ガイドブックで大儲け

ラグオルっていいところだよ!さあ、森にでかけよう!そんな観光ガイドブックを今のうちに作っちゃおうという、なんとも気の早いガート君。さあ、依頼の方はどうなるでしょうか?

いよいよ終わり、かな?

ガート: ここが正門か
ついにドームの入口にやってきました。ガート君、いつものようにカメラを構えます。
アイラ: ミウちゃん、怪我はないわね?
ミウ: うん、ないよー
アイラ: さ、中へ入って休もう
ガート: っと、その前に‥‥ザックとミウ、扉の前に立ってくれないか?
ミウ: またボク?
ガート: いいじゃん、いいじゃん。頼むよ
ミウ: アイラちゃんでもいいんじゃないの?
アイラ: せっかく写真を撮ってくれるんだから、きれいにしないとねー。はい、これでいいわ
ミウちゃんの話も聞かず、アイラさんはミウちゃんの身だしなみを整えています。
アイラ: あたしは、ほら、他にも機会があるもの。遠慮しないでね
ミウ: そっかあ、なるほどー
ミウちゃん、なるほどじゃありません。 アイラさん、本当?
ガート: そうそう、そんな感じ。いくよー。はい、ありがとう。
ミウちゃんとザック君の記念写真……じゃなかった、ドームの正門の写真を撮りました。ザック君、なんだか赤くなっていませんか?
ガート: さ、中へ
ミウ: 入ろっか
そのまま扉に向かって歩き出したザック君、閉まったままの扉にでん、とぶつかります.
ザック: いてて……。開いてないじゃん
アイラ: 手動なのかしら?
ミウ: ここからじゃ、入れない?
アイラ: 壊れてるわね、これ
ミウ: ゴリラに殴られたからかな?
ガート: そうかもなぁ
アイラ: ゴリラ、頭悪そうだったしねぇ

アイラさん、残念そうに振り向きます。そしてそこに見えたのは、広大な森の景色。緑の地平線が丸く見えます。
アイラ: あら、カメラマンさん、ここからの眺めはどうかしら?
アイラさん、ドーム前広場の端まで移動しました。ここからだと、人工物は見えません。見えるのは、ただ森だけ。
ガート: ああ、よく気がつくね。ありがとう。
ガート君も振り向いてカメラを構えます。
ガート: いつまでもこんな風に緑豊かだといいなあ
ミウ: うん、そうだね
アイラ: まあ、人も馬鹿なままじゃ、ないわよね
ミウ: ……
ガート: あ、こっち向かないで、むこう向いててくれる?
ガート君、やっぱり風景だけじゃなくて誰かを入れたいようです。
アイラ: あちら、ね。こうかしら?
ガート: そうそう、ありがとう。もういいよ。

アイラさんはカメラをいじっているガート君の方に戻ってきました。
アイラ: 仕事熱心なのはいいことだわ
ガート: いやあ、楽しい仕事だからね
アイラ: 趣味がこうじて、というものなのかしら?
ガート: なんたって被写体がいいからなぁ……
アイラ: あら、それってあたしたちの事?
ガート: あ?んん?まあ、ご想像におまかせするよ
アイラ: ザックちゃんも入ってるのかしら…
ミウ: 入ってないかも…
アイラさんとミウちゃんはザック君を見てから、二人で顔を見合わせました。ふふふ。

正門からは入れなさそうなので、4人は散らばって、他の入口を探しています。
ガート: どっかに入口ないのかなぁ
ザック: あれはん?
ザック君が指さした先には、大きな転送ゲートがありました。
ミウ: ゲートかぁ……
アイラ: これって、運搬用じゃないかしら。あの入口から入らないものを運ぶための。
ザック: 運搬用なら中につながってないかな?
ガート: 運搬用でもなんでも、中に入れればいいよ
ザック: でも動かないけど?
ザック君がゲートに乗ってみましたが、何も起こりません。
ザック: 軽いと動かないのかな?
アイラ: 荷物が乗らないと駄目みたいね
ザック君の他にミウちゃん、アイラさんも乗っていますが、依然、変化はありません。
ガート: どれどれ?

最後にガート君が乗った瞬間、目の前の景色が瞬時に変わりました。目の前の壁は不気味に赤く光り、不快な暑さで、そして目の前には、大きなドラゴンがいました。
ガート: うわぁ、なんだこいつ!
と言いながらもカメラを構えるガート君、さすが、記者の鏡!
アイラ: 氷河の大気よ! 凍てつく吐息で眠らせよ!!!
ミウ: 氷雪の女王よ、凍える吹雪の吐息をここに!
二人の手から氷がほとばしり、さすがのドラゴンも地面に倒れます。
ザック: やったか?
「やったか?なに?」の法則により、ドラゴンは立ち上がります。まだまだ、こんなものではやられはしません。
アイラ: これは…ちょっとヤバいわね

ドラゴンが倒れたのは、それからさらに10分が経過してからでした。その間に放ったバータは数知れず。みんな疲れ切っています。
ミウ: あんなのがいるなんて、聞いてないよ
アイラ: みんな、生きてる?
ザック: なんとかね

