何でも屋2: ボーナスをもらおう!

政府から突然、緊急の依頼が舞い込みました。アスタシアは慌てて全員を召集し、急いで現場に向かいます。なんと、ボーナスまで大盤振舞いしちゃうとか。

仕事の仕上げ

ひかりは転送機を隅から隅まで見渡した。
ひかり: あー、なんか大きな転送機だあ
ゼロ: これ大丈夫?
ストライクはしゃがみ込んで機器のパネルを開けた。
ゼロ: 安全だな……

アスタシアは満足そうにうなずいた。
アスタシア: そうそう、あそこが制御室に通じる転送機。制御室を制圧すれば仕事は終わりよ
ひかり: え?制圧って言わなかったかな?制圧っていうと……
アスタシア: あそこにもなんかいるんですって。残念なことに
ひかり: え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゼロ: どういうこと?
アスタシア: 知らないわよ。とにかく、制御室でも気を抜くな、ってそれだけしか聞いてないわ
ストライク: ふむ……何かあるわけだ……
ひかり: やっぱりボーナスなんて話がうますぎだと思ったよお
アスタシアはにっこり笑った。
アスタシア: 大丈夫よ、この調子なら楽勝でいけるって
ひかり: じゃストさんが好きそうなすんごい敵がきっといるんだあ。こわいよおお
ゼロ: いや〜
ひかり: でもでも仕事だし……ストさん頼りにしてるからね。頼んだよ
ストライク: ああ……
ひかりはそう言うと、ゼロを見つめた。
ひかり: 一緒にがんばろ
ゼロ: うっ
ゼロは目の前のゲートより、さっき来た通路の方を名残り惜しそうに見ていた。

アスタシアは全員の様子を見渡してから言った。
アスタシア: さあ、心の準備はいい?
ストライク: OKだ……
ひかり: さあてお仕事の仕上げだねえ
アスタシア: 気合い入れて行くわよ!
ひかり: はあい。がんばっていこー
ゼロ: いやぁぁ
全員が転送機に進み出る中で、ゼロだけが逆に一歩下がっていた。アスタシアはゼロの背後に回ると、背中を押した。
アスタシア: ほら、行く!
ゼロがずりずりと押されてゲートの中に押し込められると、転送機が作動した。


制御室は8角形で、壁面には画面とコンソールがびっしり並んでいた。
アスタシア: なんかしらないけど壊しちゃいなさい
ひかり: はあい。ラグオルのやまとなでしこをなめるなよー
ひかりはそう言ってコンソールを叩き壊していった。
アスタシア: そうそう、その調子よ、ひかりちゃん
一方、ゼロは部屋をぐるぐる回るだけだった。
ゼロ: アスタシアさんひどい。まだ、心の準備がぁぁ

制御室には四人の他にほとんど動くものは見当たらなった。時折床から棒状の電極が出てきて四人に雷を落としたが、それ以外には妨害するものはほとんどなかった。順調にすべての表示パネルを叩き割った時、爆発音がして上から何かが現われた。

それは、天井から現われた。何本もの太いケーブルによって吊り下げられたそれは巨大なロボットだった。手足はないが顔のようなものを持ち、ミサイルを始め様々な攻撃をしかけてきた。が、ストライクのフォトンブラストの発動もあり、無事倒すことができた。

アスタシア: よし、お仕事終了! みんな無事ね?
ゼロ: はふぅ、たっ、助かったあ
ゼロはへなへなとその場に座り込んだ。
ストライク: やれやれだ……
ひかり: 元締め、なんかまた精神力上がってるね
アスタシア: わたしもやる時にはやるのよ
そう言いながら、アスタシアは座っているゼロに近寄った。ゼロは少し涙目になっていた。
アスタシア: ゼロさん、がんばったわね
ゼロ: 腰、抜けちゃいました
ひかり: しっかりしないとお
アスタシア: よし、この前の宝石はゼロさんにあげる。がんばったご褒美よ
ゼロ: ええ〜〜いいんですかぁぁ。やったあ。なんか、元気出てきたぁ
ゼロはすぐさま立ち上がった。
ひかり: よかったねぇ

アスタシア: あ、いっけない、時間があまりないわ。さあ、戻りましょ
アスタシアがそう言うと、四人は街への転送ゲートに乗った。


四人は街へ戻ってきた。
ひかり: ふう、お掃除しゅうりょ〜。ひかりは苺のタルト買ってこよ〜
ひかりはそう言うと、いつもの洋菓子屋に向かった。そして、ストライクも立ち止まると、店とは違う方向に向き直った。
ストライク: 悪いが、俺は他の仕事があるんでな…失礼する…
アスタシア: あ、そうなの?残念…とても残念だわ。でもお仕事じゃ仕方ないわね
ストライク: また呼んでくれ。じゃあな
ストライクはそう言うと、街の雑踏の中に消えていった。
アスタシア: ええ、また何かあったらお願いね
ゼロ: ストさんかっこいいなぁ。あ、いっちゃった…

アスタシアとゼロは店に向かって歩き出した。
ゼロ: さみしそうだね


ひかり: あれれ?ストさん帰ったのかあ。折角お菓子買ってきたのになあ
ひかりがお菓子の袋を提げてお店に戻ってくると、アスタシアとゼロがいつものテーブルについていた。ひかりはテーブルの上に買ってきたタルトを並べた。
ひかり: じゃ、元締めとゼロさん食べてよ
すると、アスタシアもあわてて席を立った。
アスタシア: でね、わたしも用事なのよ
ひかり: そうなんだあ。ひかりも適正試験に向けて頑張らないと
彼女は戸口の前に立って二人を見た。
アスタシア: ああ、今日は間に合わないかと思ったわ。みなさんの頑張りで間に合ったの
ゼロ: まさか、急いでたのって
アスタシアはふふっと笑った。
アスタシア: 映画の試写会! ずーっと楽しみにしてたから……
ゼロ: え〜〜
ひかり: え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゼロとひかりはものすごい声をあげた。
ひかり: そうなのお?
アスタシア: ごめんなさいね。タルト、わたしの分も食べていいわよ
そしてアスタシアは腕時計をちらりと見た。
アスタシア: あ、そろそろ時間だ、じゃあね!
そう言うと急いで店を出ていった。
ゼロ: いってらっしゃい、お気をつけて〜

部屋にはゼロとひかりの二人が残された。
ひかり: も〜、元締めもミーハーなんだからあ
ゼロ: あはは
そして、二人はタルトをつまみ始めた。
ひかり: いいなあ、実はあの映画、ひかりも見たかったんだよお
ゼロ: ひかりさんは行かないの?見たかったんでしょ
ひかり: だってえ、お小遣いおじいちゃんに前借りしたから、今日のギャラで返さないと
ゼロ: あら
ひかり: じゃあ、ゼロさんがおごってくれるの?だったら行くよ〜
ひかりはえへへと笑った。ゼロはびっくりしてタルトをつまむ手が止まった。
ゼロ: えっ、えとえと……まぁ、いいか。ボーナス入ったし。いこいこ〜
ひかり: じゃさっそく行こ〜

二人は腕を組んで仲良く店を出ていった。

(おしまい)