ちびっこ探険隊

今回は、チビキャラ揃いということで、みんな5,6才くらいという設定です。これもまたいつもの設定とは違うのでお間違えなく。

扉を開けよう

女の子3人はすぐに追い付きました。それもそのはず、ウォン君はすぐ先の閉まった扉の前で途方に暮れていたのです。
ミル: 追い付いた!
ウォン: なんだよ、ばばあ〜
ミル: じじい〜
ウォン: お前いちいちうるさいぞ!
とウォン君は言ったものの、目の前の扉を見上げるばかり。追い付いた3人も状況を察知しました。
アヤ: ふ〜〜ん、今、罰ゲームする?
ミル: ほらほら、一人で行ってみなさいよ!

ミルちゃんがニヤニヤ顔で言って、ウォン君はしばらく言葉に詰まりました。すると突然、目の前の扉がするすると開いたのです。
ウォン: ああ、行ってやる、ついてくんなよ意気地無し!
ミル: あ! 開いちゃった!
すると、後からアヤちゃんがゆっくりやってきました。
アヤ: ほら、鍵は開けたわよ
ウォン: 俺の冒険のカデドを祝ってくれたんだな。気分いーぜ
ミル: アヤのしわざ?
アヤ: うん、そこにスイッチがあったの。触るな危険って
マット: まあ、なにか触っちゃまずいんだったら、ばれた時はウォン君のせいにしましょ
ミル: アヤ、どっちの味方なのよぉ

ウォン君はそんなやりとりを少し遠くで見ています。
ウォン: さっそく喧嘩してやがる、ガキくせ〜
ミル: ガキ、ガキって言うんじゃないのよさ! ガキのくせに〜
ウォン: ま、関係ないぜ、俺は行くからな。そこで待ってろよーだ
アヤ: バイバーイ、ウォン君
ミル: ちょ、ちょっと、待て〜
アヤちゃんは手を振りましたが、ミルちゃんは慌ててついていきました。


ウォン: うーん、どきどきするぜ
ミルちゃんは、道の途中で、のこのこ歩いているウォン君に追い付きました。他の女の子も一緒に追い付きました。
ウォン: なんだよお前たちー
ミル: 見張り!
アヤ: そう、だって見てないとズルするでしょ
ウォン: そうか……へへ
ウォン君は鼻の下を指でこすりました。
ウォン: どか言って俺がいないと恐いんだろ〜?
ミル: だーれが
マット: そんなことないよ
ウォン: へへ、わかってるって。しょうがねえから連れてってやるぜ
ミル: しょうがない?またまたぁ
ウォン: 子分たちよー、タイチョウにつづけー!
ウォン君は姿勢を正して前を向くと、気取って歩き始めました。
ウォン: 気分いーね

格好つけて歩き出したウォン君を、女の子たちは呆れ顔で見ています。
アヤ: ほっとこうか
ミル: 子分じゃない! ミルはウォン君の保護者なのよさ
ウォン: なんだとー!
ミル: このミル様が面倒見てあげるの
アヤ: ミルちゃんかっこいい
いい気分で歩き始めたウォン君でしたが、とたんに気分を害して立ち止まります。
ウォン: ミル、おまえほんっとに生意気だな
ミル: 生意気だったらどうだっていうのよ?
ウォン: 生意気な女はなー
ウォン君はここでいったん言葉が詰まります。
ウォン: えーと、コンキがオクレルって言うぞ!!
アヤ: ふぅーん、そんなこと言うんだ
ミル: コンキ?なによ、それ!?
ウォン: ホンキだったかな……
ミル: ホンキをくれる?
ウォン: ノンキかなあ……
ウォン君は首をかしげています。
ミル: どれなの?はっきりしなさいよ!
アヤ: 何も知らないで言ってるのね
ウォン: し、知ってるって、今の冗談だよ
アヤ: ふぅーん
アヤちゃんはいかにも怪しいおじさんを見るような目つきでウォン君を見ました。
ウォン: えーと……ほ、ホンキだ! もういいだろ、行くぞ!
ミル: ウォン君がホンキをくれるの?
ウォン: そうだよ、わかってるじゃないか。俺はいつでも本気だぜ
ミル: ちょうだいよ! 早く! ほらほら! ここの手に載せてみなさいよ
ミルちゃんは両手を受け皿にしてウォン君に差し出しました。
ウォン: 本気が目に見えるわけないじゃん、ばーかばーか
ミル: くれるっていったじゃん

