何でも屋10: 幻のケーキ屋

洞窟の奥にあるという幻のケーキ屋.ひかりちゃんの試験終了はどうしてもその幻のケーキで祝いたい.そのために4人ではるばる洞窟へと向かいました.

ケーキ屋発見

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ケーキ屋は洞窟の奥, 滝の流れる美しい広間にあった. 滝のせいで虹がかかっている.
なつめ: あっ!!! ケーキ屋み〜〜〜っけ!! 元締め, 見つかったよ
アスタシア: へー, こんなきれいなとこにあるのね
ケーキ屋は何と, 滝の裏側にあった.
アスタシア: ケーキ5つ下さーい
ケーキ屋: へい, らっしゃい. 何作りましょ
アスタシア: だから, ケーキ5つ……
ケーキ屋: まいどっ! おまちっ!
なつめ: なんだか寿司みたいだね
アスタシア: さすがは幻のケーキ屋!
なつめ: ホントに幻だなぁ
アスタシアは満足そうにケーキの入った箱をかかえて店を出た.
ケーキ屋: まいどありっ!!


なつめ: さあて, ケーキも買ったことだし……
店から出てきた2人は, ストライクが通信機を持って何やら話しているのに気がついた. ストライクの通信機からは落ち着いた男の声がした.
通信: 少し大きな基地を見つけました. 応援を頼みたいのですが
ストライク: わかった……すぐに行く
アスタシア: あらら? ストさん, どうしたの? さっそく帰って……
ゼロ: 仕事かな
ストライク: すまないが, 一仕事出来たようだ
アスタシア: あららぁ……
なつめ: ビジネスマンは大変なのねぇ
ストライク: 少し大きな事になりそうでな……
アスタシアは見るからに残念そうな顔をして, ケーキの箱を見つめた.
アスタシア: じゃあ, パーティーは明日ね. 明日はいいのよね?
ストライク: いや……死ぬかもしれんな
なつめ: 死ぬなんて縁起でもないことをっ!! 死んだらさあ, 左の扇持ってる三下が泣くよ. いろんな意味で. だからさぁ, 生きて帰ってきてね
アスタシア: 大丈夫大丈夫. パーティーは明日だからね. 待ってるからね.
ストライク: ああ……わかっている……
なつめ: ならOK

ストライクは自分の刀をアスタシアに投げてよこした.
ストライク: アス……
アスタシア: どうしたの? これを?
ストライク: 預かっていてくれ……
アスタシア: え, ええ. でも明日また会えるんだから……
アスタシアは刀を拾い上げた.
なつめ: なんかいいムードですぜ
なつめはゼロにひそひそ声で言った. ゼロはなつめを引っ張って洞窟の奥へ歩いていった.
ゼロ: はい, 邪魔者は消えましょうね
なつめ: ちょっと退却っ!!
なつめとゼロは陰からこっそり見ていた.

ストライク: 少しばかりやっかいでな
アスタシア: んもう, いっつもそんな風に言ってんだから……
ストライク: 死なないまでもしばらく動けなくなるかもしれん
アスタシア: とにかく預かります. 返却期限は明日よ? わかった?
ストライクとアスタシアは見つめ合っている.
ストライク: ああ……頼む……
なつめ: いいカップルみたい
ゼロ: うんうん. いいね
なつめ: あたしらもするか. 真似ごとを
ゼロ: ええ〜
なつめ: つんつん……これを預かってくれ……
なつめはそう言ってカッターナイフを投げる. それはゼロの顔の横に突き刺さった.
ゼロ: なつめちゃん, それ死んじゃうよ
なつめ: うわっ!! ごめ〜ん!!

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ストライクはアスタシアに一歩近寄った. 鼻と鼻が触れるくらい近くに. そして彼は両手で彼女を抱きしめた. 顔が相手の肩の上に乗る.
アスタシア: うわわ, な, なに……
ストライク: 頼む……もし……俺が戻らなくても, ずっと……預かっていてくれ……
アスタシア: わかったわ. 頼まれなくても……
ストライク: すまん
なつめ: うひゃあ〜〜〜!! これは18才以下は見ちゃいけませんなぁ
ゼロ: なつめちゃんは見ちゃだめ〜〜
ゼロはなつめの後ろから両手で彼女の目を隠した.
なつめ: あわわっ 見えないよぉ〜〜あたし二十歳だよぉ〜〜
ゼロ: でもだめ〜
なつめ: 見せろっ!!
でも, なつめがどうあがいてもゼロの手は離れない.
なつめ: 見えないよぉ〜〜〜, こんな時に限ってつんつん力強いんだから〜〜〜

ストライク: 後は……頼む……
ストライクはアスタシアを離すと, そのまま走り去った. アスタシアはその後を呆然と見送った.
アスタシア: 行っちゃった……あれ? みんなは?
その時, ゼロとなつめの二人が洞窟の奥から出てきた.
なつめ: いやぁ, つんつんに襲われちゃってさ
ゼロ: えええ〜〜
ゼロはどうしていいのか分からなかった. 顔を真赤にしていた.
アスタシア: さあ, 帰りましょう
なつめ: ストライクさん, さっき元締めにプロレス技かけてなかった? 鯖折りって
アスタシア: やっぱり見てたの〜?
なつめ: でもさぁ, つんつんに目塞がれちゃってこの先わかんな〜い. どっちが勝ったの?
アスタシアはぷいっと後ろを向いて, そのまま歩き始めた.
アスタシア: あー, 帰りましょう
ゼロ: そうそう, 帰りましょう
なつめ: そうだね. 帰ろ帰ろ
3人はゆっくりと家路に向かった.

ゼロ: ちょっとうらやましかったなぁ, 僕もできるのかなぁ
ゼロは遠い目をして言った.
なつめ: そうだよね, 二人でプロレスなんて……うらやましい


3人は店に帰ってきた.
アスタシア: さーてと, ケーキはおあずけね
なつめ: 5人揃うまでおあずけだね
アスタシアはケーキの入った箱を冷蔵庫にしまった. そして, 店の金庫を開けると, そこに刀を入れた.
なつめ: あっ, 元締め, なんか隠してた. 金庫に.
アスタシア: 大事なもの.
なつめ: 隠し財産?
アスタシア: そんなとこね
なつめ: それとも脱税した金?
なつめは追求の手を緩めない.
アスタシア: ひみつ
ゼロ: なつめちゃんにはわからないもの〜
なつめ: そうなんだぁ
なつめは何となく釈然としない様子でした.

なつめ: ああっ, でもケーキぃ〜〜〜〜いつになったら食べられるの……

(おしまい)