大道芸
テーブルの上にぽつんとケーキを置いて座っているジーニちゃんの横にアスタシアさんが座りました.
アスタシア: ほらほらぁ, ジーニちゃん, 食べようねぇ〜. ジーニちゃん, あーんして
しかし, ジーニちゃんは首を振っています. そうこうしているうちに, 他の皆も集まってきました.
アスタシア: んもう, ジーニちゃんったら
じーさん: そこの坊主……じゃなくて嬢ちゃんか?
ひかり: えへへ. おじいちゃん照れてる〜
じーさん: えい, やかましいわい. 照れてなんぞおらんわ
ひかり: うん, じゃあそういう事にしておくよ
そこに, 横からなつめさんがお酒を差し出しました.
なつめ: じーさん, 酒飲みなよ
なつめさんが差し出したのはメタノールでした. 私がお出ししたのではありませんよ.
じーさん: うむ, かたじけない
じーさん: ぐお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おじいさんは突然口から火を吐きました.
ひかり: もう, おじいちゃんたらぁ
なつめ: じゃ, 口直し
なつめさんは次にイソプロピルアルコールを差し出しました.
ひかり: なつめちゃん, もうやめなよぉ
なつめ: だいじょぶだいじょぶ
おじいさんはそれを受け取ると, そのままなつめさんに頭からかけてしまいました.
なつめ: うわっ!! さすがじーさん, 見破ったな
じーさん: ほれ, 燃えろナツメ!!
おじいさんはなんとなつめさんに向かって火を吹きました.
なつめ: うわっ!! あぶねえ!! 危うくスタントショーになるところだった
ちょ, ちょっと, お店の中でそんなことはやめて下さい! こんな行為を止めるどころか, 後の人達は手を叩いて喜んでいます.
アスタシア: あー, すごいすごぉい ぱちぱち
ゼロ: おお〜〜, すごいすごい
ひかり: ひかりのお祝いがめちゃくちゃだよぉ
----一騒ぎ終えた所で話はまた元に戻ります.
じーさん: でじゃ, そこの嬢ちゃん, ほれ, せっかくのパーティーじゃ. もっとしゃべったらどうじゃい. 面白い連中ばかりじゃぞ
なつめ: ほら, 喋らないと人生損するよ
じーさん: ひかりとかナツメとかナツメとかナツメとか
なつめさんはむっとした顔になりました.
なつめ: ちょっと待て〜い. あたしのどこがおしゃべりなんだよっ!!
ゼロ: 自覚ないの?
なつめ: ない
なつめさんは即座にきっぱり答えました.
ジーニ: 私はお兄ちゃんの代わりだから
じーさん: 代わりでもなんでも, 折角のお祝いじゃぞ
ジーニ: うにゅ……
じーさん: うにゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おじいさんもジーニちゃんの真似をしてみましたが, やっぱり可愛くありませんでした.
なつめ: とりあえずこれあげる
なつめさんはポケットからロリポップを取り出しました.
なつめ: じーさんもあげようか?
じーさん: いらんわ!
なつめ: ううっ
アスタシア: 代わりだからってストさんの真似しなくても
ゼロ: しゃべってるだけならいいけど, ストさんの代わりだからって私を殴んないでよ〜〜〜
なつめ: それは許可するから
ゼロ: 許可するの? いやだよ〜〜
なつめ: うん
なつめさんは即答しました.
じーさん: その「すとさん」とは何者じゃ? キトサンの親戚かの?
なつめ: ストライキっていう無断欠席者なの
なつめさんは笑いながら言いました.
じーさん: ストライキが休んだら, まんまではないか
アスタシア: あー, 知らなかったんでしたっけ? ええとれすねぇ, この子の兄なんです!
じーさん: ほう……この嬢ちゃんのお兄ちゃんか
ひかり: へ〜〜, そうなんだあ
アスタシア: そうなんですぅ〜
なつめ: まったくだ
じーさん: じゃとすると, さぞかし社交的で明るい……なんてことはないんかの?
アスタシア: あはははー
おじいさんがこう言うと, アスタシアさんは笑い出しました.
ゼロ: ないない
じーさん: うを. 即答されとるし
ジーニちゃんは小さな声で言いました.
ジーニ: お兄ちゃん……入院……してるから
ひかり: ねえねえ, 元締め〜, ストライクさんって大体なんで入院なんかしてるの?
なつめ: そうだよ. 屋根から落っこちたの?
アスタシア: わたしも大仕事があるってとこまでしか聞いてないけど
じーさん: 入院か……きっと腰痛じゃな
きっとそれは違うと思いますけど……
ジーニ: 死んでも……おかしくない怪我だったから……
なつめ: 二人が抱き合ったとこしか覚えてないんだけど
と, 突然アスタシアさんがうろたえ始めました.
アスタシア: ま, まぁ, えーと, えーと……
じーさん: で, ジーニじゃったか? お前さんのお兄ちゃんが入院しとるのとお前さんがしゃべらんこととの相関性はなんじゃ?
ジーニ: うにゅ……
ジーニちゃんは上目づかいにおじいさんを見ました.
アスタシア: そうそう責めなくてもいいでしょ〜. おとなしくてもいいんだもんねぇ〜
じーさん: 気になっただけじゃ
ひかり: 元締め〜, なんか今日浮かれてない?
アスタシア: お酒久し振りだったから
そんな中, なつめさんは青い顔をしています.
なつめ: まただ. ぎぼぢばる〜〜い!! おえ〜〜〜
ちょっとちょっと, 店の中でやらないで下さい!! せめてトイレか外へ行って!あーあ, 掃除するのは私なんですからね. もう約束の一時間半も過ぎてるし,早く帰ってもらわないと.
私はアスタシアさんに時間の旨を伝えました.
アスタシア: え? え? もうお時間ですかぁ?
ひかり: じゃあ, そろそろ帰ろっか, おじいちゃん
ゼロ: なつめさん, 飲みすぎですよ〜
なつめ: あたしが吐いたばっかりに出入り禁止くらっちゃった. ごめんよぉ〜
少なくともあなたには金輪際お酒はお出ししません!!