ケーキ屋発見
ケーキ屋は洞窟の奥, 滝の流れる美しい広間にあった. 滝のせいで虹がかかっている.
なつめ: あっ!!! ケーキ屋み〜〜〜っけ!! 元締め, 見つかったよ
アスタシア: へー, こんなきれいなとこにあるのね
ケーキ屋は何と, 滝の裏側にあった.
アスタシア: ケーキ5つ下さーい
ケーキ屋: へい, らっしゃい. 何作りましょ
アスタシア: だから, ケーキ5つ……
ケーキ屋: まいどっ! おまちっ!
なつめ: なんだか寿司みたいだね
アスタシア: さすがは幻のケーキ屋!
なつめ: ホントに幻だなぁ
アスタシアは満足そうにケーキの入った箱をかかえて店を出た.
ケーキ屋: まいどありっ!!
なつめ: さあて, ケーキも買ったことだし……
店から出てきた2人は, ストライクが通信機を持って何やら話しているのに気がついた. ストライクの通信機からは落ち着いた男の声がした.
通信: 少し大きな基地を見つけました. 応援を頼みたいのですが
ストライク: わかった……すぐに行く
アスタシア: あらら? ストさん, どうしたの? さっそく帰って……
ゼロ: 仕事かな
ストライク: すまないが, 一仕事出来たようだ
アスタシア: あららぁ……
なつめ: ビジネスマンは大変なのねぇ
ストライク: 少し大きな事になりそうでな……
アスタシアは見るからに残念そうな顔をして, ケーキの箱を見つめた.
アスタシア: じゃあ, パーティーは明日ね. 明日はいいのよね?
ストライク: いや……死ぬかもしれんな
なつめ: 死ぬなんて縁起でもないことをっ!! 死んだらさあ, 左の扇持ってる三下が泣くよ. いろんな意味で. だからさぁ, 生きて帰ってきてね
アスタシア: 大丈夫大丈夫. パーティーは明日だからね. 待ってるからね.
ストライク: ああ……わかっている……
なつめ: ならOK
ストライクは自分の刀をアスタシアに投げてよこした. ストライク: アス…… アスタシア: どうしたの? これを? ストライク: 預かっていてくれ…… アスタシア: え, ええ. でも明日また会えるんだから…… アスタシアは刀を拾い上げた. | なつめ: なんかいいムードですぜ なつめはゼロにひそひそ声で言った. ゼロはなつめを引っ張って洞窟の奥へ歩いていった. ゼロ: はい, 邪魔者は消えましょうね なつめ: ちょっと退却っ!! なつめとゼロは陰からこっそり見ていた. |
ストライク: 少しばかりやっかいでな アスタシア: んもう, いっつもそんな風に言ってんだから…… ストライク: 死なないまでもしばらく動けなくなるかもしれん アスタシア: とにかく預かります. 返却期限は明日よ? わかった? ストライクとアスタシアは見つめ合っている. ストライク: ああ……頼む…… | なつめ: いいカップルみたい ゼロ: うんうん. いいね なつめ: あたしらもするか. 真似ごとを ゼロ: ええ〜 なつめ: つんつん……これを預かってくれ…… なつめはそう言ってカッターナイフを投げる. それはゼロの顔の横に突き刺さった. ゼロ: なつめちゃん, それ死んじゃうよ なつめ: うわっ!! ごめ〜ん!! |
ストライクはアスタシアに一歩近寄った. 鼻と鼻が触れるくらい近くに. そして彼は両手で彼女を抱きしめた. 顔が相手の肩の上に乗る. アスタシア: うわわ, な, なに…… ストライク: 頼む……もし……俺が戻らなくても, ずっと……預かっていてくれ…… アスタシア: わかったわ. 頼まれなくても…… ストライク: すまん | なつめ: うひゃあ〜〜〜!! これは18才以下は見ちゃいけませんなぁ ゼロ: なつめちゃんは見ちゃだめ〜〜 ゼロはなつめの後ろから両手で彼女の目を隠した. なつめ: あわわっ 見えないよぉ〜〜あたし二十歳だよぉ〜〜 ゼロ: でもだめ〜 なつめ: 見せろっ!! でも, なつめがどうあがいてもゼロの手は離れない. なつめ: 見えないよぉ〜〜〜, こんな時に限ってつんつん力強いんだから〜〜〜 |
ストライク: 後は……頼む……
ストライクはアスタシアを離すと, そのまま走り去った. アスタシアはその後を呆然と見送った.
アスタシア: 行っちゃった……あれ? みんなは?
その時, ゼロとなつめの二人が洞窟の奥から出てきた.
なつめ: いやぁ, つんつんに襲われちゃってさ
ゼロ: えええ〜〜
ゼロはどうしていいのか分からなかった. 顔を真赤にしていた.
アスタシア: さあ, 帰りましょう
なつめ: ストライクさん, さっき元締めにプロレス技かけてなかった? 鯖折りって
アスタシア: やっぱり見てたの〜?
なつめ: でもさぁ, つんつんに目塞がれちゃってこの先わかんな〜い. どっちが勝ったの?
アスタシアはぷいっと後ろを向いて, そのまま歩き始めた.
アスタシア: あー, 帰りましょう
ゼロ: そうそう, 帰りましょう
なつめ: そうだね. 帰ろ帰ろ
3人はゆっくりと家路に向かった.
ゼロ: ちょっとうらやましかったなぁ, 僕もできるのかなぁ
ゼロは遠い目をして言った.
なつめ: そうだよね, 二人でプロレスなんて……うらやましい
3人は店に帰ってきた.
アスタシア: さーてと, ケーキはおあずけね
なつめ: 5人揃うまでおあずけだね
アスタシアはケーキの入った箱を冷蔵庫にしまった. そして, 店の金庫を開けると, そこに刀を入れた.
なつめ: あっ, 元締め, なんか隠してた. 金庫に.
アスタシア: 大事なもの.
なつめ: 隠し財産?
アスタシア: そんなとこね
なつめ: それとも脱税した金?
なつめは追求の手を緩めない.
アスタシア: ひみつ
ゼロ: なつめちゃんにはわからないもの〜
なつめ: そうなんだぁ
なつめは何となく釈然としない様子でした.
なつめ: ああっ, でもケーキぃ〜〜〜〜いつになったら食べられるの……
(おしまい)