約束
わたしはストライクさんの枕元にある椅子に座り直しました。今度はストライクさんはこっちを向いてくれました。
アスタシア: やっと目が覚めたのね。よかった
ストライク: 心配……かけたな
アスタシア: ほんとほんと、すっごく心配したわよ。後でじっくりお返ししてもらいますからね
ひかり: ストライクさん、ねえ、ひかりと約束してくれないかな。「もう悲しい戦いはしない」って。「だれも悲しませない」って
ストライク: ああ
なつめ: 二度と元締め悲しませるんじゃないよ
ストライクさんはわたしを右腕だけで抱き返してくれました。
ストライク: 俺は戦う事しかできない……ただ……それは……自分の為ではなく……人の為の戦いにする……それでいいな?ひかり
ひかり: うん、約束だよ
ひかりさんは半ば強引に指きりをしましたが、ストライクさんも嫌がってはいないようでした。
ストライク: やれやれ
なつめ: ストライクさん、迷惑かけたんだからさ、あたしにも約束してよ
ストライク: 何をだ……?
なつめ: つんつんをむやみにいじめないってさ
ストライク: ああ、約束しよう……
ストライクさんは自分の左腕をベッドから出して眺めていました。
ストライク: よく……これだけですんだ
アスタシア: その腕、いったいどうしたっていうの?
ストライク: 三年前に斬り落とされた
なつめ: へぇ……ってうわっ!!
アスタシア: あー、ごめんなさい。つらい過去の話はいいわ。今はゆっくり休んでちょうだい
ストライク: ああ……
なつめ: あたしの友達で義手の手配してくれる奴いるから、仲介しよっか?もっとも、左手はトイハンマーかマラカスになるかもしんないけど
わたしはストライクさんの左手がそんな風になってしまった所を想像してしまいました。似合わない……いえ、だれがやっても似合わないと思うんですけどね。
アスタシア: あははは
ストライク: いや……知り合いにその手に詳しい奴がいる……
ひかり: あー、お友達ってたしかウェポンズのスポンサーっていってたあの子?
なつめ: そうそう、前に何でも屋に来た……
ひかり: えっと、冴ちゃんだったかな?
なつめ: そうそう、あいつならやりかねん(苦笑
アスタシア: へー、あの人、そんなこともできるんだ
ゼロ: いい人だったね
なつめ: ウェポンズを裏で操ってるから。その気になればストライクさんの左腕を中華鍋にすることも即座に可能。これでいつでも料理できるしね。しかも武器になるから一石二鳥
ストライク: ……
ゼロ: それはいやだ
アスタシア: その気にならなくてよろしい
ひかり: いくら料理が得意だからって、ずっと中華鍋とかフライパンが腕についてたらたいへんだよぉ
ゼロ: 武器にした中華鍋で料理するんですかぁぁ
なつめ: かっこいいじゃん、ロボットみたいで
ストライク: どちらにしろ……左腕には武器を仕込むが……中華鍋は俺はつけんぞ
ひかり: 中華鍋、きっと持ってるんだろうけどね、ストライクさん
なつめ: なら……カメレオンサイズが似合うかも。ソウルイーターならお安くしとくよ
ストライク: いらん
なつめ: やはりいらんか。クレイジーチューンでもイケるのに
二人とも目を覚ましたおかげで雰囲気も柔らいで、いつもの何でも屋の雰囲気が戻ってきたようです。
ストライクさんの左手の話でひとしきり談笑した後、わたしは立ち上がって大きく伸びをしました。
アスタシア: まあとにかく、二人とも元気になってよかった
なつめ: そ、そうだね
アスタシア: ふう。何もしてないけど疲れた〜
ゼロ: ふふ
なつめ: ホント、みんな何もしてないけどね
ゼロ: ぼく……寝てただけだね
なつめ: そうそう。早く休んで元気になってね。新しい技編み出したから、是非とも実験台に
わたしは安心したら急に疲れが出てきました。そういえば、二人を森から担いできてからずっと一睡もしていなかったのです。
アスタシア: いったんお店に帰ろうか。なつめちゃん
ひかり: ゼロさん、ひかりはもうお店では仕事しないけど、ゼロさんが治るまでは見にくるからね
ゼロ: うん。ありがと☆
なつめ: よかったじゃんよ
ゼロ: えへへ
ひかり: これから、ゼロさんの自分の「本当の人生」が始まるんだから
なつめ: そうだよね
ゼロ: そうだね
なつめ: 二人の人生に幸あれ!!って感じだね
ゼロ: 二人ってだれですかぁ
なつめ: 言わないでおこう
ゼロ: あはは
なつめ: じゃ、今日はどうしよっか?
アスタシア: とりあえず帰りましょう
なつめ: うん
わたし達は身仕度を済ませ、病室の扉の前に立ちました。
ゼロ: ぼくも疲れたから少し寝るよ
なつめ: お大事に〜
ひかり: じゃあね、ゼロさん、ストライクさん
なつめ: 喧嘩するんじゃねーぞ
わたし達が部屋を出る前に、もはやゼロさんは寝息をたてていました。