初めての仕事
ひかり: あ、元締め〜、遅刻しちゃったあ! ごめんよお
店先の花壇を蹴飛ばさないように気をつけながらも、ひかりは急いで店の中に飛び込んできた。そして、敷居をまたいだのもつかの間、急に振り向いてまた店先に飛び出した。店先に足を止めた人があったからだ。
ひかり: あ、いらっしゃいませえ! このお花なんかどうですかあ?あー、待ってよお
店先の通行人がまた歩き出すのを目で追いながら、ひかりはふうと息をついてまた店の中に入っていった。
店の中では、アスタシアが、一つしかないテーブルの上を整理していた。机の上には週刊誌や食べ物の包み紙などが散乱していた。
アスタシア: さてと……あ、ストライクさんも、今日はわざわざすみませんね
ストライク: 気にするな……
ストライクは、テーブルの上の本のタイトルにちらちらと目を走らせながら、黙って座っていた。そして、その隣にはゼロがちょこんと座っていた。
そこに、ひかりが大きな声をあげて入ってきた。
ひかり: 元締め〜、今日も売上があ
アスタシア: 売上げ?大丈夫、これから稼ぐのよ
ひかり: そっかあ
ひかりがテーブルにつくと、片付けを終えたアスタシアが、立ったままこほんと一つ咳払いをして話し出した。
アスタシア: さてと、今日皆さんに集まってもらったのは他でもありません
そして、テーブルに両手をついて身を乗り出した。
ゼロ: 仕事ですか
アスタシア: なんと! やっとお仕事が来たのです!!!
ゼロ: おお!!
ひかり: え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アスタシア: ひかりちゃん、長すぎ
ひかり: やっとお仕事があ! わああい
アスタシアも椅子に座ると、クリップで束ねた数枚の紙をテーブルの上に出した。
ストライク: で、どういう依頼だ?
アスタシア: ラグオル都市基盤開発公社からの依頼で、パイオニア1が残していった各種機器の動作チェックをします
ひかり: ラグオルしょうぎばんくみあい?
アスタシアはひかりをじろっと見たが、何も言わずに正面に視線を戻した。
ストライク: ふむ……
しばらく沈黙が続いた。ひかりは何か言いにくそうにしていたが、他の3人の顔つきを見回してから、思い切ったように口を開いた。
ひかり: えっとお
アスタシア: なに?
ひかり: 誰か、メカに詳しい人っているのかなあ?
アスタシアは緊張した面持ちでさっとメンバーを見回した。
アスタシア: いる?
ひかり: ひかりは苦手だからあ、護衛しかできないよ
ストライク: 一応一通りはできる
ゼロ: 私も少しだったら
アスタシアはほっと一息ついて、自分の椅子に深々と座り直した。
アスタシア: ああ、よかったぁ。うんうん、それじゃ問題ないわね
ひかり: 元締めはぁ?
アスタシア: わたし?ま、いいじゃないの。できる人がいるんだからね
ひかり: なんか、ごまかされたような……
ストライク: 怠惰……
ストライクはぼそっと言った。ゼロはくすくす笑っていた。
ひかりはさっそく椅子から立ち上がって、握った右手を挙げた。
ひかり: じゃ、現場へゴーー
アスタシアもゆっくりと立ち上がった。
アスタシア: 仕事自体はたいしたことないんだけど、わたしたちの最初のお仕事だし
ひかり: はつしごと〜
アスタシア: ちゃんとできるようにがんばりましょうね
ストライク: ああ
ゼロ: うんそうだね
ゼロは緊張した面持ちで部屋を出た。
アスタシア: さて、準備はいい?
アスタシアも含めてフル装備の4人は店の前に出ていた。アスタシアは、店の戸締りをしてドアに「臨時休業」の札をさげると、外に立てかけてあった大きな杖をつかんだ。
ひかり: ひかりのやまとなでしこぶりを元締めに見せてあげるね
ゼロ: やまとなでしこ?だれがですか?
ひかり: え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゼロ: あはは
ひかりは長い長い声を上げると、皆に背を向けた。
ひかり: くすん……いいもん
ゼロ: わわ
ゼロは慌ててひかりの正面にまわった。
ゼロ: すねないでぇぇ
アスタシア: まあまあ
ストライク: さて行くぞ……
アスタシア: そうそう、行くわよ
ストライクはそう言うとさっさと歩き出した。そしてアスタシアもついて歩き出した。
ひかり: じゃいこ〜
ゼロ: ええ、行きましょう
ひかり: ゼロさん、いっくよお
ひかりはゼロの袖を引っぱって歩き出した。
ゼロ: わわあ! 引っぱらないでよ〜
ひかり: あはは
アスタシアが振り向いてみると、ひかりとゼロはまだ店の前からほとんど動いていなかった。
アスタシア: あの2人、なにやってるのかしら
ストライク: さあな
4人はラグオルの地表に降り立った。地表はいい天気だった。
ひかり: あ〜、何度きてもいい空気〜
アスタシア: じゃ、皆さん、機械類を見つけたら報告と動作チェックお願いね
ゼロ: はーい
ひかり: ひかりは機械苦手だからみんながんばってねー
ゼロ: だいじょうぶかなぁ
アスタシア: 今回はチェックだけだから簡単よ
ストライク: さて行くか……
ストライクは、周囲を素早く見回すと、一人でさっさと歩き出した。
ひかり: じゃ、前衛いくよ〜
ゼロ: あっ僕は後方ね
自然とハンターが前、フォースが後の陣形が形成された。