ちびっこ探険隊

今回は、チビキャラ揃いということで、みんな5,6才くらいという設定です。これもまたいつもの設定とは違うのでお間違えなく。

冒険は楽じゃない

うっそうとした茂みから別の空き地へようやく抜けた頃、今まであんなに晴れていた空から、雨がぽつりぽつりと降ってきました。
ウォン: うひゃ、ツメテ
アヤ: きゃー、雨降り
ミル: 雨だぁ〜、もう帰ろうよ〜
ウォン: 冒険にはコンナンがツキモノなんだぜっ、これくらいで帰れるかよ
ミルちゃんは濡れた服をさかんにいじっています。
ミル: うひゃー、服がべちょべちょ。お母さんに怒られる……ウォン君のせいだからね!
アヤ: クリーニング代出してよね
マット: 錆びたらどうするの〜
ウォン: 洗濯すればいーじゃん。女はだらしねえな〜
アヤ: ガサツなだけでしょ
ウォン君はやれやれと首を横に振りました。
ウォン: ロマンが薄味になるぜ。もっと冒険てのはな、こう協力しあって……

これに対して3人は不思議そうな顔をしました。
アヤ: 味があるの?
ミル: 薄味のケーキはおいしくないなぁ
ウォン: ロ、ロマンはロマンだ
ミル: もしかして、お宝って食べ物?ロマンとかなんとかって……
アヤ: え〜、食べ物なの?
ウォン: お宝は……お宝だよ
ウォン君は、両手を目いっぱい広げました。
ウォン: もっともっとすっっげ〜〜〜もんだぜ、きっと
アヤ: って、知らないんでしょ
ウォン: ばーか、知ってたらお宝探しじゃないだろ
ミル: だから、ないんだって
マット: ないものに期待してもね
そしてマットちゃんはアヤちゃんの方を向きました。
マット: 罰ゲームが楽しみね
アヤ: うん、考えなくっちゃ
ウォン: 罰ゲームするのはお前らだもんね〜
ミル: ウォン君の方だもんね〜
アヤ: そうそう
マット: うんうん
アヤちゃんとマットちゃんはうなずいています。それを見てウォン君は不満げです。
ウォン: ふん、今に見てろよ
ミルちゃんはそんなウォン君をじぃーっと見ています。
ミル: ミルはいつでも見てるよ〜
ウォン: あんまりじろじろ見んなよ
ミル: 見張りなんだからちゃんと見ないとね
ウォン君はぷいっと後を向くと、歩き出しました。ミルちゃんはそんなウォン君をじろじろ見ながら後をついていきました。


森の奥まで来ても、ブーマはあい変わらずうじゃうじゃいます。しかも、奥に行くほど数も多く凶暴になってきます。
ウォン: またモグラか
ミル: またぁ〜?
ウォン: ま、俺様の敵じゃないけどね〜
ウォン君は剣を構えて突進していきます。
ミル: こんなの、レディがすることじゃないのよさ
ミルちゃんもしぶしぶ杖を構えます。

4人が力を合わせて、ブーマを撃退したのもつかの間のこと、森の奥からさらにブーマがぞろぞろと出てきました。今までに見たこともない大群です。
ウォン: あわわ。すげー、いっぱいだ
ウォン君は大群にもおじけず、周囲を見回して端の方から各個撃破でじわじわと攻撃していきます。それに対して杖をかかえたままうろうろするミルちゃんは、次第にブーマに囲まれてしまいます。
ウォン: あっ!
ウォン君が叫び声を上げたのと同時に、数本のブーマの腕が同時にミルちゃんに振り降ろされました。どたっ、という音とともにミルちゃんは倒れました。
ウォン: この〜!
新たな獲物を探すブーマをとにかく夢中で攻撃しながら、ウォン君はなんとか倒れたミルちゃんの方へ近寄っていきました。マットちゃん、アヤちゃんの援護もあって、ブーマはなんとか撃退することができました。

倒れたミルちゃんの周りに3人が集まりました。ミルちゃんは倒れたまま顔だけ動かしました。
ウォン: お、おまえ大丈夫かよー
アヤ: ゴメンちょっと遅れた
ミルちゃんは頭をかかえながら、上半身だけ起き上がりました。
ミル: いったーい
マット: 大丈夫?
ミル: もうだめ〜
ウォン: おいおい、ど、どうするんだ?
ミル: うしろで見てる! うんうん、レディは戦いなんてしないのよさ

