Sの起床
ゼロさんの心配がなくなってから、わたしはずっとストライクの顔をさんがうわ言を唸るように言ったのを聞くことができました。
ストライク: ……な……止め……ね……ん
なつめ: なんか言ったよ
アスタシア: なんかしゃべった。二人とも危機は脱したようね
ストライク: あ……俺……死ねば……よ……た
アスタシア: ストライクさん、早く起きて……
わたしはストライクさんの機械がむき出しになった左手を抱えました。暖かい、というより熱い腕でした。ストライクさんは何も反応しませんでした。
ゼロ: そうだ!!ストライクさんは?たしか……僕と一緒に……爆発に巻き込まれたはず……
なつめ: 大丈夫。死んではいないけどさ……
アスタシア: ここで寝てます
ゼロ: え? ストライクさん
ゼロさんは隣のベッドにだれが寝ているのか、はじめて気がついたようでした。
なつめ: 起きてっ!!
アスタシア: 起きてください
なつめ: 起きろ〜〜!!
二人で呼びかけましたが、何の反応もありませんでした。
アスタシア: ゼロさんももう起きてるのにストさんが起きないのは何でよ!?
ひかり: ねぇ、自分の為だけに生きてもいいんだよ。ストライクさん
ストライク: な……死なせ……楽……な……たい
アスタシア: あっ、何か言った!
なつめ: なにが死なせてくれだっ!!そりゃ死んだらあんたは楽かもしれない、元締めの事も考えんかいっ!!
ひかり: 復讐がなくなったって、生きる意味はあるんだから
ゼロ: そうだよ……戻ってきてよ
わたしはストライクさんが何か言ったことだけでうれしくて、かすれた声の内容までは聞き取っていませんでした。皆は死ぬとか生きるとか不吉なことを言っていますが。
アスタシア: 死なせてくれ、なんて誰が言ったの?
なつめ: そう聞こえたんだよ、あたしの耳には
アスタシア: まさか
ゼロ: つか……た……死な……て……れ
アスタシア: そうなの?わたしを置いて?
今度はわたしにも聞こえました。ストライクさんの口から直にそんな言葉を聞くとは思いもよりませんでした。わたしの声は自然と泣き声になってしまいました。
アスタシア: おいてかないで!
なつめ: 死なせるもんかっ!! 愛する人をほっておくなんて……
ストライク: ア……ス……
アスタシア: 今わたしの名前を?ストライクさん!!
ストライクさんがゆっくりと目を開けました。私はうれしくなって、さっきなつめさんに注意したのも忘れて飛びつきました。
アスタシア: 起きた!!
ストライク: どうした……いきなり
心底からほっとした瞬間でした。
わたしがそのままストライクさんにしがみついていると、なつめさんがゼロさんの手を引っ張って戻ろうとしました。
なつめ: ひかりちゃん、つんつん、しばらく二人だけにしよ
ゼロ: そっそうだね
アスタシア: いいの、変に気を回さないで
ゼロ: いいからいいから
なつめ: 気使ってないよ
ゼロ: 僕はベッドに戻ってるよ
ゼロさんは部屋の反対側にある自分のベッドに戻っていきました。そこにまた横になると、枕元にはなつめさんが座りました。
なつめ: じゃ、あたし看病するね
ゼロ: なつめちゃんが看病ですか