この二人のやりとりを見ながら、アヤちゃんはぼそっと言いました。
アヤ: ガキね
アヤちゃんが誰に向かって言ったのかも知らず、ミルちゃんはウォン君を指差してはやしたてます。
ミル: やーい、ガキガキー
ウォン: ガキって言った奴がガキなんだよ! ガキーガキー
ミル: ウォン君もガキって言ったからガキー
ウォン: ほら、ミルまた言った。ガキだ、ガキー
ミル: くぅっ、ミル様はいいの! ミルはガキじゃないもん
ウォン: ガキに付き合ってられねえぜ、俺は行くぞ
ウォン君がそう言って前を見ました。そこには大きな扉がありました。
ミル: ほらほら、どうやって行くのよさ?
マット: はやく行きなよー
ウォン君は、大きな扉の前に立ってしばらく考え込んでいました。
ミル: はやく〜
マット: まだ〜?
ウォン: 待ってろ、俺の超強い力でこれを開けてやる
ウォン君はそう言うと、扉に手をかけました。
マット: はいはい
ミル: やれば〜?

ウォン君は歯を食いしばり、精一杯の力を出してこの扉を開けようとしました。でも扉はもちろんびくともしません。
ウォン: うーーん!
アヤ: まだ〜?
ウォン君はいったん休憩して、またトライします。
ウォン: うう゛〜〜〜ん
マット: その扉、ラフォイエにも耐えるぐらいだけど...無理なんじゃない?
ミル: はい、ウォン君の負け〜
ウォン君はついにあきらめ、扉を蹴飛ばします。
ウォン: くそ、大人が余計な事しやがったんだな。宝を隠してるんだ!
マット: つまり、ガキには無理なのね
ウォン: くそ〜〜、お宝探しにはコンナンがツキモノだ
ミル: あきらめて帰って罰ゲームを受ける気になった?
ウォン: 俺はあきらめないぜ!
マット: 罰ゲームにしときなよ
ミル: あきらめのわるい奴〜
ウォン: うっせーうっせー
とは言ったものの、ウォン君は、閉まった扉をぼーっと見つめるばかり。
アヤ: 鍵かかってるのわからないのかな?
アヤちゃんは少し離れて3人を冷やかに見ていました。

ウォン: ちくしょー……大人って余計なことしかしないよな
考え込むウォン君を女の子3人が見守っています。
ミル: ほらほらぁ〜、待ってるんだよ?
マット: まだ〜?
ウォン: お前らもなんか考えろよっ
アヤ: 何で?
ウォン: お宝見たくないのか?
3人: どうせないから
ウォン: ほんとしょうがねえ奴だ。お前らの目を覚ますためにも行かなきゃな
ミル: 無理無理
ミルちゃんはニヤニヤ笑っています。
アヤ: あきらめなって
ウォン: ロマンを邪魔しやがって〜……待てよ、ちょっと待ってろ
ミル: ウォン君、どうしたの?
扉を見上げていたウォン君は、突然振り返ると、もと来た道を走り出しました。
ミル: あ、逃げる!?
アヤ: まてー
女の子3人はついていくので精一杯でした。


