いつもの塔
洞窟の通路は何本も分岐があって, 複雑に入り組んでいた. 途中にはモンスターがうようよしていて, 何度も戦闘になった.
なつめ: どっちだ?
ゼロ: こっちだね
ゼロが地図を見て答えた.
アスタシア: ま, とにかく奥へ奥へ行けば着くそうだから
細い通路から広間に出たその時, ゴォーっという騒音が耳についた. 謎の柱だった.
ストライク: また……か
なつめ: あ, 柱だ
ゼロ: 力がみなぎってくる〜〜
なつめ: 壊しちゃえ!! うりゃっ!!
なつめが長槍を振り回して柱に立ち向かう.
ゼロ: だめぇぇ
ゼロが止めに入る. しかし, 止めるまでもなく, なつめのライダーキックでも柱はびくともしない.
なつめ: 痛い……壊れないよぉ
なつめは足をさすった.
アスタシア: さすがのなつめちゃんも無理か.
なつめはゼロの方を向いた.
なつめ: 爆弾ない?
ゼロ: 爆弾なんて持ってないですよ
なつめ: なぁんだ. つんつんなら持ってそうだったから
ゼロ: どういう理由ですか, それは
なつめ: ストライクさんの寝込みを襲う用に
ゼロ: なるほど
ゼロは手をぽんと叩いた.
なつめ: でしょ? 事前に仕掛けておけば成功間違いなしっ!!
と言うと, 彼女はストライクの方に向き直った.
なつめ: というわけですので, ストライクさん, 気をつけてね
ゼロ: わわ, しないしない
しかし, ストライクは何も返事をしなかった. ふと見ると, 右目をしきりにさすっていた.
ストライク: 何か嫌な過去の記憶が甦ってくるような……絶望した時の記憶……か……
アスタシア: ストライクさん, どうしたの? ぼーっとして
なつめ: ん? どうしたの? ストライクさんらしくないよ
ゼロ: 今日はなんだかおかしいですよ
ストライク: 少し嫌な事を思い出してな……
なつめ: ストライクさんにもトラウマが……
アスタシア: ストライクさん, この柱の前だと体調悪そう
ストライクは何も言わなかった.
ゼロ: いつもなら, 拳が飛んでくるのに
なつめ: 今日は飛んでこないねぇ
ストライクは代わりに柱に向かってパンチを繰り出した.
ゼロ: 拳痛めちゃいますよ. そんなことしたら
謎の柱を前にして, ストライクは本当に気分が悪そうだった. 反対にゼロは元気が出ると言っている. なつめは前から不思議に思っていた事を聞いてみた.
なつめ: しかしさぁ, なんでつんつんにとって柱は力の源なの?
ゼロ: う〜ん, なんでだろう?
ゼロは首を傾げていた.
なつめ: 実は柱から生まれたとか? 柱の部品から細胞分裂して生まれたとか……んなわけないよね〜
ゼロ: なわけはありませんよ
アスタシア: なつめちゃん, 自分で言ってる意味わかってる?
なつめ: わかんな〜い
ゼロ: はぁ. どうせどっかの漫画の受け売りでしょう
なつめ: うん
なつめは即座に答えた.
ゼロ: やれやれ. 困ったものですね
アスタシア: まったく……
3人は軽く笑った. しかし, ストライクだけはまだ浮かない顔をしている. 拳をぐっと強く握っていた. 爪が食い込む程に.
ストライク: 先へ……行くぞ……
アスタシア: ほら, そろそろ行きましょう. 今日の目当てはこの柱じゃなくてケーキなんだから
なつめ: そうだね
なつめ: 道はどこかなぁ……
4人は入り組んだ洞窟を進んでいた. 敵を倒しながら進んでいくと, その先は倉庫になっていてコンテナがいくつか置いてあるだけだった. 4人は急いで元来た道を元の分かれ道まで戻ってきた. 見渡してみるとなつめがいなかった.
アスタシア: あれ? なつめちゃんは?
なつめ: みんなどこ?
なつめは大声でそう叫びながら, 広間の後ろの入口から入ってきた.
なつめ: はぐれてた
ゼロ: だめだよ〜, 迷子になっちゃ
ゼロはうれしそうに言った. なつめは不機嫌だった.
アスタシア: 今日は皆なぜかぼーっとしてるのね
なつめ: 気のせいでしょ
ゼロ: そかなぁ
長い通路を走り抜けていくとき, ゼロは後ろに向かって大声で言った.
ゼロ: 迷子になっちゃだめだからねぇ
ストライク: お前もな……
遅れ気味だったなつめは, 追いつくと無言でゼロにチョークスリーパーをかました.
ゼロ: ぐ, ぐるしい……なつめちゃん, 力強いよ〜