何でも屋1: 機械の修理

アスタシアが始めた「何でも屋」さんに初めての依頼が舞い込みました。とんでもない依頼でないといいのですが……

楽はできない

一行はセントラルドームの下の小さな空き地に到着した。見上げると大きな建物が真近に見えたが、壁の高さはゆうに5mはあった。
ゼロ: ねぇねぇ、ドーム、あれかな?
ゼロは上のドームを指差した。
アスタシア: そう、あれよ、あれ
ひかり: ここからもドームに行けないや
ゼロ: うーん、ここからじゃだめだね
ひかり: あ
ひかりは声を上げると、壁のわずかな突起に手をかけて登り始めた。
ひかり: うんしょ
アスタシア: がんばれー
ゼロ: 無理ですよー、ここ登るのは。怪我しますよ
ストライク: 登れないな

ひかりは2mほど登ったところで、ずるずると壁をずり落ちた。
ひかり: いたーい! おしり打ったあ
ゼロ: ほらー、言ったじゃないですかあ
ひかり: うんうん、ごめーん。やっぱり無理かあ
アスタシアは自分の杖をひかりに差し出した。
アスタシア: ほら、この杖貸してあげるから何とかならない?
ストライク: 無理だな
ひかり: 無理だよお、このなぎなたでも届かないのに
アスタシア: もう少しなんだけどなぁ…
ゼロ: きっと、違う道があるはずですよ。探しましょう!
ゼロはもと来た扉の方に向いた。ストライクとひかりもそうした。
ひかり: うんうん、がんばっていこー


ゼロ: なんだか、雨強くなってきたね
降り始めた雨は止むどころか、ゆっくりではあるが雨足が強くなってきていた。
アスタシア: 早く終わらせたいわね
ストライク: そうだな……
ひかり: 冷たいよお
そんな中、ゼロはなぜか横を向いていた。
ゼロ: えとえとえと
ひかり: どうしたのお?
アスタシア: どうしたの?
ゼロ: すっ、透けてる…
ゼロは横を向いたまま、顔を真赤にして小さい声で答えた。しかし、声が小さすぎてよく聞こえなかった。
アスタシア: え?なにが?
ひかり: おかしなゼロさん
ゼロ: なんでもないです
ひかり: 置いていくぞお
ストライクとひかりはさっさと行ってしまった。ゼロは何かを言いたそうにアスタシアをちらちら見ては視線をそらしている。
ゼロ: きゃー
アスタシア: わ、わたし!?
アスタシアは恐る恐る自分を見た。雨に濡れてブラが透けて見えた。慌てて両手と杖で胸を隠した。
アスタシア: きゃっ
アスタシアは、ゼロに早く行くように目で訴えながら、ゼロの真後を歩いていった。


濁った水をたたえる池の真中に、ぽつんと給水塔が立っていた。そこまでは橋がかけられており誰でも行き来できるようになっていた。
ストライク: 給水装置か……異常無しだ
ひかり: きゅうす?やかんみたいなもの?
ストライク: 違う……
ゼロ: きっと、これで水を管理してたんだよ
やっと追い付いたアスタシアが後ろから尋ねた。
アスタシア: ねえねえ、なんか端末みたいになってるじゃない、他のとこの動作状況とかわからない?
ストライク: ふむ……
ストライクはしばし端末を操作していたが、やがてそこを離れた。
ストライク: 駄目だな……給水状況しかわからん……
ひかり: ストさんでもわからないことあるんだ。ふうん

ストライクは皆の方に振り向いた。
ストライク: ハッキングするか……?
ゼロ: そこまですることないよ。単なる水のおうちでしょ?
アスタシア: やってみてよ。できるなら、ね。そうすればお仕事早く終わるから。
ストライクは左手に埋めこまれているコンピュータ端末をつないだ。
ストライク: ……ち、ウォールか
アスタシア: だめなのぉ〜?
ストライク: ……いや、崩せる
アスタシア: 早くやっちゃってよ。こんなとこすぐ帰りたいわ
ストライク: ……しまった! ち……カウンターウイルス……
ストライクは左手の端末を外した。
ストライク: すまん、失敗した
アスタシア: いいのよ

ひかりはストライクの作業を見守っていたが、突然大きなくしゃみをした。
ひかり: くしゅん! 風邪ひきそお
ゼロ: 大丈夫?
ゼロは心配そうに聞いた。
ひかり: あー、はながたれたあ
ゼロ: あはは
ひかりは、ストライクの作業が終わったのを見て言った。
ひかり: 元締め〜
アスタシア: なに?
ひかり: 入口を探した方がいいかもね
アスタシア: そうね、先行きましょうか
一行はしとしと雨が降る中を、橋を渡って道に戻った。


一行は、森で最大の猛獣、ヒルデベアに出会った。
ゼロ: わわ、なんですかぁぁ、あれは〜〜
ゼロが驚いて逃げようとするより、ヒルデベアの繰り出すパンチの方が早かった。ゼロはパンチをまともに受けてひっくり返った。
ゼロ: はわっ
ストライクとひかりが2人でヒルデベアを倒した。ひかりはゼロが倒れていた所に駆け寄った。幸い怪我はほとんどなく、ゼロは自分で起き上がった。
ひかり: ゼロさん、大丈夫?
ゼロ: 大丈夫じゃないですよ〜
アスタシア: 少々のことは我慢よ
ひかり: ほんとだ。またこぶできてる
ひかりはゼロの頭をなでた。
ゼロ: うう
ストライク: 泣くな……

ゼロはぎゅっと目をつぶっていたが、痛みもだいぶ引いてきたようで、ゆっくり目を開けた。
ゼロ: いったい、さっきのはなんなんですかぁ。聞いてませんよ〜、あんなでっかいの
ひかり: ゴリラ、こわかったねえ。びっくりしたよ


猛獣のいなくなったこのあたりをうろうろしていたひかりは、森の奥まった所で何かを発見した。
ひかり: あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アスタシア: なに?
ひかり: ここ〜、ストさん、みてみて〜
ひかりの大きな声を聞いて全員が集まった。そこには小型の転送装置があった。
ストライク: 小型転送装置か……
ゼロ: へぇ
ひかり: もしかして、ここから行けたりして
ストライク: 行ってみる価値はあるな
ひかり: 元締め〜、ゴール近いかもよ
アスタシア: それはいいわ。いってみましょう

転送装置の先はセントラルドームの前庭だった。そして、そこにはモスマントの巣がたくさんあった。
ひかり: あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゼロ: むし〜〜お
ひかり: 虫きら〜い
ゼロ: さされた〜
ひかり: でも、ビンゴだね
この虫たちを退治すれば終わりはすぐそこだ。ストライクは力いっぱい大剣を振るった。