何でも屋16: 後悔

あの出来事の後、ゼロを見た者は誰もいない。

発端

3人は店のいつものミーティングテーブルに集まっていた。そう、3人しかいなかったのだ。なつめは落ち着かない様子でテーブルの回りをぐるぐる回っていた。
なつめ: うーん、どこ行ったんだよ〜
アスタシア: ゼロさん、どうしちゃったのかしら
なつめ: ねぇ、元締め、最近おかしすぎるよ。なにかがおかしい。ブラックペーパーとかさ、柱とかさ。全然わけわかんないよ
アスタシア: ええ、それはわたしも思います。
そして、3人はまた黙り込んだ。次に口を開いたのはアスタシアだった。
アスタシア: うーん、それより何より、帰ってこないゼロさんが心配
なつめ: それが一番心配なの。つんつん……
なつめは心配そうな顔をしている。
アスタシア: 探しに行かなくちゃいけないかしら
なつめ: 当たり前だよっ!!探しに行かなくてそれが仲間だってんだ!!
アスタシア: ここで待ってるだけじゃだめだわ
なつめ: 行こう、とっとと行こう!!
アスタシア: ええ、もちろんです。さて、そうと決まったら早く!
なつめ: みんな行こうよ。本日は臨時休業だ!!
アスタシア: 最近は営業だなんだって言ってられません
アスタシアは立ち上がると、さっそく出かける準備をした。2人も後に続いた。


ゼロは森をとぼとぼと歩いていた。うなだれながら、ゆっくりと。
ゼロ: 僕が……僕がひかりちゃんを殺しちゃった……
彼はふと足を止め、周囲をきょろきょろ見回した。
ゼロ: そういえば、ここどこだろ?適当に歩いてきたから道わかんないや
ゼロは不安そうに空を見上げた。空は真っ黒だった。誰かさんの心の中のように。
ゼロ: あっ! 雨……冷たい……
しかし、彼はそう言うとまた下を向いて、とぼとぼと歩き始めた。
ゼロ: それに……僕、今までいろいろと悪いことしてきたんだ……

いきなり、彼の頭の中に幹部の記憶が流れ込んできた。彼は叫んだ。
ゼロ: うわぁぁぁ……いやだぁ、こんなの見たくない、見たくないよ
彼は濡れた地面に頭をかかえてうずくまった。頬を濡らすのは雨だけではなかった。
ゼロ: なぜ……僕なんだ。なぜ僕がこんな目に会わなきゃいけないんだよ


Captured Image
3人は森に到着すると、さっそく広がって探し始めた。
アスタシア: 手分けして……っていっても道は一つしかないわね
なつめ: お〜〜〜い!! いないんだったらいないって返事して〜〜
なつめは大きな声で呼びながら、森の奥へと走っていった。アスタシアも走った。ストライクはその後ろをゆっくりとついていった。
アスタシア: ストさん、どうしたの?今日はなんだか遅いじゃない
なつめ: 何か考え事?
ストライク: ……いや……なんでもない
アスタシア: ほんと?だいじょうぶ?何かあったら何でも行ってよ
なつめ: 具合悪いなら休んでいいからさ
ストライク: ああ……気にするな


なつめ: どこだよ〜
なつめの大声は森にこだました。そして、また静まり返った。
なつめ: 気味が悪いくらい静かだ。
アスタシア: だーれもいない

ストライクは後ろからゆっくりとついてきた。しかめっ面をし、歯を食いしばって右肩を押さえていた。
アスタシア: ストさん、ほんとにほんとに大丈夫?
ストライク: ああ……この前の疲れが……残っているだけだ……気にするな
アスタシア: 気にするなって言われても気になりますけどね。他の人ならともかく、ストさんだもの
なつめ: つらかったら言ってね
ストライク: ああ……
ストライクの不調に、アスタシアは心配の色を隠せなかった。
アスタシア: うーん、悪い事の前触れの予感が……
なつめ: うん


ほどなくして、3人は森の奥に進む転送ゲートを発見した。
なつめ: この先にいるのかなぁ?
アスタシア: よし、行ってみましょう
ストライク: ああ……
なつめとアスタシアがゲートを通った後、ストライクは転送機の前でしばらくうずくまっていた。が、やがて立ち上がって後に続いた。