依頼主は
ゼロ: ふふーん
なつめ: つんつん, なに鼻歌うたってんの?
ゼロ: いいでしょ〜
店のいつものテーブルに, なつめ, ゼロ, ストライク, アスタシアの4人は何をするでもなく座っていた.
アスタシア: はぁ..今日も暇だわ
なつめ: いやぁ, ヒマはよくないが世界が平和ならそれでいいじゃん. あたしはそう思うよ
アスタシア: まあ,そうなんだけどね
ゼロ: 仕事ないのかぁ. ふふ〜ん
その時, 店の表の扉を開ける音が聞こえた. 扉に取り付けてあったベルがちりんちりんと鳴った.
アスタシア: あらら? お客さん? いらっしゃい
ゼロ: いらっしゃい〜
ゼロはあわてて奥の部屋から出ていこうとして, 扉の敷居に足を引っかけてバランスを崩した. 幸い転びはしなかったが, 顔を壁にしこたまぶつけた.
ゼロ: いちちち
アスタシア: ちょっと, ゼロさん, 落ち着いて
アスタシアがそう言いながら, ゼロの後ろから出てきた.
アスタシア: どんな御用でしょう?
入ってきたのは小柄なフォマールだった. 白い服を着て, 水色の髪を後ろでたばねている. 名前を冴といった.
冴: いやぁ, 頼みがあって来たんだけどさぁ, ここは何でも屋だよね?
アスタシア: ええ, そうです. お悩み事がありましたら何でもどうぞ
冴: 頼みがある
アスタシア: はい, 何でしょう?
冴: 水を探して欲しいんだ
アスタシアはきょとんとした目つきで相手を見つめた.
アスタシア: 水?
冴: そう, 水
アスタシア: 水って, あの透明な液体のやつ?
冴: それ以外に何がある!!
アスタシア: 蛇口をひねるとじゃーじゃー流れる……わ,わかりました. 少しお待ち下さいね. コップ一杯でいいですか?
冴は無言でアスタシアの頭をはたいた.
アスタシア: あいたっ!
ゼロ: なんてことするんですか〜〜. 暴力はんた〜い
冴: 水道水が欲しかったらとっくに手に入れてるよ
アスタシア: いやまあ, そうでしょうねぇ
冴: 極上の天然水が欲しいのっ!!
アスタシア: 極上の天然水, ですか...
冴: だってここには天然水ないじゃないのよ. なにもかもが人工, すべて人工……はぁ……
冴は溜め息をついた.
ゼロ: でも, そんな水どこにあるの?
冴: 決まってるじゃないのよっ!! ラグオルよ. ラ・グ・オ・ル!!
ゼロ: なるほど. 頭いいですねぇ
ゼロは感心したようにうなずいた.
冴: でもねぇ, そこは危険すぎるから何でも屋に手伝って欲しいわけなのよ
ストライク: つまり, 我々に護衛をしろと……
冴: そうそう!! その通りだよ
アスタシア: わかりました. 喜んでお手伝いさせて頂きます.
冴: やったねっ!!
詳しい話を聞くため, アスタシアは冴を店の隅のソファに案内した.
冴: えっとね……確か, ラグオルの地下にある地下水が一番おいしいって話聞いたのよ. そこまで連れてってくんない?
ゼロ: 地下ってことは……洞窟? えー, いやだよー. 怖いもん, あそこ. 虫いっぱい出るんだよ〜. 暗いんだよ〜
冴: 何でもするのが何でも屋でしょーがっ!!
ゼロ: うう……そうだけど……
ストライク: うるさいぞ, ゼロ……ところで, 報酬は……?
冴は手提鞄を重そうにテーブルの上に置いた. 開けると, 中には金貨が入っていた.
冴: ちょっと少ないけど
アスタシア: わかりました.
アスタシアはそう言って立ち上がった. その彼女に, 店のカウンターに座っていたなつめが声をかけた.
なつめ: 元締め〜〜〜!! ごめ〜ん, あたしまで行ったら店だれもいなくなるからさぁ,残念だけど留守番しとくよ〜
ゼロ: じゃ, かわりに私が〜〜
冴: いや, あんたには連れてってもらう!!
冴はゼロの腕を引っ張った.
ゼロ: ええ〜〜, なんでですかぁ
冴: 面白そうだからだよ
冴は上機嫌で鼻歌を歌っていた.
ゼロ: なんですかそれは〜〜. いやな予感が
冴は金貨の入った鞄をしまうと, 全員に聞こえるように言った.
冴: あと, 報酬なんだけど, さっきの金貨の他にあちきが天然水で作ったあるモノを御馳走しようではないかっ!!
アスタシア: ごちそう!?
冴はこくんとうなずいた.
アスタシア: 食べ物だ!?
冴は首を傾げた.
アスタシア: ねね, 甘いもの?
冴はさらに困った顔になった. そして, 急に立ち上がって出入口の方に歩き始めた.
冴: とりあえず行くぞ〜〜!!
アスタシア: あ, あ, ちょっと待ってください
アスタシアもあわてて準備を始めた.
アスタシア: みんな, 準備はいい?
ストライク: ああ
ゼロ: うん, 大丈夫
アスタシアは満足そうにうなずいて戸口へ向かった.
アスタシア: よーし, じゃ, 行きましょう. なつめちゃん, 留守番お願いね
なつめ: はーい!! 気をつけてねー!!
ゼロ: なつめちゃんずるいよー
アスタシア: 文句言わずに. 行きますよ
なつめ: つんつんにはあとでプロレス技かけてあげるからさぁ
ゼロ: いやぁぁ
ゼロは逃げ出すように店から出ていった.