湯けむり紀行・美女が行く洞窟秘湯めぐり

レイナとキョウカはさっき作った温泉卵をパクついていた。服を着て身支度を整えた俺も、ヴァルから一つもらった。塩をかけるとまたおいしいんだよなぁ、これ。それにしてもキョウカさん、塩まで持参とは準備がいいねえ。先に食べ終えた2人は、これからどうするかを話し合っている。

はあ、まだ続くのか。俺は疲れたよ、もう。

気合い入ってんなぁ…

しばらく進むと、ゲートが見つかった。洞窟のさらに奥に続いているらしい。

ゲートを抜けると、そこは別世界だった。空気はひんやりと冷たく、壁は乳白色。下草が茂り、床もじめじめしている。すぐそばに川が流れている。

ヴァルは川のほとりにしゃがんで手をつっこんでいる。

短い通路を抜けると、そこには美しい風景が広がっていた。一部天井が抜けており、そこから淡い陽光が入ってくる。水面に、天井の穴と同じ形の光のスポットがあちらこちらにできている。流れる水は水面を波だたせ、上からの光はあちらこちらに乱反射する。水面のキラキラのパターンは一定のリズムを保っていて、しかし常に一定ではない。水面に浮かんだ葉っぱは、ゆらゆら揺れながら、ゆっくりと確実に、奥へと流れていっている。

そして、奥の方ではゴーッという音がする。なんだろう？と思って行ってみると…

それは、不思議な建造物だった。一言でいうなら「石碑」だろうか。しかし、光る石碑などあるだろうか? オレンジ色に鈍く光るその物体は、石なのか金属なのか見当もつかない。丸い不思議な紋章が3方に描かれていて、ひときわ目立つように青く光っている。

おいおい、仕事が無事終わってからにしようぜ？ そう言う暇もなく、ヴァルはカメラを構えた。

ま、確かにきれいなところだ。滝と川。そして緑。そう思うと、この物体も、観光地にありがちな石碑に見えてくるから不思議だ。でも、仕事中にこんなことしてていいのか？ デートコースにゃいいとこなんだがな。