女の子3人が追い付いてみると、ウォン君は、さっきの扉の前で考え込んでいます。
ウォン: うーん
ミル: なに考えてるのよさ?
ウォン: 俺は頭いーからな
ミル: どーせウォン君の頭では無理だって
こんな環境では考えなんて到底まとまりません。ウォン君はミルちゃんの方に振り向いきました。
ウォン: なんだと、馬鹿はミルの方だろー
ミル: ミルは馬鹿じゃないもん
ウォン: ばーかばーか
ミル: ばーかばーかばーかばーかばか
ウォン: てめー
ウォン君は大きく息を吸うと、早口で一気にまくしたてました。
ウォン: ばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーか
ミルちゃんも負けてはいません。
ミル: ばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーか
ウォン: はあ、はあ、ガキの相手は疲れるぜ
ミル: ばーかばーかばか

ウォン: うっせーうっせー
ウォン君はそう言うと、近くにあったもう一つの扉に近寄りました。
ウォン: んーと
ウォン君はあたりを見回してスイッチを見つけると、それを色々いじっていました。しばらく色々と試していると、ピッと音がしました。そして、扉が開いていきます。
ウォン: お、すげえ!
ミル: あ、開いた
ウォン: 見たかよ!
ウォン君は誇らしげに顔を上げて、女の子3人を見回しました。
ミル: ちぇっ
ウォン: へへ、さすが俺
ミル: 最初から開いてたんじゃないの?
ウォン: んなわけねーだろ

得意気なウォン君にアヤちゃんはぼそっと言いました。
アヤ: 犬も歩けば棒に当たる?
ウォン: 犬なんてどこにもいねーじゃん、何言ってんだアヤ
ミル: 犬、いないねー
ウォン: ばーかばーか
アヤちゃんはふふっと笑いました。
アヤ: 教養がない奴はこれだから
ウォン: キョウヨウ……なんだそれ
ミル: アヤ、難しいこと言ってごまかそうと思ってもだめだよ〜
ウォン: わけわからんな
アヤちゃんはため息をつきながらも説明を始めました。
アヤ: 犬が道端を歩いてたら偶然棒に当たる様に、ウォン君も「偶然」スイッチに当たったのね、ってことよ
ウォン君は首をかしげました。
ウォン: ……やっぱりわけわかんねえぞ
ミル: よくわからないけど、要するに……
ミルちゃんも同じく首をかしげていました。
ミル: ウォン君のバカ、ってこと?
アヤ: そういうこと
マット: そうみたいだね
ミル: やーいやーい、アヤにまでバカにされてんの
ウォン: バカって言った奴がバカなんだよっ! アヤもバカだ、ばーか
アヤ: 私そんなこと言ってないわよ
いつものようにバカ呼ばわりされても、ウォン君は今回はあまり気にしていませんでした。だって、自分でやれたという事実は変わりようがないのですから。
ウォン: とにかくこれですべてナゾは解けたんだ! 行くぞー!
ウォン君はそう言うと、せっかく開いた扉を後にして、戻っていきました。


ウォン君の行った先は、さっきどうしても開かなかった扉でした。もちろん今も扉は閉まったままです。
ウォン: 見てろよ、へへへ
ウォン君はそう言うと、扉の脇にある装置に手をかけました。
ウォン: じゃかじゃーん、うりゃあ!
こう言ってウォン君が装置を操作すると、扉がするすると開いていくではありませんか!
ウォン: どーだ!
ミル: うわぁ
マット: やっと開いたね
胸を張るウォン君とびっくりするミルちゃん。でも後の2人は意外と冷静です。
ウォン: やっべー、俺って天才かも
ミル: そんな事、ミルは一億年も前からわかってたもん
ウォン: 一億年前に生まれてるわけないだろ、ばかだな
ミル: ミル様に文句をつけるでない!
アヤ: 単なる偶然ね
ウォン: 違うって、俺の超ズノウが働いたんだよ
ミル: はいはい、勝手に思ってればいいのよさ
ウォン: とにかく行くぞっ

4人の冒険の旅がようやく始まりました。やれやれ。