何でも屋13: ひかりと影

ひさしぶりに何でも屋に帰ってきたひかりちゃん。でも、なんだか様子がおかしいのです.

劇的な発端

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ひかり: あ、みんな来たね
アスタシア: はい
3人が森に入ると、ひかりが待ちかねたように見上げた。しかし、その視線がいつもとは違った。眼底からにらむような視線だ。ストライクは反射的に刀に手を伸ばした。
ゼロ: ねぇねぇ、なんか、いつもと様子が違わないですか?ひかりちゃん
アスタシア: そう?わかんないなぁ
ひかり: 依頼人はね……フフフ……コノ ワタシダ
ひかりの声は途中からいつもの快活な声とはまるで変わっていた。
アスタシア: ひかりちゃんが依頼者?なら、なんでそう言ってくれなかったのよ
しかし、ひかりはアスタシアには目もくれず、いきなりストライクに向かって走り出した。
ひかり: 死ネ! すとらいく!
いきなり攻撃を繰り出すひかりをストライクは間一髪避けた。
ひかり: チ……カワシタカ
アスタシア: ちょっと! やめなさい!
ひかり: フフフ、マダ 気ヅカナイノカ
ひかりの背中には妖しい羽が生えていた。
ひかり: すとらいく……貴様ヘノ恨ミ……今日コソ……ハラシテクレルワ!
ゼロ: どうやら、何かに取り憑かれちゃったのかも
アスタシア: ちょっと、その言葉ゼロさんならわかりますけど……
ストライク: ゼロ……アスを連れて逃げろ……
ゼロ: 逃げるって……

と、その時、突然ひかりが苦しみ始めた。
ひかり: 頭が……頭が痛いよお……助けて……
それはひかりの本来の声だった。
ゼロ: あっ、ひかりちゃん!!
アスタシア: 治った?
二人はひかりに駆け寄ろうとするが、ストライクが止めた。
ストライク: 早くしろ……!!
ゼロ: えっええ〜 わっわかったよ〜
アスタシア: それじゃストライクさんは……ひかりちゃんは……
立ちすくむアスタシアの手をぐいぐいと引っぱって、ゼロは森の奥へ走り出しだ。

ひかり: クハハハ!クラエ ワガ恨ミノ一撃ヲ!!
ひかりはストライクに向かって一歩踏み込んだ。しかし、その途端、また頭を抱えてうずくまってしまった。
ひかり: 頭が……頭が痛いよお……
ひかりはよろよろと立ち上がった。
ひかり: ク……カンゼンニハアヤツレヌカ


ゼロ: はやくはやく〜
アスタシア: ち、ちょっと、引っぱらないでー
ゼロとアスタシアは小道を抜けて、森の陰に隠れた。
ゼロ: あそこはストさんにまかせようよ。私たちじゃ足でまといだよ
アスタシア: 横についててあげれば、レスタをかけてあげられるじゃない
ゼロ: アスタシアさんに攻撃がきたらだめじゃないですか〜〜死んじゃいますよ〜
アスタシア: そ、そうですけど……
ゼロ: ここは見守りましょう
アスタシア: でも……
アスタシアとゼロは心配そうに森の入口の広場を見つめていた。


その間も、依然として二人は睨み合っていた。
ひかり: 冥土ノ土産ニ教エテヤロウ。ワタシハBPノ生体兵器、あれすダ。ストライク、貴様ガ破壊シタBP基地ノ ソノ ヒトツニコノ俺ガイタ……貴様ノオカゲデ コノ俺ガ ドレダケ苦シイ目ニ会ッタノカ 想像モデキマイ
ストライク: だからどうした
ひかり: フン 本来ナラ貴様ノ大事ナじーにニ寄生スル予定ダッタノダガ、失敗シテシマッタ。BPノ基地ヲ破壊サレ、俺は執念デ生キノビタ。オ前ニ一矢報イルタメニナ。
ストライク: ふん……
ひかり: 洞窟ノ暗イ道ノ中、機会ヲウカガッテイタ。チョウドコノ娘ガイイ具合ニヤッテキタノデ利用シテヤッタ次第ダ。クハハハ
歪んだ声が高笑いを上げた時、また突然苦しみ出した。ひかりは頭を抱えてうずくまった。目には涙をいっぱいためていた。
ひかり: ……は……はやく……にげて……
ひかり: ク……エエイ、ナゼ……思イ通りニナランノダ! クソ……
ストライク: さすがと言うべきか……
ひかりは苦しみながらもよたよたと森の奥へ続く小道を歩いていった。
ひかり: ヤメロ……俺ハソコニ行キタインジャナイ……
ひかりはときどき立ち止まりながら、振り返りながら、ゆっくりと歩を進めていった。あたかも二つの意思がそれぞれ逆方向に行こうとするかのように。
ひかり: ドウスレバ完全ニ操レルンダ……コレハ! ソウカ……この闇ノ力ガコノ森ノもんすたーヲ凶暴ニシタノダナ……ナラバ……ソノ柱ノ闇ノ力ヲ得レバコノ身体ヲ完全ニ操レル……ククク……ナラバ 行クトシヨウ。コノ……チカラガアレバ……ククク……すとらいく、キサマノ命シバシアズケタゾ

ひかりがよたよたと歩いていく先には、心配そうにながめていたアスタシアとゼロの姿があった。
アスタシア: わ、こっちきた
ゼロ: 隠れろ
ひかり: みんな……に…げ…て……
ゼロ: 逃げてって言われても……助ける方法はないの?
アスタシア: わたしに聞かれても困ります
ストライクも後ろから追ってきた。彼はこう一喝した。
ストライク: お前たちは店に戻れ……
アスタシア: 戻れって言われてもはいそうですかって戻れませんよ
ゼロ: ひかりちゃん助けなきゃ
ストライク: 言っても聞かないな……死ぬぞ?
アスタシア: 死ぬ?ゼロさん、どうしましょうか
ゼロ: 死なないようにすればいいだけだよ。今までいっぱいピンチを乗り切ってきたんだから
アスタシア: ゼロさんがそこまで言うとは正直思ってませんでした。ゼロさんが行くって言ってるのにわたしだけ帰るわけにはいかないわ
ストライクは顔に手を当てて首を振りながら言った。
ストライク: わかった……ただし、絶対に死ぬな
アスタシア: そりゃもちろんよ
ゼロ: ええ、死なないですよ
ストライク: 危なくなったらすぐに逃げろ……いいな
アスタシア: わかりました

ひかりは振り向いて3人に向かって言った。
ひかり: きちゃ……だめ‥だ‥よ
ゼロ: ひかりちゃんの中から出ていけ〜〜
ひかり: イマイマシイ娘ダ。コノ俺ノチカラヲモッテシテモコノ身体ヲ操レントハ。コノ場デ勝負ガデキレバ……ヤハリ、柱ニ行クシカナイカ……勝負ハオアズケダ。すとらいく
ひかりは歩を速めて、森の奥に消えた。
ストライク: 追うぞ
アスタシア: ひかりちゃん、どこに行くんでしょう?
ストライク: 柱……と言っていたな……
アスタシア: 柱?よく見かけるあの変なやつ?わかりました。先回りしましょう
3人も急いで後を追った。