何でも屋15: 決着

アスタシアがいつものように店に出てくると、ストライクさんが置き手紙を残してどこかへ消えてしまいました……

真相

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ひかり: ……う……うう……この感じ……とっても嫌な感じがする……
長い通路の先は大きな部屋になっていた。そして、その中央に巨大な機械とも生体ともつかない物体が鎮座していた。群れる敵は数が多かったが、なんとか撃退した。
アスタシア: なに?この巨大な……なにかよくわからない物は
ストライク: 我が力よ、我が身となれ……我は龍なり……魔を滅する龍なり……
ストライクはぼそりと独り言のようにつぶやいた。
アスタシア: さあ、ストさん、次はどうするの?
ストライク: こっちだ

ストライクが案内した先には、巨大な転送機が据え付けられていた。
ストライク: この奥だ
ひかり: ここが入り口……真中に転送装置があるよ。ここから行けるんだね
アスタシア: 行ってみましょう
ストライク: 覚悟はいいな……行くぞ


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転送された先は、四方を丘に囲まれた円形のくぼ地だった。青い空と白い雲、そして緑の野原。今までとはうって変わったのどかな光景だった。真ん中には高い塔がそびえ立っている。そして、その周りで子供たちが遊んでいた。
ひかり: ここは……幻?
アスタシア: きれいなところ
ゼロ: 子供がいっぱいいるよ?
ひかり: でも……みんな死んだ様な顔をしてる……どうして……?

子供の脇にいた男が、4人の方へつかつかと歩み寄ってきた。
男: ようこそ、楽園へ
アスタシア: あなたはだれ?
男: 私はここの管理人。この子達を管理している
ひかり: あなたも……取り込まれたんだね……ここは、ひとを狂わせる……
男: なんの事かね?
男は4人の中に知った顔を認めた。
男: おや?そこに居るのはストライク……久し振りだ
アスタシア: 知り合い?
ストライク: 親だ……
ゼロ: あっ……この人が。でも、なぜこんな所に?
男: ここは中心だからですよ
アスタシア: 何の?
ゼロ: 中心?まさか!!
男: 力の中心ですよ……
ゼロ: 柱の中心地なのですね……ここは
アスタシア: そういえばあれは柱……
アスタシアは広場の真ん中に立っている塔を眺めた。
ゼロ: どうやら、あれにすべてエネルギーが行く仕組みになってるようですね。今も集まっているようですよ
男: ふふふふふ……ここはとても心地良い
ひかり: かわいそう……貴方も取り込まれたんだね
男は4人を眺めながら、周りをぐるりと一周しようとした。そして、ゼロの前ではたと立ち止まった。
男: おや、あなたはゼロさま
ゼロ: えっ?なになに?
アスタシア: ゼロさんもお知り合い?
男: ブラックペーパー幹部がこんな所にまで。私もやっと認められましたか
不思議そうな顔で相手を見ていたゼロだったが、不意に頭をかかえてうずくまった。柱のエネルギーがゼロに集まった。そして、再び立ち上がったときのゼロの顔はまったく別人だった。
ゼロ: くくくっ、やっと出てこられましたよ。ふぅ。ここまで来るとはな
ストライク: やはりか。思った通りだったか
アスタシア: ど、どうしちゃったの?ゼロさんまで
ひかり: ゼロさんまで……取り込まれちゃったの……みんなおかしくなっちゃう……
ゼロ: 私の人格が、このゼロって男に封印されていてね
ひかりはまた頭痛がして、地べたにひざまづいた。
ひかり: ああ……

