未来予想図

い。(なんかこんなのばっかり。普段って何だ?)

教えられる

皆の広げた弁当は、既に空になっていた。
ファーン: はー おいしかった
ミウ: うん、満腹
ガート: 包み紙はちゃんと持って帰るんだよ
ファーン: もちろんです
ミウ: はいはい
ミウは肩をすくめた。そして、サンドイッチを包んでいた紙をくしゃくしゃと丸めると、かばんに放りこんだ。

皆の後片づけも終わり、シーナはうーんと一つのびをして立ち上がった。
シーナ: んじゃもう少ししたら次いくでー
ファーン: そうだ 先輩 お話はもういいんですか?
シーナ: ん?ええねん。話すだけ無駄やから。ま、お偉いかたにゃせーぜー頑張ってもらいましょ
ファーン: シーナ先輩 どうかしたんですか?
シーナ: ん?なんでもない、なんでもないって
ファーン: そうですか?
シーナ: ま、考え方やろね
ファーン: 考え方ですか?
ファーンは首をかしげている。
シーナ: ま、気にせんとき。ほな、いこか
ファーン: はー
ミウ: シーナも苦労するなぁ。難敵かも
シーナ: ったく……やっぱ面倒だったなぁ……
シーナは一人つぶやいた。


森は相変わらず、モンスターの巣窟だった。ブーマにラッピーに狼。僕の杖はもともと戦闘用ではないから、短くて、敵に当てるにはうんと近寄らなくてはならない。だから、必然的にダメージも多くなる。

Captured Image

ファーン: がっちゃん先輩、ケガしたら 言ってくださいね。それくらいはできますから
ああ、ファーンは優しいなあ。でも、僕もフォースのはしくれだ。レスタくらいいつでもかけられる。
ガート: あ、ありがとう。でも大丈夫だ。このくらい自分で治せるよ
シーナ: ……心底馬鹿や……自分でチャンス潰してるよ
ミウ: 馬鹿は死ななきゃ……
いつものようにシーナとミウの二人は何やらひそひそ話だ。
ファーン: でも 戦いながら なおすの 大変じゃないですか?それくらいは お手伝いできますけど
ガート: わかった。君がそこまで言うのなら……
ファーン: わたしたちを 頼ってくださいね。折角一緒にチームを組んでるんですから
ガート: そうだね。なにより団結力だね。
この僕が養成学校の連中にチームワークを教わるとはね。でも、その通りだ。忘れていたよ。しかし、僕がチームワークについて教わることはこれだけじゃなかった。
ファーン: 先輩となにかあったんですか?
ガート: それは向こうに聞いてくれよ。向こうがいきなり殴ってきたんだから
ファーン: だめですよ 喧嘩しちゃ。
ガート: 喧嘩じゃない、向こうの一方的な暴力だ
ファーン: なかよくしなきゃ、めっ です
なんだかファーンの真剣な雰囲気に僕は圧倒された。僕が悪いんじゃないんだけどなぁ...でも...
ガート: わ、わかったよ
ファーン: よろしいです
ファーンはうんうんとうなずくと、二人の先輩の方を向いた。
ファーン: あ お待たせしました。

一方、シーナとミウの二人はこそこそ話をしていたようだ。
シーナ: 正直アイツとは組みたくない……実戦じゃね。おもりするだけで大変や
ミウ: ま、そうそうないよ。30年経ってもね
シーナ: せやな。はぁ… ま、いいや。ほっとこ。
そして、ファーンからの呼びかけに気がついた。
シーナ: あ?もうええん?
ファーン: はい
シーナ: ほないっくでー
ミウ: いっくぞー!


森の害獣はまだまだわんさといた。戦いにはもう慣れっこになってしまったが、逆にもううんざりだ。早く終わらないかなぁ。

シーナ: ふぅ……かたずいたかな?
ミウ: うん、綺麗、綺麗
ファーン: おわりですか?
ファーンはそう言うと、傷ついた僕にレスタをかけてくれた。
ガート: ありがとう。ファーンさん。礼を言うよ。
ファーン: いいえ、それが わたしの 役目です。
ファーン: 戦えない人は それ以外の ことを 一生懸命するんです。友達の受け売りですけど。
ガート: はは、その通りだ。君の言う通りだよ。
ミウ: いい友達がいるんだね。ファーンには。
ファーン: できることと できないことを 区別して できることを 一生懸命するんです
シーナ: できることねぇ……
僕はなんだか感動した。感動したというのは久し振りだ。僕は少し離れて見ているシーナとミウに何か言いたい気分になった。
ガート: おーい、そっちの奴らも、ファーンさんを見習ってだなぁ
ミウ: 見習って、ねぇ
シーナ: はぁ……できることねぇ……今後の問題が発生する前に問題を消し去るとか?
ミウ: 過激!
シーナ: ま、実行するつもりはないけどね。
ミウ: したら恐いって
シーナ: けどある程度仕込まないと……後々困るのはアイツだろうしね
奴らはまだこそこそ話をしている。話の内容はよく分からないけど、きっとろくでもない話に決まっている。奴らがファーンと同じ学校の生徒とはね。
ガート: ファーンさん、行く学校を間違えたんじゃない?
ファーン: そうですか?
ガート: あんな奴らばっかりのとこじゃなぁ……もったいない! うんうん、もったいない。
シーナ: あんなのと交わったら、いいもんも悪くなるって
ミウ: いえてるー
シーナ: こっちにいるからあーゆーふーに育つんだよ
ミウ: うんうん
シーナとミウが何か言っているようだが、知ったことじゃない。
ファーン: 別に学校なんて どっちでもいいです。教えることに そんなに変わりはないって友達が言ってました
ガート: そうか、その友達の言う通りかもな。でもなぁ、ああいう実例があるからなあ…
ファーン: ああいう?
ガート: いや、サンプル数3だからまだはっきりとは言えないけどね。3分の1なら、まあ、悪くはないか
シーナはがっくりと肩を落とすと、ため息をついた。
シーナ: なんかもう疲れた……
ミウ: ま、好きに考えてよ
シーナ: ま、ええわ。そろそろ次行くでー


そして僕達が歩いていった先には、転送ゲートがあった。
ガート: ゲートだね
シーナ: せや
ファーン: これで 終わりですか?
ミウ: このエリアは終わりかな?
やれやれ。やっと終わった。僕は心底ホッとした。もう二度とこの行事には出るもんか。
ガート: さて、じゃ、帰るか
ミウ: って、こら
なんと! まだあるらしい。
ガート: え?まだあるの?
シーナ: せやで。あの先や。
ミウ: 今ので半分くらいかな?
なんとなんと! まだ半分しか終わってないらしい。
ガート: 疲れたなぁ、もう
ファーン: たしかに疲れましたね
シーナ: なーに甘ったれたことを。一式かたさな終われへんで
ミウ: それが奉仕ってもんでしょ
そうだ。当初考えてたのとは内容がまったく違ってはいるが、これもラグオルのためだ。想像と現実のギャップが大きすぎて、今まで忘れていた。
ガート: そうだ! 奉仕だったんだ! 頑張ろう! 崇高な目的のもとに!
シーナ: 忘れてる奴いるし…… 随分と良い記憶力やな
ファーン: せんぱーい、行きましょう
シーナ: ほな、いくで

と、僕達は森の転送ゲートを元気に抜けた。