何でも屋12: 幻の天然水

冴さんの依頼で,洞窟に幻の天然水を取りに行きました.報酬の他に,何かをご馳走してくれるというのですが,何でしょうかね?

ゼロの活躍

ゼロ: いっちば〜ん
先程の分岐点に一番早く戻ってきたのはゼロだった. しばらくして, 冴とアスタシアがほとんど同時に到着した.
アスタシア: あ, ちょっと待ってよー
冴: びり〜〜
ゼロ: 遅いぞ〜〜
冴: ごめんごめ〜ん. って早すぎるわいっ!!
アスタシアはちょっとむっとした顔で言った.
アスタシア: お客様を置いて, 遅いぞとはなんですか! ほんとに…… それじゃ護衛にならないでしょ
ゼロ: あう, ごめんなさい〜〜〜
冴: 気にしない
しょげるゼロを冴はなぐさめていた.


冴: しかし……噂に聞いたんだけど, ゼロさんって, マラカスの名手なんだよね
いつのまにか冴はマラカスを両手に持っていた.
ゼロ: どこでそれを!!
冴: 町中に広まってるよ
ゼロ: えええ〜〜〜知らなかった
冴: いやぁついでにゼロさんにマラカス教えてもらいたかったんだけどね. 腰の振り方とかさ
アスタシア: あら, そんなにうまいの? ゼロさん. 先生だなんて
ゼロ: えへん
ゼロはVサインをした.
冴: 実演見せて〜〜〜!!
ゼロ: しかたないなぁ
ゼロは自分のマラカスを取り出し, リズムにのってひとしきり踊りながら振った.
ゼロ: いえ〜〜い, 今日はこれでおしま〜〜い
冴: おおっ, さすがぁ〜. ノリノリだねぇ. ありがとう!!
アスタシア: うーむ, ノリノリなのはわかるんだけど, 冴さん, 本当にこんなので勉強になるの?
冴: 人生雑学が勉強だよ
ゼロ: ほら, 歌って踊れるハンターだよ
アスタシア: ふーむ

ストライクはずっとこめかみを押さえていた.
ストライク: ……先に進まんのか?
冴: あっ, そうだそうだ. 先進まないとね
アスタシア: 行きましょう
ゼロ: あーい
ゼロはそう返事をして, 来た方に歩き出した.
アスタシア: ちょっと, どっち行くのよ?
ストライク: 逆だ……
ゼロ: 間違っちゃった


通路の先は広い空洞だった. 扉は奥の方にあり, 両脇は滝のように流れる溶岩で阻まれている. 4人が入るとシャークはナノノドラコがいっせいに襲ってきた.
ゼロ: 逃げろ〜
冴: 大丈夫?
ゼロ: 大丈夫じゃな〜〜い!! わーん, だからいやだって言ったんだよ〜
ゼロは頭をかかえながら逃げていた. 幸い, 空洞はとても広く囲まれることはなさそうだ. 他の3人は自分の前の敵を倒すことに専念した.
しかし, 見込みは外れた. ゼロは敵に囲まれ, 前から後ろから殴られて倒れた.
ゼロ: もうだめかも……
冴: あ〜〜〜!! しっかりしてっ!! 死んじゃいやだよ〜〜!!
ゼロ: 私のこと忘れないでね〜
ストライクとアスタシアは敵との戦闘を続けていた. すべての敵を退治できた時, アスタシアはやっとゼロが倒れているのに気がついた.
アスタシア: さーてと……あらら? ゼ, ゼロさん!
ゼロの周囲には冴とストライクがいた. 心配そうな顔で見ている冴を後目に,ストライクはリバーサーのテクニックをかけた.
冴: はぁ, よかったぁ〜〜
アスタシア: もう大丈夫よ
ゼロ: もうだめだ〜
しかし, ゼロはまだ演技を続けていた. ストライクが蹴りを入れた.
アスタシア: こら, そんなフリしたってバレてるのよ
ストライク: 寝言は寝てから言え……
ゼロ: いててて……って, ばれてたんですかあぁぁ
ゼロはきょろきょろと3人を見回した.
冴: 倒れた仲間に蹴り入れるなんてさいてー!! 今のはちょっといただけないなぁ
ゼロ: そだそだ
ストライク: いつもの事だ……
冴: いつも蹴り入れてたの? さらにさいて〜〜〜!!
ストライク: 最低で結構だ……
冴: じゃ, 最悪〜!!
ストライク: 結構だ……
冴: 結構だなんて, 誉め言葉としてとらえているのかしら
ゼロは笑っていたが, アスタシアはおろおろしつつも間に入った.
アスタシア: まあまあ, そこまでおっしゃらなくても. お客様が気分を害されたのであれば, わたしの方からきつく言っておきますので
アスタシアはストライクに向かって言った.
アスタシア: もう, まったく. 少しは愛想良くしなさいよ
ストライク: 人に好かれる人間で無いことくらい解っている
アスタシア: まあ, そりゃそうだけど, でも少しは……
冴: 人に好かれる人間じゃないなら, 好かれるようになんかしなよっ!!
冴は大きな声をさらに大きくして言った.
冴: いい? 客のあちきが言うのもなんだけど, 何でも屋はあくまでサービス業だから, 客に不快感を与えたらいけないと思うな
ゼロ: サービス業だったのかぁ
アスタシア: お客様からそのように教えていただけるとは, 誠に頭が下がる思いでございます.
冴: ごめん, 熱入りすぎた. はぁ, はぁ, ホントに水欲しくなってきた
冴の顔は耳まで真赤だった. 荒い息をしている冴の頭をゼロがなでた.
ゼロ: よしよし, よくできました
冴: うわぁ!!
驚く冴を後目にゼロはくすくす笑っていた.
冴: ストライクさん, ごめん, 気にしないで
アスタシア: ゼロさんも, これはサービス業なのよ. わかる?
ストライク: 俺は社員ではない……戦闘以外は社員にまかせる
ゼロ: うん. まかせて. で, サービスって何やるの?
ゼロは腕組みをして考え込んでいた.
アスタシア: とにかく, お客様に不快な思いはさせないように
ゼロ: わかった〜
ゼロは顔を上げると, 冴を呼んだ.
ゼロ: 冴さん冴さん, お肩でもたたきましょうか?
冴: 頼むぞよ
ゼロ: 気持ちいいですかぁ?
冴: って違うでしょ!!
冴は肩をたたき始めたゼロをはたいた.
ゼロ: 違うの?
涙目になっているゼロを見て, 皆笑った.
アスタシア: あはは. まあ, 彼なりの冗談ですから
冴: わかったわかった. あめ玉あげるから機嫌なおしなよ
ゼロ: やったぁ!! へへへ
アスタシア: よかったわね

冴はストライクの前に立って言った.
冴: さっきはごめんね. 言いすぎちゃった.
ストライク: 謝るような事はされていない……
アスタシア: いいんですよ. いつもこうなんだから.
冴: でも, 愛想よくないと客来ないよ
アスタシアはその言葉ではっと気がついた.
アスタシア: そうか, それが客が来ない原因か!?
ゼロ: そうだったんだ〜〜
冴: まあ, どんな事情があるのかわかんないけど, あちきはそう思うよ
アスタシア: そういや, 最近ほとんど仕事なかったもんねぇ
ゼロ: そういえば仕事してないなぁ

ゼロは最後につけ加えた.
ゼロ: ストさん, これに懲りてわたしを蹴るのはよしましょう
冴: まあ, いつも倒れているゼロさんもゼロさんだよ. 倒れないように努力しようよ