まだ足を広げて座ったままのミルちゃんに、ウォン君は腕組みをしながら言いました。
ウォン: おめー帰れよ
ミル: やだもんねー
ウォン: 怪我したら怒られるぞ〜
ミル: もうとっくに怒られるもん! 服は泥だらけだし、あちこちすりむいてるし……
ミルちゃんは服や自分の傷の具合をいちいち見せると、自分から立ち上がりました。
ミル: みーんなウォン君のせいだからね!
横で見ていたマットちゃんも静かに言いました。
マット: 女の子を誘って怪我させたウォン君も怒られると思うよ
アヤ: うん
ウォン: お、俺〜?
ウォン君は後ずさりしました。
マット: だって、私たちウォン君に誘われたんだし
アヤ: 責任取ってよね
ウォン君は腰に手をやると、大きく胸を張りました。
ウォン: ふ、ふん! 大人なんか恐くないぜ
アヤ: 声が震えてるわよ
ウォン: 大人が恐くちゃ冒険は出来ねえぜ!
ミル: やっぱ恐いんだぁ〜
アヤ: 恐いんだぁ〜

マット: 私の開発責任者っていろんな機械持ってるよ〜
マットちゃんは、何かを思い出すように、ゆっくり言いました。
マット: あれ、痛そうだったな〜
アヤ: ドリルとか?
マット: ドリルもあったね
アヤ: 歯医者のドリルって痛いよね〜
ウォン君は歯を食いしばって目をつぶっています。
ウォン: こ、恐くない
ミル: あ、怖がってる、怖がってる
マットちゃんはさらに続けました。
マット: あとね〜、なんか電気ショックの機械とか、なんかいろいろあったよ
アヤ: ビリビリするの?
マット: うーん、どうなんだろ?私は充電されるだけだけど……触った人は黒焦げになってたよ
アヤ: 焦げちゃうんだ……
アヤちゃんはそう言ってウォン君をじろりと見ました。
ウォン: 俺のせいじゃないもんね。お前ら勝手についてきたんだよーだ
ミル: ウォン君がバカなこと言い出すからだよーだ
アヤ: そうだそうだ
ウォン君は自然と、女の子3人と向かいあう格好になりました。
マット: ウォン君に誘われてるとこ記録に残ってるよ。私、家に返ったらこれチェックされるの
ウォン: てめえ卑怯だぞっ
アヤ: 男の子がそんなこと言うの?
ウォン: う……
ウォン君は視線をそらしました。アヤちゃんはさらに続けます。
アヤ: 約束したのはウォン君でしょ

ウォン君は足で地面をこつこつ叩きました。
ウォン: あのなー、お宝探しはロマンの冒険なんだよ。冒険は怪我とか当たり前だろ
マット: えー、そんなのやだー
アヤ: だから、男の子の遊びでしょ
ミル: レディは冒険なんかしないんだもん
ウォン君は首を激しく横に振りました。
ウォン: もー、うっせーうっせー。だったらもうついてくんな!
ミル: だめ! 見張るんだもん!
ウォン: 帰れよー、俺は大人なんか恐くないもんね
マット: じゃあ、ウォン君の負けね
アヤ: 罰ゲームでいい?
ウォン君は、だん、と強く足を踏みならしました。
ウォン: なんでそうなるんだよ
マット: だって、私達に宝見せてくれてないもん。だからウォン君の負け
アヤ: 宝があるかわかんないし
ミル: ウォン君の悔しがる顔を見るまで帰らない!
ウォン: 何言ってんだよー、もうつきあってらんないぜ
ウォン君は女の子3人に背を向けました。
アヤ: 逃げるの?
ウォン: もう勝手にしろよ、俺は冒険を楽しむんだ
ミル: 早くその×印のとこまで行ってあきらめなさい
アヤ: そうそう、罰ゲーム
ウォン: お宝があるってのに……しょうがねえなあ、女ってのは
アヤ: ないって
いちいち文句を言いながらも、結局ウォン君についていく3人でした。