アイラ: もしかして、今の、写真に撮れたかしら?
ガート: 撮ってたけど……
ガート君、みんなの尊敬を集めます。
ガート: でも、使えないな、あれは。
アイラ: あら、どうして?
ガート: あんなの一般人には、ちょっとね
アイラ: ああ、それはそうかもねえ。物好きはいると思うけど、きっと自分の命の方が大事よね
ミウ: 野生の王国
ザック: あはは。サバンナか、ここは?
ガート: そうか、次の儲け話は動物園か。うんうん、なかなかよさそうだ
おやおや、次の企画がもう決まりましたか。

アイラ: この穴なんかは、観光名物にならないかしら?
ミウ: どうかなあ?
アイラ: 「ドラゴンの開けた穴!」
ザック: 卵でも入れるか?温泉ドラゴンたまご
ミウ: 卵燃えるような?
3人が冗談を言いあっている中で、ガート君はちょっと浮かない顔。
ガート: ドームの中は政府が勝手にどういじるかわかんないしなぁ
アイラ: それもそうね。検閲に引っかかる可能性の方が高いわねぇ。ラグオルに関する情報は提出する義務があるでしょ
ガート: 知らない、知らない、そんな話
もちろん、ガート君も知らないはずはないんですがね。
アイラ: まあ、馬鹿正直に言わなくても……
ガート: そうそう、知らないことなんだ。僕はね。
ザック: 闇で売れば?どうせ二流雑誌でしょ
ガート: 二流!? 大衆雑誌と呼んでほしいな
ザック: 闇の方が儲かるよ。今ならみんな情報に飢えてる
ミウ: 依頼者に、支払まだなのに言う言う。いいのかなー
ザック: 僕は金が目当てじゃないもーーん。べー
ミウちゃんにあかんべーするザック君を後目に、ガート君は拳を握りしめてこう言いました。
ガート: 僕の目的は変わらないよ。大衆に娯楽を提供する! 闇なんか関係ないね
アイラ: うんうん。初志貫徹はいいことだわ
ガート: ありがとう。ほめてくれて
アイラ: あら、どういたしまして
ガート: さあて、ここいらをちょっと写真にとって、それで帰ろうか?
まだ写真を撮っているガート君を眺めながら、ザック君がぼそり。
ザック: 意外と似合いなのか?あの二人?
ミウ: どうかなー?

所変わってここはラグオルからの転送ゲート。皆、無事に帰ってきました。
アイラ: はぁ、お風呂入りたぁーーい
ミウ: ふう、疲れたね
ガート: 報酬はいつもどおりカウンターでね。編集が済んだら見本誌を送るよ。
ミウ: 当座はこれでしのげるかなー?
アイラ: それと、焼き増しもお願いしたいけど。せっかくきれいに撮ってもらったんですもの、ねえ?
ガート: ああ、いいよ、でも
ガート君、急にアイラさんに向き直ります。
ガート: アイラさん、あんまり写してなかったね。
アイラ: いいのよ、あたしの美貌には写真には収まらないもの
ガート: どう?これから個人的に撮りたいなぁ。ワイングラスを傾けてるとこなんか、さぁ
アイラ: それは、写真集のお願いなのかしら?
ガート: いやいや、冗談、冗談。気にしないで。
アイラ: あら、残念ね
ガート: はあ、残念
互いに横を向くガート君とアイラさん。ミウちゃんはそんな二人を見てにやにやしてます。
ミウ: 半分以上本気だったような気がするなぁ

そして、振り向いたのはアイラさんが先でした。
アイラ: 気が向いたら、いつでも被写体になるわよ
ザック: ぞぞー(寒気)
ガート: お金にならなくても?
アイラ: そうねぇ、食事でもおごっていただけるなら、別に料金はいらないわ
ガート: しょ、食事でいいの?
アイラ: だって、あなた貧乏そうだもの……。ところで、ザックちゃん、さっき何か言わなかったかしら?
ザック: なんのことかな?空耳じゃない?
これが、アイラさんとザック君の今日最後の一にらみ。
アイラ: いつか、秘密を暴いてやるわね
ミウ: やっぱり一言多いなー

ガート君は、カメラを鞄にしまって、帰り仕度をしています。
ガート: さてと、じゃ、解散にしようか?ザック、ミウと元気でね!
ザック: はーい
ミウ: また、いい仕事持ってきてねー
ガート君は、ザックとミウに手を振ると、アイラさんに聞きました。
ガート: じゃ、アイラさん、フレンチとイタリアン、どっちがいい?
アイラ: え?そうねぇ…じゃ、和食がいいわ
ガート: わかった! じゃ
そう言うと、ガート君は歩きながら携帯端末で検索を始めました。
アイラ: ミウちゃん、今度おいしいパフェのお店、一緒に行きましょうね
ミウ: うんうん! 絶対、いくー!
アイラ: じゃ、ミウちゃん、またね! そっちのお兄さんも、せいぜい頑張って恋人の一人でもつくるのね
ザック: ぐさ
アイラさんの今日最後の攻撃はこれでした。かなりのクリティカルヒットだったようです。

二人が見えなくなるまで手を振ると、ザックはミウちゃんに向き直りました。
ザック: じゃ、ぼくらもディナーでもいこうか。豪華に。
ミウ: へ?ディナー?
ザック: 行きつけのレストランで、ディナー。
ミウ: あ、おごってくれるの?悪いな、なんか。
と、二人は豪華なレストランに入っていったのでした。ザック君にいいことがありますように。

(終わり)