宝物を探そう
ここはパイオニア2北公園です。滑り台やブランコなど昔ながらの遊具が揃っている、今時珍しい公園です。こうした遊びの人気は今も昔も変わりません。今この瞬間も、3人の女の子がそれぞれ思い思いに遊んでいます。
そこにやってきたのが、とんがり帽子のかわいいウォン君です。思いっきり走ってきたせいで息が切れています。
ウォン: おーい、みんなー!
ウォン君の声を聞くと、3人は遊びをやめて集まってきました。
アヤ: うん?なに?
ミル: このミル様を呼ぶとは...なに?
マット: ・・・?
ウォン: おーい、ちょっとこっちこいよ! はあ、はあ……
ウォン君は大きく手を振って呼び掛けると、砂場のふちにちょこんと腰掛けました。
マット: はい
ミル: なーんだ、ウォン君か
ウォン: 何だとは何だよ、お前
そして、ウォン君は文句を言いながらも、黄ばんでボロボロになった紙をポケットから取り出して地面に広げました。
アヤ: なぁに、今度は?
ウォン: っこれ、これ見てくれよ。へっへー、これが何かわかるか?
アヤ: 紙
ウォン: そんなもん見りゃわかるだろ!
アヤ: だったら、なんで聞くのよ?
マット: わかるなら聞かないでよ〜
ウォンは女の子3人を見てふふんと鼻で笑いました。
ウォン: てめーらほんとにバカだなー
女の子3人も負けずに応戦します。
ミル: きったねーただの紙!
マット: 落書き
アヤ: ゴミ
たまらずウォン君は足を踏み鳴らしました。
ウォン: ちーがうー
ミル: じゃあ、なによ?
ウォン: 地図ってのはわかるだろ?
マット: うん
アヤ: それで?
ウォン: で、ここの印を見ろよ
ウォン君が指差した先には、太く×マークが記されていました。
ミル: うんうん、あるけど、これが?
マット: 駄目だよ、落書きしちゃ
ウォン: 何だよ、まだわかんねえのかよ。これはなー
ウォン君は立ち上がって、皆を見下ろしました。
ウォン: お宝の地図だよ、お宝
胸を張るウォン君に対して、女の子3人は砂場に座ったまま、怪訝そうな顔で見上げています。
アヤ: 証拠は?
ウォン: 証拠って、つまんないこと聞くなよ
ミルちゃんは、眼鏡をかけ直すと、改めてウォン君の方を見ました。
ミル: 宝? なーに子供みたいなこといってんのよさ
ウォン: なんだと! お前だって子供じゃないか
ミル: 違う! ミルはもう子供じゃないもん!
ウォン: 子供じゃないって言ってる奴の方が子供なんだよ
ミル: なんだとー
ミルちゃんも立ち上がって、ウォン君と向かい合います。
ウォン: ばーかばーか
アヤ: そういう言い方こそ子供よ
アヤちゃんはそんな二人を冷ややかに見ています。
ウォン: お、お前いちいちうるさいなあ……
ミル: じゃ、証明するのよさ!
ミルちゃんは強い口調で言いました。
ウォン: 証明?
ミル: その×印のとこに行って、お宝があったらウォン君の勝ち、なかったらミルの勝ち、だよ?
ウォン: むむむ
アヤ: なかったら罰ゲームね
マット: いいねー
ウォン: ば、罰ゲーム……
ウォン君は一歩後ずさりしました。
マット: 罰ゲーム何にしようかな〜
アヤ: 今度は何にしようかな〜
ミル: 罰ゲーム! 罰ゲーム!
3人は盛んにはやしたてます。
ウォン: てめえら〜〜、ふん! いいぜ! あるに決まってんだからよ!
アヤ: ふうーん、自信あるんだ
ミル: あやまるなら今のうちなんだけどなー
顔を真赤にして怒鳴るウォン君に、マットちゃんが聞きました。
マット: ところで宝って何?
ウォン: ばっかだな〜、それを見つけるのが宝探しだろ
マット: モノメイトを宝って言われたら困るし……
ウォン君はそれには答えず、振り向いて公園の出口へゆっくりと歩き始めました。
ウォン: まあとにかく、そうと決まったら早速行ってみようぜ
ミル: あーっ、ごまかすー
ウォン君は顔だけ振り返って一言。
ウォン: お前らも勿論ついてくるよな
アヤ: うんっ!
ミル: ズルしないように見届けるのよさ
マット: しっかりと記録するよ
ウォン: へへっ、あとでビックリすることになるぜ
ウォン君はそう言うと、後からついてくる3人を見て満足そうにすたすた歩き始めました。
マット: で、負けたら罰ゲームだよね?何にしようかね
アヤ: 道中ゆっくり考えましょう
ミル: わくわく
ウォン君は3人の楽しそうなおしゃべりを聞くと、突然立ち止まって振り返りました。
ウォン: 宝物、絶対あるって。ほんとに人を信じない奴らだよな。まったくもう。
ミル: だってないんだもーん
ウォン: あるー!
マット: あ、一応罰ゲーム受けるって宣言して?なかった時にね
ウォン: あるに決まってるんだからいいだろ、そんなもん
マット: ごまかそうとしてるー
ウォン: な、なんだと!
ウォンはまた顔を真赤にしています。
アヤ: あらっ、自信がないの?
ミル: ごまかしウォン〜
マット: やっぱり自信ないんだ〜
ウォン君は腰に手を当て、胸を張って言いました。
ウォン: あるぞ! 自信満々だ!
マット: じゃあ、なかったら罰ゲームもOKだよね?
ミル: 罰ゲーム!
ウォン: わ……わかったよ!
女の子たちは勝ち誇ったように右手を挙げました。
アヤ: 決定!
マット: 今の記録したから後でごまかせないよ
ウォン: あるもんねー。俺が勝ったらお前らが罰ゲームだからな
ミル: いいよ! だってないんだもん!
ウォン: あるよ!
ミル: ない!
ウォン: ある!
ミル: ないないないないないないないない!
アヤ: いつまでやるつもり?日が暮れるよ
顔を突き合わせるようにしていがみ合っているウォン君とミルちゃんを、少々あきれ顔で見ています。
マット: まあ、行けばわかるよ。無いことがね
ウォン: もう話しててもしょうがないや、さっさとお宝見つけようぜ
ミル: じゃ、さっさと森に入って、ミル様に宝とやらを見せてみなさい
アヤ: ないことを確認しに行くのよ
ウォン: ふん、言ってろ
ミル: ほら、ウォン君、さっさと案内するのよさ
ウォン: 見てろよ!
アヤ: 拝見させてもらうわ
そんなこんなで、転送ゲートに飛び乗ってしまった4人でした。大丈夫でしょうか?