ゼロは男ににこりと微笑みながら話しかけた。
ゼロ: さて、レオンさん
男: はっ
ゼロ: よくここまでやってくれましたね。褒美をあげましょう
男: ありがたいですね
ゼロは銃の引き金を引いた。どん、と銃声が一発あたりにこだました。
男: ……え?な……なぜ……
ゼロ: もう君の役目は終わったのだよ。今までご苦労だったな。くくっくくく
男: あ……あ……嫌だ……死にたくない……死にたくないぃぃぃ〜
レオンと呼ばれた男はばったりと倒れた。彼は柱に吸い込まれた。
男: あぁぁぁぁぁぁぁ
ストライク: 哀れな男だ
ゼロ: ふふ。あなたたちにはこれからいいものを見せてあげるとしましょう
アスタシア: もう見てられない
ひかり: やめて……もう……やめて〜〜〜〜〜〜
ひかりはゼロに飛びかかった。
ゼロ: これはこれは、いつぞやのお嬢さん
ゼロは身動き一つせずさらりと言ってのけた。ひかりはうなだれる。
ひかり: みんな……狂ってしまったんだ……この地の闇の波動に……だから……うう……
ひかりはそう言っている間にもまた苦しみ出した。
アスタシア: もういい、早く終わって、神様……
ゼロ: ストライクさん、とどめを差してあげたらどうですかな?
ストライク: ふん……
ひかりは苦しそうにうずくまった。
ひかり: ぐ……ああ……
ストライク: ひかり、自分をしっかり持て!
ひかり: う……ああ……もう……やめて……これ以上……
ストライク: ひかり……目を覚ませ!
ゼロ: 生体兵器がもう一人出来てしまいましたね
ゼロはにやりと笑った。ひかりはゼロを羽交い絞めにした。
ひかり: もう……やめ……て……
ゼロ: 離していただけないかな?
ひかり: そうだ、ストライクさん……ひかりがここの柱を壊すよ……だからあとはまかせて……
ストライク: やめろ……やめろ……
ひかり: ゼロさんも……きっと戻してみせる……
ゼロ: それはさせない
ゼロの銃口がひかりに向いた。
ストライク: やめろぉぉぉ!!
アスタシア: やめてー

二人の叫び声の後、どんと大きな音がした。フォトンがひかりにめがけて飛んだ。ひかりは倒れた。
ストライク: く……
ゼロ: ふっ、私の邪魔をするからですよ
ひかり: うう……
ストライクはひかりを急いで抱き起こし、レスタをかけた。
ストライク: アス!お前も手伝え!
ひかり: ありがとう……でも、もう駄目みたい……闇の波動の力が強すぎて……
ストライク: く……未来は……わからん……
ひかり: うん……恨みの過去よりも……楽しい未来に生きて……ね……
ストライク: ゼロ……いい加減出てこい!その人格をさっさと消して出てこい!!
それに答えるかのように、ゼロは我に返った。目に涙が光った。
ゼロ: ひかりちゃん……ひかりちゃん……
ひかりは微笑んで、そのまま意識を失った。ストライクはひかりにリバーサーを何度もかけるが、何の効果もなかった。

ゼロ: くっ、邪魔をするなぁぁ!!最後の儀式を行わなければ
ゼロはよろよろと中央の塔に向かった。その歩みは次第に確かなものになっていった。
ゼロ: さぁ、集え、さまよえる魂どもよ
ストライクも、ひかりを横たえ、中央に向かう。
ストライク: アス、ひかりを頼む
塔は不気味に光り始めた。大地が揺れる。塔の周りの子供が苦しみ出した。
子供: お兄ちゃん助けてぇ……お姉ちゃん助けてぇ……
ゼロ: くく、生体兵器の完成だ。さぁ、すべてを破壊しろ!!破壊しつくせ!!


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子供の声が塔に吸い込まれ、地中から異形の怪物が姿を現わした。膨大なパワーを利用した高レベルテクニックが容赦なく2人に叩き込まれた。
アスタシア: ごめん。こうすることしかしてあげられない
ストライク: 俺は……お前達を……救えないのか……
声: 僕達を、私達を……殺して……もう終わらせて……おねが……い
ひかりは遠のく意識の中で、うわ言のようにつぶやいていた。
ひかり: 大丈夫……絶対大丈夫だよ……

死闘の末、2人はとうとう怪物を倒した。アスタシアはゆっくりと銃を降ろし、ストライクは刀を鞘に収める。
アスタシア: さよなら……
ストライク: ……すまなかった……姉さん、やったよ……
ゼロ: ばっ馬鹿な。不完全体だったというのか。くっ、この計画は失敗だ
ゼロはいつのまにかいなくなっていた。