到着・そして
アスタシア: さあ, 最後の一仕事!
ようやく虹の見える広間に到着した. 4人は最後の力をふりしぼって敵を退治した.
アスタシア: ここで良かったですか?
ゼロ: ここかぁ
冴: こ, ここだぁ
冴は滝となって落ちてくる水を少しすくってなめた.
アスタシア: どう? そんなに味違います?
しかし冴は返事をしなかった. しばらくその場に呆然と立ちつくしていた.やがて, 振り向くとせきを切ったように叫んだ.
冴: いい……これだよ, これを求めてたんだよっ!!
ゼロ: よかったぁぁ. じゃ, 持って帰ろうよ〜
アスタシア: 喜んでいただけたとは幸いです
冴は用意した一斗缶に水をいっぱいまで汲んだ.
冴: よ〜〜いしょっ!! 重い〜〜〜〜〜!!
アスタシア: ああ, 大丈夫です. お持ちしますから.
ゼロ: 私が持ちましょうか?
冴: お願いっ!!
冴が一斗缶をどんと降ろし, ゼロがそれを受け取ろうとしたその時, ストライクがひょいとその缶を持った. ゼロはあっと声を上げた.
ストライク: お前じゃ無理だ……
ゼロ: うう……
冴: 大丈夫. こんなこともあろうかともう数個缶を用意してるから
冴が缶をいくつも出すと, アスタシアはびっくりしたような声を上げた.
アスタシア: 数個!? じゃ, わたしもなんだ……
ゼロ: そんなに持っていくのですかぁ
冴: 貴重なお水ですもん
ゼロ: うーん, 重い〜〜!! 持ち上がらないよ〜
アスタシア: そんなこと言ってサボろうと思ってもだめよ
ゼロ: そんなんじゃないよ〜, ほんとに重いよ〜
ゼロは冴に手伝ってもらって, 二人で一斗缶を運んだ.
なつめ: おかえり〜……どうしたの, その荷物
4人がお店まで帰ってくると, 店番のなつめがびっくりした顔で出迎えた.
アスタシア: はあはあ
ゼロ: 重かったぁぁ
ゼロは店に入るなりどてんと倒れ込んだ.
ゼロ: 私もうだめぇぇ
ストライク: だらしない……訓練よりマシだな
冴: 大丈夫?
アスタシアも荷物を降ろすと, 腕をぐるぐる回したり背中を伸ばしたりしていた.
アスタシア: こんなに重い目にあったの何年ぶりかしら
ゼロ: こんな時に限って力持ちのなつめちゃんがいないんだから
冴: まあまあ, あちきがこの水でいいもの作ってあげるからさぁ
アスタシア: あ, そうそう, 何かご馳走してくださるって. なんだろうなぁ, わくわく
ゼロ: いいもの!
ゼロも目を輝かせた.
ストライク: ちょっと待ってなよ
冴はそう言って台所へと向かった.
数時間後, 冴は透明な液体の入ったビンを片手に戻ってきた.
冴: はい. 飲んでみてよ
アスタシア: 水?
冴: うんにゃ. 仕込んだ
アスタシア: これって……
冴は全員のコップに少量ずつ中身を注いだ. 皆, おそるおそる飲んでみた.
アスタシア: うわぁ. いいお酒ね
ストライク: 悪くはない……
冴はなつめにもコップを手渡した.
冴: なつめも飲みなよ
アスタシア: あんまり飲んじゃだめよ
なつめは酒を一気に飲み干すと, 一目散にトイレに駆け込んだ.
ゼロ: あーあ, またやっちゃった. 大丈夫かなぁ
アスタシア: うわぁ, うちの店で……ちゃんとトイレでやってくれたかなぁ
ゼロ: 私様子見てくるよ
アスタシア: ゼロさん, お願い
ゼロはすたすたと部屋から出ていった.
アスタシア: かんぱーい
冴: うめ〜〜〜
アスタシア: この, すっきりとしてそれでいてどっしりと重みがあると言うかなんというか
アスタシアと冴が喜んで飲んでいると, ゼロがなつめを連れて戻ってきた.
冴: ん? どーしたのら? ほっといてさぁ, じぇろさんものみょぉよぉ〜〜
ゼロ: こんな所で寝ちゃ風邪ひくよ〜. しょうがないなぁ
アスタシア: ソファにでも寝かせておきなさいよ
ゼロはなつめをおんぶしてソファまで運んだ. すると, とたんになつめはいびきをかき始めた.
冴: ぐご〜〜
ゼロ: わわ
ゼロはびっくりして飛び退いた. それを見て冴はうひゃひゃと笑った.
ゼロ: はぁ, まったくもう
ゼロが戻ってくると, 冴が酒のビンを持って待ち構えていた.
冴: のめ〜〜
ゼロ: どわぁぁ, 一人できあがってる人が
冴: しゅとらいくも飲まんか〜〜〜いっ!!
冴はまた一通り酒を注いで回った.
冴: きょ〜〜はありがちょっ!!
アスタシア: ささ, 依頼も無事終わったことですし, これでお開き……
アスタシアがそう言い終わらないうちに, 冴はアスタシアのコップに酒を注ぎ足した.
冴: あちきの酒が飲めねーってのかよぉ
アスタシア: わ, わかりました. いただきますよぉ
冴: のめ〜〜
ゼロ: 明日にひびきますよ〜, みなさん?
アスタシア: でもこれ, おいしいからまた困っちゃうのよね. ついつい……
ストライク: 俺は強いからな
そして, また時間が過ぎた.
ゼロ: 冴さん, そのへんで, ね.
冴: うるへぇ〜
冴は既にぐでんぐでんに酔っぱらっていた.
ゼロ: アスタシアさ〜〜ん, 助けてよ〜
アスタシア: ん? なぁにぃ?
振り向いたアスタシアの顔の焦点は定まっていなかった.
ゼロ: ああああ〜〜, 酔ってる〜〜
ストライク: 見事にできあがったな
冴: 疲れたからすまんけど休ませてちょ
アスタシア: どうぞ〜
冴はふらふらとソファに這っていくと, なつめの隣で横になった
ゼロ: おやすみー
冴: ぐごーーーー
ゼロ: って, 一瞬ですか
アスタシア: さあて, もう一杯
アスタシアがまた飲んでいると, ソファの方からいびきに加えて歯ぎしりも聞こえてきた.
アスタシア: んもう, うるさいわねぇ
またしばらく経った. ゼロは頃合を見はからってこっそりと立ち上がった.
ゼロ: お酒はほどほどにね. 私はこれで
アスタシア: あー, ゼロさん逃げる気? そぉんな冷たい人だとは思わなかったなぁ
ゼロ: えっ, そっそんなことないですよ
ゼロ: ストさん何とかしてよ〜
しかしストライクは黙って首を振った.
ストライク: 無理だ……こうなったアスは止められん. 諦めろ, ゼロ
アスタシア: 今日は泊まっていきなさい〜
ゼロ: ええ〜, それって飲み明かすってことですか? いやぁぁぁ
ゼロの悲鳴が深夜の静けさの中にこだまするのであった.