発端
時は早朝。アスタシアはいつものように開店の準備を始めていた。お店に出てきたひかりは、タイムレコーダーを興味深そうに眺めていた。
ひかり: そっか、本当にストライクさんずっと来てないんだ……
店のシャッターを開けて、アスタシアが店の中に入ると、カウンターの上に紙が置いてあるのに気がついた。
アスタシア: あら?これはなに?
ゼロ: どうしたの?
アスタシア: 書き置きが……
ゼロ: ええ〜〜〜!!
アスタシアは奥のミーティングルームへ歩きながら、紙を開けた。
アスタシア: ストライクさんのだ
ゼロ: ほっ本当だ
ひかり: 最近、ここに来てなかったのに。どうしてそんな物が……いつの間に
アスタシア: だって、朝来たらあったのよ
手紙にはこう書かれていた。
手紙: お前達と居ると危険な目に合わせる。だから、俺はここから離れる。ストライク
ひかり: 戦いを続けるしか……ないのかな……
ひかりは悲しそうな顔をした。
アスタシア: そういえば最近言動が不審だったわよねぇ。しきりに決死の覚悟とか別れるとか……
ゼロ: うん。言動おかしかった
ひかり: まだ続けてるんだね……
アスタシア: ひょっとして何かまずい事になってるのかも。あの人のことだからきっと自分でしょい込んでしまうに違いないわ
ひかり: その書き置きからじゃ、どこに行ったのかわからないのかな
ゼロ: どこだろ
アスタシア: えーと、ちょっと待ってね……遺跡って書いてあるけど……どこの遺跡?
ひかり: 最深部のことかな?ラグオルの
アスタシア: 最深部!?
ひかり: うん。ひかりのおじいちゃんが、そこにだけは行ってはならんって言ってたけど……
アスタシア: そんなとこで何かが起きてるのかしら
ひかり: すっごく危険な場所なのかもしれないね
アスタシア: とっても心配だわ。行って様子を見てくるだけでもしたいんだけど……
ひかりは懐から情報端末を取り出して、アスタシアに見せた。
ひかり: これを……
アスタシア: どれどれ?
ひかり: おじいちゃん……どうやら、自分で行こうと思って、データを持ってたみたい。この最深部のこの地点あたりにマークがしてあるね。何かあるのかな?
アスタシア: なるほど。ここからこうやって行くのね。わかったわ。ひかりちゃん、ありがと。ではさっそく!とにかく入って見てくるの
ひかり: ここにストライクさんがいるとは限らないけど……
アスタシア: いるわ。きっと。
ゼロ: すごい自信だね
アスタシア: いえ、なんとなくだけど……
ゼロはふふっと笑った。
アスタシア: とにかく、こんなとこでこうしちゃいられない。さっそく行くわ
ゼロ: 止めても無駄そうだし、ついていくかな
アスタシア: 来ないんなら一人ででも行きます!
アスタシアはさっさとシティの転送機に向かって走っていってしまった。
ゼロ: わわわ、行かないって言ってないよ〜〜
ひかり: ひかりは二人が心配だから……ストライクさんは、まだ……
ひかりは悲しげな顔でとぼとぼと歩き出した。ゼロはそんなひかりの頭をなでながら言った。
ゼロ: でも、いつか終わる時が来るよ。ほら、元気出して。行くよ
ひかり: うん。行くよ〜
ゼロ: そうそう。いつもの元気なひかりちゃんだ
二人も遅れてシティの転送機に乗った。
ひかり: 最深部には近づくな、か……いったい何があるのかな……