Zの起床
ひかりさんはずっとゼロさんの手を握っていました。ふと、ゼロさんの苦しそうな顔が緩みました。
ゼロ: あっ、なんだろ。暖かい。ぼくは……この暖かな手を知っている
ひかり: ねえ……ゼロさん……ゼロさんは本当に自分がやりたい事生きたい事なんなのかな?2つの心があったって聞いたけど
ゼロ: 僕は、もっと……みんなと一緒にいたい。一緒にいたいだけなのに……
ひかり: ゼロさんが一番したい事を強く願えば、きっと、本当に生きたい人生を生きることができるとひかりは思うよ
ゼロ: 声が聞こえる……だれだろ?この声。この声も……このぬくもりも僕は知っている
そして、ゼロさんはゆっくりと目を開けました。
ひかり: おはよう
アスタシア: ゼロさん、おはよう。
ゼロ: おはよう……
アスタシア: やっと、やっと……
なつめさんは大喜びで、寝ているゼロさんに飛びついて技をかけようとしました。
なつめ: この〜〜〜〜遅いっ!!本当に、本当に……
アスタシア: これ! 急に無理なことしないの!
ゼロ: くっ苦しいですよぉ、なつめちゃん
ひかり: BPの怖い人はもうゼロさんの所にはこないと思うよ。ありがとね、ゼロさん。あのBPの幹部からゼロさんがかばってくれたから、ひかりはこうしてここにいるんだよ
ゼロ: でも、あれは僕です
ひかり: ううん、違うよ。ひかりはちゃんと覚えてるから
ひかりさんが何を覚えているのか、あるいは何を覚えていると思っているのか、わたしにはよくわかりませんでした。そして、その理由も。しかしひかりはゼロが目覚めた事をうれしく思っているのは確かなようでした。
ゼロ: うっうん、ぼく……もう負けない
アスタシア: 今はとにかく回復に専念なさい
ゼロ: アスタシアさんにも迷惑かけちゃったね。てへ
なつめさんはゼロさんの枕元で何か耳打ちをしていました。
なつめ: 回復したらひかりちゃんにアタックだ
ゼロ: ええ〜、そんなぁ。それはなしですよ〜
なつめ: だって……
なつめさんは少し寂しそうな顔をしながら言いました。
なつめ: アタックしなさいよ、応援するから
ゼロさんが目覚めて、皆ほっと一息つきました。今までの張りつめた雰囲気ではなく、空気が少し柔らぎました。その時、突然、ひかりさんが思い出したように話を始めました。
ひかり: あ、そうだ。元締め、大事なお話があったんだよ
アスタシア: なになに?こんな時に?
ひかり: ひかりの上司の司令さんとおじいちゃんから、これからはハンターズの仕事に専念しろって言われたから、もう何でも屋の仕事できないかもしれないんだ
なつめ: えーっ、ひかりちゃん、引退しちゃうの!?
ひかり: うん、ひかりを必要としている友達がいるんだ。みんなとお仕事できなくなるのはさびしいけど、その子を、ひかりが頑張って前向きに生きられるようにしてあげないといけないんだよ
ゼロ: そっそうなんだ……
なつめ: そんなぁー
なつめさんは残念そうな顔をして、ゼロさんに耳打ちしていました。
なつめ: 今しかチャンスはない
ゼロ: いっいいですよぉ
なつめ: ここで言わなきゃ男がすたる
しかし、ゼロさんが言ったのはごく普通の励ましの言葉でした。
ゼロ: がんばってね。ひかりちゃん
ひかり: おじいちゃんが連れてきたレイキャシールの女の子なんだけど、その子、心を閉ざしているから、ひかりが一緒にいてあげないと
なつめ: ひかりちゃんならやれるさ
ひかり: うん、その子が自分に自信を取り戻せたら、きっと一緒にみんなに会いにくるからね
ゼロ: うん、待ってるよ
なつめ: 絶対来てよね。命かけても
ひかり: その子の名前、リコリス2っていうんだ。きっと、みんなとも友達になれるとひかりは思うよ。今は心を閉ざしてるけど
アスタシア: そうだといいわね
なつめ: あたしはなるよ
ひかり: 奇跡は起こるよね。ね、ゼロさん、ストライクさん
ゼロ: もちろんです
ひかり: じゃ、なつめちゃん、何でも屋の看板娘の座はなつめちゃんに譲るから
なつめ: もらわない! ずっととっておくんだ!! ひかりちゃんがいつか復帰するまで永久欠番だっ!! だから、いつかまた顔見せてね。さよならなんか絶対に言わないから
しかし、正直なところ、わたしはひかりさんの話を真剣に聞いてはいませんでした。
アスタシア: わかりました。けど詳しい話は後でしましょう。ごめんなさい。わたしストさんの事が気がかりで
ストライクさんは依然として目と堅く閉ざし、歯をくいしばったままでした。
アスタシア: ストライクさん……いったいいつになったら目を覚ますの?