こんばんわー。ここって何でも屋ですか?
アスタシア: あ、ゼロさん、対応お願い。こっちは商談で手が……
アスタシアは入ってきた人の顔も見ずに、店の奥に声をかけました。
ゼロ: こんばん……ってひかりちゃん! また遅刻ですかぁぁ
店の奥から出てきたゼロは、客の顔を見るなり、にやにやして大きな声で言いました。
なつめ: ち、遅刻ぅ?
なつめはまだ事態がよく分かっていません。
アスタシア: ひかりちゃん、来たの!?
ゼロ: 来たよ〜はやくはやく〜
なつめ: 誘拐だぁ〜〜
ゼロはなつめの手を引っ張って店の奥まで連れ込んでしまいました。なつめの声は届かなかったようです。


アスタシア: あ、はい、わかりました。すぐ仕入れに行ってきますので…
客のヒューキャストを見送ってから、アスタシアも店の奥のミーティングルームに入っていきました。
アスタシア: ひかりちゃん、今度遅刻したら給料減らすわよ。もう、まったく……
なつめ: き、給料って、そんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アスタシア: ひかりちゃん、叫びが長すぎ
ゼロ: くすくすくす、気をつけないとね

一呼吸置いてから、アスタシアが話し始めました。
アスタシア: ええとね、よく聞いてね
とほとんど同時に、なつめも質問しました。
なつめ: ここは何でも屋ですよねぇ?
アスタシア: そうよ、今さら何言ってんのよ
ゼロ: だいじょうぶですか?
なつめ: ホント、なんでもしますよねぇ
アスタシアはなつめの話が終わらないうちにさえぎりました。なつめはきょとんとしています。
アスタシア: ちょっとちょっと、それより急ぎの仕事が……
なつめ: 急ぎ? あたしは……
アスタシア: 早く準備して、すぐ行くわよ!
ゼロ: あーい
アスタシアとゼロは、置いてあった杖とかばんを取って、さっさと戸口へ出て行きました。
なつめ: どうなってんの〜〜〜〜
なつめは小声でつぶやきましたが、それも戸口からの声でさえぎられました。
アスタシア: ほら、ひかりちゃんもさっさと仕度する!
ゼロ: ほらほら、ひかりちゃん準備準備〜
なつめ: はぁい……
なつめはとうとうあきらめて気のない返事をすると、一緒に店の外へ出て行きました。

ゼロ: えと、たしかここにあのアイテムが……どこいったのかなぁ
ゼロは自分のかばんをごそごそ漁っていましたが、何やら見つけたようです。満足そうにうなずくと急いで戸口へ向かいました。


アスタシアはいつものように店の前で待っていました。
アスタシア: 今日は行き先は洞窟! いいわね?
なつめ: ど、洞窟〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゼロ: あーい
アスタシア: ひかりちゃん、文句言ってないでさっさとやる!
なつめ: 今日は探検ですか?
アスタシア: 探検、かな?
なつめ: 洞窟の奥地に潜む原住民を見つけるとか
アスタシア: そう、そんなところね
なつめ: だから何でも屋なんだぁ
なつめは妙に感心した素振りで言いました。
アスタシア: うちは仕事を選んでられないの。わかってるでしょ?
なつめ: 納得

そこに、ゼロが勢いよく出てきました。
ゼロ: とう! 準備OK〜
アスタシア: さあさあ、行くわよ
なつめ: はぁい
なつめは自分が返事をした事に疑問を抱きながらも2人についていきました。


アスタシア: さて、では洞窟の入り口に行きましょう
3人はシティの外れの転送機の前まで来ました。

ゼロ: あれぇ、ひかりちゃん、背が低くなってる〜。まぁいいかぁ
なつめ: だから…
アスタシア: ん?気のせいでしょ
ゼロ: そうかな?
なつめが何か言う隙を見つける前にゼロが言いました。
ゼロ: あっ、わかったぁぁ。今まで、背が高くなる靴履いてたんだぁ!
なつめ: ロンドンブーツ?それは……
アスタシア: なるほどねぇ。実は背が低かったんだぁ
なつめ: だからぁ……
ゼロ: 背が低いのなんか気にしなくていいのに
アスタシアとゼロの2人はふふっと笑いました。
アスタシア: さあ、行くわよ
ゼロ: うん★
なつめ: はぁい
なつめだけは気のない返事をして、転送機に入りました。